幸せのカタチ。
僕は独り、部屋の隅で考え込んでいた。 後悔は先に立たず、なんて、今の僕にあまりにもピッタリすぎて可笑しい。 少し笑ってから、また泣きそうになった。 コンコンコン その時玄関のドアが鳴った。 「はい...」 僕は鼻をすすりながら返事をした。 「...泣いてんのか?」 僕はドキッとして、ノブにかけようとした手を引っ込めた。 明だ。 どうしよう、どうしよう... 2時間前の事がフラッシュバックして、また泣き出しそうだ。 「ごめん、帰って....」 どうにか気持ちを落ち着かせ、精一杯の声を振り絞った。 「竜太朗、あのさ...」 「お願い、帰ってよぉ....」 ドア越しに話すのもやっとなのに部屋に入れるなんて無理だ。 「...じゃあそのまま聞いて」 僕が返事をしないでいると、明は言葉を続けた。 「その....あまりにも突然あんな事言われたから何も言えなくて...ずっと黙ったまんまで.....ごめん」 謝んないでよ...。 「すぐ追いかけようとしたんだ。でもそっとしといたほうがいいのかなって....でも...でもやっぱじっとしてらんなくて...あの...ごめんな?」 ねぇ、何に対してのごめん? 「竜太朗...何か言ってよ.....俺も混乱してて...何て言っていいか....ほんとごめん」 「ごめんって何!?」 僕は思わず声を荒げた。 「た、太朗??」 言っちゃいけない。 これ以上、これ以上。 「どういう意味のごめんなの?なんでごめんなんだよぉ...っ」 僕は玄関に泣き崩れてうずくまった。 もう限界だ。 「僕だってわからないよ!!明に対してなんでこんな気持ちになるんだって...僕おかしいんじゃないかって...っ」 「りゅ、竜太朗落ち着いて...」 「明だってそう思ってるんでしょ!?」 「思ってない!!とにかく開けてくれっ」 明が力任せにノブを回す。 そのドアを押さえながら僕は叫ぶ。 「無理だよ、これ以上明に変に思われたくないよ!明だってこんなの...絶対間違ってるって思ってるんだ....っ」 恥ずかしい、もう会えない。 会えるわけないよ。 「いいからここ開けろ、頼む!!」 「嫌だ!!明に嫌われたくないよぉぉっ!!」 バンッ!! 泣きじゃくり気が抜け手を離した瞬間、ドアが勢いよく開いた。 「誰に嫌われるって?」 座ったまま放心状態でいる僕に明が投げかける。 「...明が僕を....」 しゃがみ込んで真っすぐ僕を見る。 「嫌いだと思うんだ?」 僕は恥ずかしさで目を逸らすように顔を背けた。 「だって...こんな僕...変だもん....」 明の両手がそっと僕の頬にかかる。 「明?」 その手は黙ってそっと僕を抱き締めた。 突然の出来事に気が動転しそうだ。 「あ、ああ明!??」 「竜太朗が変なら俺も変って事か?」 耳元で囁かれて体がすくむ。 「な、なに...なんで明...」 「なんで、って今さらずるいなぁ。こういう事なんじゃないの?」 僕を包んだその腕に、強く優しく力が入る。 今までにない程近い明のその体からは、今の僕と同じ、早い鼓動が聴こえた。 「嘘....」 「これが証拠だろ」 あぁ。 この暖かさが明の答えなんだ。 そう思うとまた涙があふれた。 僕を抱き締めるその体を、僕も強く抱き締め返した。 「冷静なフリも大変だったんだからなっ」 そう言った明の顔は真っ赤で、僕は少し笑った。