14番目の月明かり
差し込む月明かりに君の輪郭がぼやけて、消えてしまいそうで。 答えもなく考えるよ。 君への距離と、その後ろに浮かんだ月までの距離と、どっちのほうが遠いんだろうって。 ねぇ、どこにもいかないで。 僕を置いていかないで。 ずっと、ずっとそばにいて。 泣きそうになって、毛布に潜り込んだ。 こんなに近くにいるのに、君まで遠いんだ。 「ねぇ...」 もどかしくて可愛がられたくて、甘ったるい声が出る。 「どうしたの?」 手元の雑誌に目線を落としたまま、明が優しく囁く。 低くて甘い声が部屋に響く。 その声、すき。 「遅いからもうおやすみ。」 まるで子供をあやすみたいな言葉。 くしゃくしゃって髪を撫でてくれる大きな手がくすぐったい。 「明ぁ...。」 ほんの3秒の沈黙。 「...わぁかったよ。」 明は呆れたようにふっと笑って、雑誌を閉じた。 ベッドに入り僕に寄り添う。 明の腕の中、すっぽりおさまる僕の定位置。 「あったかぁい。」 ...ふふ。 僕のしてほしいこと、なんですぐわかるんだろ。 大好きな君のサラサラの髪が月明かりに透けて、セピア色が緩くたゆたう。 頬に触れて、くすぐったい。 手を伸ばして、そっと指で梳いてみる。 「きれいだね、明...」 その後の迷った手を、明はそっと包んでくれた。 離れないように、深く、深く。 絡ませた指からゆっくりと、想いまで伝わってしまいそう。 僕はなんだか恥ずかしい気持ちになって、明の胸に顔を埋めるようにくっついた。 「なんだよ、甘えんぼ。」 「なんでもないよ...」 明の体温が僕にうつる。 僕の体温が明にうつる。 二人のおんなじ熱が上がってく。 愛しくて、泣きそう。 ...ねぇ、あきら。 僕、何もいらないよ。 だから抱いていて。 それだけでいいの。 不安な顔をしないで。 幸せだよ。 ほんとだよ...。 音のない部屋に、心音だけが響いては、溶けてゆく。 僕らに結末なんてない。 なくたってかまわない。 誰にも邪魔されずに、ずっとこうやって二人だけで眠るんだ。 ねぇ、約束だよ。 その夜、僕らは初めて手を繋いだまま眠った。