Dear My Angel!!



思えば僕があの日初めて君を見た時の第一声はこれだった。 背中に生えた真っ白な羽根…(が見えた気がした) ひときわ白い肌に瞳なんかくりくりで、髪はふわっふわで、まるで外国の子供みたい。 ちっちゃくて、かよわくて。 抱きしめたらつぶれそう…。 あぁ夢にまで見た君! ずっと探してた天使を見つけた! そんな可憐に儚いかすみそうのような君に僕はとっておきの呼び名を付ける事にした。 夜眠る前に枕に顔を押し付けてにやにやしながら一晩中考えた。 素直で純粋で。 とっても可愛らしい名前がいい。 …みりぃ。   ミリィ! そうだ、これにしよう!! 何にもなかった僕の毎日。 夢も希望もいつしか失ってただ窓の外を眺めていた日々。 ずっと閉じこもって… けれど君に出逢って僕は! それから君に逢える時間を調べて、遠くからただ見つめるという僕の日課が始まった。 君は毎朝10時に僕の前に現われた。 (意外と寝ぼすけらしい) そのために僕は前より30分早く起きるようになった。 (実は僕も寝ぼすけだったんだ、奇遇だね!) 80m先の交差点を曲がって君が見えなくなるまで、ほんの60秒。 まばたきすら惜しくて、小さく小さくなってゆく君をずっとずっと見てた。 そういえば君も僕とおんなじで、いつも一人だったね。 その不思議なオーラが容易く他人を近づけなかったのかな。 それでもいつだって元気そうな君を見て僕はいつも勇気づけられていたんだよ。 僕も頑張ろうって…。 けれどやっぱり触れたくて、距離がもどかしくて。 君への想いは日に日に強くなっていった。 そうそう、そんな君がある日(いつだったかな)、何故か悲しそうな顔をしてひどく落ち込んだ様子でやって来たんだっけ。 声なんて掛けられやしない僕はとても心配で、その理由を60秒の間に見つけようと必死になったんだ。 (そうだ、確か11月の終わりくらい) その日は結局、何ものどを通らなかったのを憶えてる。 そして事件は次の日に起きた。 君はいつもの時間にそこに現われなかった。 一日中待ってみた。 次の日も、その次の日も、僕はいつものこの窓辺から君を探してた。 愛する僕のミリィを。  もしかして、もう二度と逢えないの? 君の靴音がよく聞こえるように、暇つぶしのテレビの電源さえ切って待っているのに…。 その時の僕といったら君に出逢う以前よりも、もっと悲観的になっていたかもしれない。 (恥ずかしい…) けれど日課は欠かさなかった。 そして12月25日の今日! 君は4週間ぶりに僕の前に現われたんだ! 前と変わらず60秒だったけど言葉にならないほど嬉しくて。 それはそれは、最高のクリスマスプレゼントだったよ!!  だから、ねぇ、ミリィ。 君は僕のすべてなんだってこと、本当に気づいたんだ。 もう見つめているだけじゃ我慢できなくなっていて。 あぁ、せめて、僕の存在を知ってくれたら!! その時僕はまるで発明家が物凄いアイデアを思いついた時くらい勢いよくベッドから跳ね起きて枕もとのペンを取った。 そして枕の下に隠してあった日記帳の使用済みの前6ページを無視して、7ページ目をちぎってこう書いたんだ。  「愛する僕のミリィへ」 そうして僕は君への届かぬ想いをこうやって手紙に綴ることにした。 ねぇ、今この手紙を読んでいる君は、その…もしかして、君だったりする? くりくりの瞳でふわっふわの髪をした、色白の僕の愛したミリィ? 生きる希望を失って無気力なまま閉鎖的な一日をベッドで過ごしていた僕の前に舞い降りた天使? もし違うんであれば、毎朝10時にこの病室の窓の真下を通る女の子に伝えてください。 この世に僕という人間が生きていて、君を愛したまま死んでいったということを。 僕の人生は短いものだったけれど、僕は君に出逢えて誰より幸せだ。 僕は決してこの病を恨んだりはしないだろう。 信じたくない事実も、君と出逢ったことも、すべて君を愛する運命の元にあったとすれば。 また逢える事を願って僕は逝くよ。 さよなら、ミリィ。 最後になっちゃうけど… 君は本当はなんて名前だったんだろうな。  12月25日