何時もなら爆睡したままの筈の機内、隣りには気持ちの良さそうな寝息を立てているSUGIZOが座っていると言うだけで、アイジは柄にも無くドキドキして眠れなかった。

目的地は北海道。アイジの我侭だった。

 

ルナシーが終幕してからのSUGIZOは、割と好きな時に好きなだけ休みが取れる自由な身体になっていた。その為、PIERROTの活動が忙しいアイジに大抵予定を合わせてくれる。

お互いにツアーが重なり、満足に逢うことすら許されなかったので、アイジは不満でいっぱいだった。

だから、ツアーが終わって落ち着いて、SUGIZOが『どこか遊びに行こうか?』と誘ってくれた時、真っ先に『旅行に行きたい!!』と答えたのである。

海外に行こうかという提案もあったが、何故か『雪が見たい』というアイジの一言で北海道へ向かっている。膝に掛けられたタオルケットの下で、熟睡したままのSUGIZOの手をそっと握った。

 

「よーくー寝ーたー!!」

空港につくと、気持ちよさそうに思いっきり深呼吸するSUGIZOを少し恨めしそうな目で見る。

「どうしたの?」

「良いですね〜。SUGIZOさん、熟睡でしたもんね〜。俺なんか一睡も出来なかったっていうのに・・・」

まさかSUGIZOに見惚れていたので・・・などとは言えないので、突っ込まれる前に足早に先を歩いた。

冷たい手が指先に触れ、見上げるとクスクス笑いながら隣りに来ていSUGIZOに手を握られる。

「折角の旅行なんだから、仲良くやりましょ。」

色々面倒臭いと言って、レンタカーを借りた。

目的地は判らない。北海道へ行きたいといったのはアイジだが、実際にホテルの予約やら飛行機の予約まで全てSUGIZOが行っていたので、アイジはSUGIZOの走らせる車の中で大人しく座っているだけだった。

何処までも続く真っ直ぐな道をひたすらに走り続けるので、流石に不安になった。

「SUGIZOさん、何処に向かってるんですか??」

「ん〜?ホテル。」

「は?」

「久々に逢ったんだしさ〜、ね?」

「ね・・・じゃなくて・・・。まだ昼間ですよ??」

「な〜にを想像しちゃってるかな、アイジくんは。ただ荷物を置きにホテルに行くだけだってば。」

おかしそうに笑うSUGIZOにしてやられた。

「いや、本当にね、折角ゆっくりと休みが取れて旅行にも来れたんだからさ、別に着いたその日から遊ばなくてもいいじゃない?あんまり繁華街っていうのもどうかと思ってね。落ち着いた所に宿を取ったんだ。」

暫く走ると、ひっそりとした土地の真中に趣のある宿が現れ、アイジはなんとなくワクワクした。

「ココですか?」

「うん。どうですか?」

「凄い良い所ですね。静かだし。」

「じゃ、中に入りますか。」

ご機嫌のSUGIZOの後を歩いていく。

フロントでチェックインして、通された部屋にアイジは更に驚いた。

「ココって・・・」

「離れでございます。夕食は6時にお部屋までお持ちいたします。大浴場は24時間何時でもお入り頂けますが、こちらのお部屋には別に温泉と露天風呂をご用意させて頂いておりますので、宜しかったらそちらもご利用くださいませ・・・。では、お食事のお時間までごゆっくりどうぞ。」

傍らに立つSUGIZOを見上げる。

「やっぱりさ、このくらいしたいじゃない?折角だから。」

にっこり笑うSUGIZOの微笑が、何だか妙に艶っぽく、アイジは変に意識してしまい鼓動が早くなった。

「で、どうする?ご飯の前に風呂入る〜??」

「そうですね。」

「じゃぁ、まぁ露天風呂やら何やらは後でにして、大浴場に行きますか?」

SUGIZOの提案により、離れのお風呂より先に大浴場へ行く事にした。

 

