MOON LIGHT
俺はいつものように仕事が終わって家に帰ろうとしていた。
「坂本君今日は歩きなんだ?」
隣に居た博が不思議そうに訊く。
「あぁ、ちょっと車壊れちゃってさぁ・・・」
「俺、送ろうか?」
「いや、いいよ。今日は歩いて帰るから」
昌行は帽子を深くかぶり、サングラスをしてスタジオを後にした。
「寒いなぁ・・・」
手に息を吹きかけながら昌行は呟いた。
「送ってもらえばよかったかな」
そう言って苦笑した。
その時
Piii―・・・・
「もしもし?」
「坂本君!?どうしよう・・・!?俺・・・」
電話の声の主は博だった。
それにしてもひどく慌てた様子だ、何かあったのだろうか?
「博?落ちつけよ。どうした?」
「俺・・・人・・・事故ちゃった・・・!どうしよう?」
「落ちつけって!!俺、今から行くからそこで待ってろ」
俺は電話を切り、博が事故ったところまで走った。
現場に着くと、博が座り込んでいた。
「博!!」
「坂本君・・!!どうしよう・・・俺・・・」
「落ちつけって言ってんだろ!!!」
俺がそう怒鳴ると博はやっと落ちつきを取り戻した。
「で、ケガは・・・?」
「ない・・・俺は・・・・」
「俺はって・・・・お前誰かひいたのか!?」
「あそこ・・・」
昌行が博の言う方向へ目をやると倒れている人がいた。
昌行は慌てて駆け寄った。
そして、顔を見た次の瞬間、昌行は凍りついた。
「アキ・・・?」
「え・・・?知ってるの・・・?」
博が不安そうに訊く。
「知ってるもなにも・・・俺の・・・彼女だ」
「・・・・!!」
血まみれになった彼女を抱きかかえて昌行は病院へ走った。
車の方が早いと思ったが、博の車でいくなんて考えられなかった。
病院へ着く頃には昌行の服もちまみれになっていた。
それだけ彼女のケガはひどいという事を物語っていた。
「アキを・・・アキを助けて下さい!!」
昌行は何度も医者に頼んだ。
「出来る限りの事はいたします。」
医者はそう言って手術室へ入って行った。
「アキ・・・・死ぬなよ・・・!!」
それから一時間位して、メンバーが病院へ駆け込んできた。
「坂本君!!!アキ・・・は?」
井ノ原が心配そうに訊く。
昌行は静かに首を振って言った。
「まだ・・・なにも分からないんだ・・・」
博以外のメンバーはアキに会った事が有った。
ちょうど博が海外ロケに行っていた時に紹介したからだ。
元々は井ノ原の紹介だった。
井ノ原とは、幼なじみらしく、兄弟みたいに育ってきたと言っていた。
「そっか・・・大丈夫だって!!アキなら!!」
「そう・・・だ・・・な」
「坂本君・・・・」
昌行が声のする方に目をやると、泣いている博がいた。
「ごめん!!なんて謝っていいか・・・ホントに・・・」
その言葉を訊いた昌行は初めてキレた。
「謝ってすむ問題じゃねーんだよ!!なんで・・・よりによってアキなんだよ・・・・!!」
「ごめん・・・!!急にFANの子が出てきて・・・アキ・・・ちゃん?がかばって・・・」
「・・・・・!!バカだな・・・あいつ」
「ホントに・・・ごめ。。。」
「いいよ、博は悪くない。飛び出した方が悪いんだから・・・」
「俺、飛び出したFANが悪いと思うで・・・」
「そんな事今更言ってっておせーんだよ!」
メンバー同士が言い争いになりそうな雰囲気の所に医者が出てきた。
「先生!!アキは!?アキは!?」
先生は少し笑って一命は取り留めました、そう言った。
「よかった・・・」
「ただ・・・」
「ただ?」
「意識が戻るか・・・分からないんです」
「それって・・・・」
「簡単に言うと植物人間です」
「ウソ・・・だろ」
昌行はその場に座り込んだ。
「坂本君・・・!!大丈夫!?」
「まだ、わかりませんが・・・可能性は極めて高いです。」
そう言って、医者は去って行った。
それから、1週間。
アキの意識は回復しなかった。
つまり・・・植物人間だ。
しゃべらない、笑わない、泣かない。
まるで人形のようだ。
生きてる人形・・・そんな感じだった。
昌行は後悔していた。
あの日、アキとケンカしたまま別れていたのだ。
「アキ・・・・ごめん。ケンカしたまま。。。別れたりしなきゃよかったな・・・」
ベッドの横でアキの手を握りながら昌行は言った。
「いつもの・・・いつもの笑顔で返してくれよ!!お願いだから・・・!!」
昌行の頬には涙が溢れだしていた。
「・・・・くそっ!!」
―トサ―
なにかが落ちた音が後ろで聞こえた。
昌行が振り向くとそこには博とメンバーが立っていた。
落ちた物は花束みたいだった。
「坂・・・本君・・・ご・・・めん・・・・!!」
博はそう言って走って行った。
「長野君!!!」
井ノ原が長野を追いかけて行った。
その様子をカミセンは呆然と見ていた。
「入れよ」
昌行の言葉にカミセンはようやく反応し、部屋に入った。
「坂本君・・・長野君の事どうするの?」
健が痛い質問をしてくる。
可愛い顔して、核心づいた質問してくるんだ、健は。
「・・・・長野が悪くないってのは分かってる・・・だけど頭では分かってても気持ちがついてこないんだ」
「・・・・・・」
昌行の言葉にカミセンは黙り込んでしまった。
きっと自分達も同じ風に思ってしまうんだろう。
そんな事を考えていた。
昌行がふと外を見ると、雪が降ってきた。
昌行はずっと外を見ていた。
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