HMV FREE Jan-Feb,2001 ISSUE101 文 スイッチ/川口美保
昨年11月末、新宿リキッドルームで行われたAJICOのライヴを観た。それはまだファースト・シングル「波動」が発売されたばかりのライヴで、彼らがAJICOとして夏のイベント2回主演したとき以来、ほとんど初のお披露目であり、同時に「AJICO」というバンドが何者であるかを知らされた、とても貴重な時だったように思う。
当たり前のことを書くようだけど、AJICOは「バンド」としてスタートしたバンドだった。UAと浅井健一の2人が組んだというだけで確かに話題は十分なくらいであるし、その互いの才能がどうぶつかり合い、いかに融合するものかは誰もが期待するところだったと思う。しかしおそらく、UAも浅井も純粋にバンドとしての音楽を作りたかったのだと思うし、そうやって作られた音楽をただただ純粋に楽しみたかったのだろう。なぜならその日観たライブは、UAと浅井のキャリアを一切考えさせることのないくらい、生まれたばかりのような瑞々しさが溢れていて、「この4人で音を、今、生み出す」ということが何よりも愛おしく、大切に扱われている気がしたからだ。
そうしてほどなくして届いたアルバムは『深緑』を聴いて、その想いはより一層強くなった。このアルバムの一曲目に収録されるタイトル曲は、まさしくAJICOというバンドをそのまま言い表しているような気がする。
もう二度と会えないことは もう二度と感じられないことか/それならば僕は今を通りこしたマシンに乗って/何処へ行こう 行先なんて みんな みんな持っちゃいないぜ/だから言おう 愛しているって 今、目の前のおまえに
この歌詞そのままを引用させてもらえば、AJICOとは最初から「行先なんて持っていない」バンドだった。それはUAも浅井もあとの2人もよくわかっている。それをわかった上で、彼らは一緒に音を出したいと思ったわけで、だからこそ「愛していると言おう」と歌うときのUAの声は、そんな「バンド」を想う気持ちがしっかりと残っているように思うのだ。
そしてそのことはこのアルバム全体に一貫して横たわる切なさでもある。繊細なメロディとか音色、響き、歌詞とかそういうことだけの話ではない。実際に、浅井がヴォーカルをとる、嬉しくなってしまうくらいゴキゲンな”ロックンロールナンバー”な「フリーダム」という曲もあるしだけどそれも「今、ここ、この4人」という時間を4人が互いに感じているからこそ、そこに生まれる歓びの歌なのだと受け止められる(もう一度そのライヴを思いだしてみても、これを歌っている彼は本当に楽しそうだった!)。
そういえば、以前浅井にインタビューしたとき、私は彼の書く詞があまりに正直なので、「なぜそんなに素直になれるのですか?」と愚直な質問をしたことがある。すると彼はこう言った。「なぜ素直になれないんだ?、素直になればいい」
この彼の言葉は音楽だけの話ではない。「今、ここ、この4人」の(それは人生における全てにおいて置き換えられる)かけがえのなさを知っている者からの、生き方の提示だった。だから再び、それを思うとき、「だから言おう 愛してるって 今、目の前のおまえに」と歌う言葉がどれほど強いのか、改めて知ることができるのだ。