「誰も居ないですね〜」

おかげでのんびり出来るとアイジは嬉しくなった。

「あんまり賑やかな宿じゃないからね。客室も少ないし。こんな時間に風呂に来る人も少ないんじゃないのかなぁ。」

人の話を聞いてるのか聞いてないのか・・・一人で嬉しそうにはしゃいでるアイジにSUGIZOは何ともいえない溜息をつく。

さっさと湯船から上がり、身体を洗おうとしているアイジの横に腰掛けると、

「ねぇねぇ、洗ってあげようか??」

とすかさず囁いてみる。

「な・・・何を言ってるんですか!!スケベオヤジみたいに・・・。何時誰が入ってくるか判らないんですよ??駄目です!!絶対に駄目!!」

案の定な返答に目元が綻んだ。

「スケベオヤジって・・・酷いなぁ。そりゃオヤジだけどさ。」

「いやややや、そうではなくて(汗)」

「じゃぁさ、後でなら良い??」

一気に上気した顔をSUGIZOに見えないようにそっぽを向きながら

「まぁ・・・後でなら・・・」

と呟いた。

嬉しそうににっこり笑ってSUGIZOは

「じゃぁお先に!!」

と、まるでスキップするような軽い足取りで上がってしまった。何となくアイジは自分の言動を後悔したxxx

 

 

 

「もう限界!これ以上は食べられません。」

美味しい海の幸、山の幸の豪華な夕食にアイジは大満足だった。

「本当。これでもか!!ってくらい食ったね。」

そう言って大きく伸びをしながらSUGIZOは横になった。

「SUGIZOさん、食べて直ぐ寝たら牛になりますよ。」

「(笑)ならないでしょ。」

「ま、なりませんけどね(笑)よく小さい頃言われませんでした?」

「言われた言われた。」

「満腹で気持ちいいのは判りますけど、折角離れで綺麗な庭が有るんですから散歩しましょうよ!」

いつになくはしゃいでいるアイジに、SUGIZOは見ているこっちまで楽しくなるようなそんな気がして、食事の片付けが終わったら散歩に出ることを了承した。

 

とは言っても、北海道の2月である。浴衣1枚で外を歩くのは自殺行為だとばかりに、浴衣の上にコートを羽織り、冷えないように足元はブーツ・・・という何とも不恰好な出で立ちでの散歩になった。

片方の手をコートの中へ、もう片方はお互いの手を繋ぎ、寒い中を歩いていた。寒すぎて空気が澄んでいるのか、外は星明りで明るかった。

「綺麗ですね〜」

「うん。前にアイジと長野に星見に行ったの思い出すよ。」

そう言われてみれば・・・そこで初めてSUGIZOから好きだと告げられた事をアイジはふと思い出した。

物思いにふけっていたら急に寒くなり、アイジは小さなくしゃみをした。

「風邪ひいたかな?」

後ろから抱き締められ、重なったコート越しにSUGIZOの鼓動が伝わってくる。

胸の前で組まれている手に自分の手を重ね、少しだけ後ろに体重を掛けた。

「あ〜、SUGIZOさんのコート暖かい〜。フワフワ〜♪」

暫くそのままの体勢で景色を眺めていると、ハラハラと雪が舞い降りてきた。

「アイジ、冷たい!このままじゃマジで風邪ひくから部屋に戻ろ。」

「来年も、再来年も・・・こんなに綺麗な景色をまたSUGIZOさんと一緒に見に来れたら良いなぁ〜」

「なんか言った??」

「あ、ううん。何でも無いです。」

「早くおいで。」

そう言って差し伸べられた手ではなく、SUGIZOの腕に手を絡めた。

「SUGIZOさん、帰ったら・・・露天風呂・・・一緒に入りましょうね。」

吃驚するSUGIZOの頬に触れるだけのキスをした。

部屋へ向かうSUGIZOの後姿にそっと投げかけた想いはアイジの本音。重荷にはなりたくないから・・・未来の保証は無いから・・・心の中でそっと思うことxxx

 

Fin