circuit


あぁまた頭の悪い連中が街角で唄ってる。 あたしには耳障りで仕方ない。 彼らは同じメロディーを繰り返し奏でては笑い合ってる。 立ち止まり耳を傾ける人など居ないのに。 あたしは気分が悪くなる。 月ばかり見上げていて喉が絞まるから。 雨上がりの蒸し暑さに苛々も募る。 必死に地面を蹴りながら少しずつ先へと進んでく。  あたしはあたしの居場所を探す。 彼らは一体いつまで唄い続けるんだろう? 雨が降り始めた。 ブラウスが肌に張り付く。 あたしは彼らの吐き出す言葉を今すぐ踏み付け、ぐちゃぐちゃにしてしまう妄想に駆られる。 周りにはシトシト雨の音。 絡み付くいい加減で自分勝手な唄の切れ端。  気持ち悪い。   静かにして。  あたしを責めないで  お願いよ。 通り過ぎる人々に何か足りないものを求めたりしないで。 その手を止めて雨に気付いて。 こんな日にそんな哀しい唄を唄わないでよ。 途切れた音にそっと目を開ける。 笑い合ってた彼らにも冷たい雨は流れて。 捨てられた仔猫みたいに毎夜怯えて眠りに就くのね。 ろくな餌も与えてもらえずに。 あたしの横を走り抜ける不器用な群れ。 今日に追われて生きている。 無意味な不安を打ち消すような強い確信がほしい。 だからもう逃げたりしないから。
 救われる一言を何より先に聞かせてほしいのよ。

誰もを濡らすこの色が嵐に変わらぬ事を祈って、戻らぬ日々はここに置いてゆくから。  さぁ  雨よ  今こそ  すべてを洗い流して。

まるで産まれたてのあたしを抱くように降り注いで。 届かない決意でも守り抜いてゆく。 創り上げた居場所が崩れて見失った唄を彼らは唄ってた。 それらを取り戻す術を、守る事で教わりたいの。  立ち止まってたあたしはあたしのもとへ歩き出す。  赤い靴。   うずくまる仕草。   それもあたし。  寂れたフレーズ。  うつろな口元。   そんな彼ら。 さよなら。とあたしは言った。 彼らに聞こえていたかは知らない。  もう二度とこの道は通らない。