蝶
―いつも見るの―
―あの夢―
―蝶が蜘蛛の巣にかかる夢・・・―
そして、理沙はいつもその夢にうなされ、起きるのだ。
「はぁ・・・はぁっ・・・またあの夢・・・」
外は寒いはずなのに理沙は汗をかいていた。
「・・・・シャワー浴びよ。」
理沙はシャワーを浴びようとしてふと、隣で寝ている愛しい人の顔を見た。
「博・・・」
理沙は博の髪を撫でた。
「ん・・・・・・理沙・・・・」
自分の名前を呼ばれ、微笑む。
そんな日々が最近続いていた。
幸せな時間―・・・このまま時が止まればいいのに・・・
博といる時間が理沙にとっては一番幸せな時間だった。
しかし、博の仕事の都合上いつも一緒にはいられなかった。
むしろ、一緒にいられない時間の方が多かった。
だからこそ、一緒にいる時間を大切に出来る。
理沙は博に軽くキスをして、シャワーを浴びに行った。
シャワーを浴びながら理沙は夢の事を考えていた。
「なんであの夢・・・いっつも見るんだろう・・・」
蝶が蜘蛛の巣に引っかかってしまう夢・・・
いつも蜘蛛が近づいたところで夢が覚める。
なぜあんな夢を見るのか?理沙は不思議に思った。
そんな事を思いながら、理沙はシャワーから出た。
理沙には家族がいない。
小さい頃に事故で両親が亡くなったのだ。
それから理沙は施設に預けられ、最近一人暮しを始めたところだった。
博とは、施設にいる頃から付き合っていた。
博も施設出なのだ。
理沙は一人暮しをすると同時に博と住み始めた。
いつでも一緒にいれるようにだ。
お互いが孤独にならないように・・・
ベッドに戻ると博は起きていた。
「博・・・?」
「理沙・・・・」
博は黙って理沙を抱きしめた。
「博?」
「うなされてた・・・大丈夫?」
博が心配そうに訊く。
理沙は少し微笑んで答えた。
「大丈夫だよ」
博の言葉に理沙はいつも自分がうなされている事に気がつく。
「私・・・いつもうなされてる?」
博は少し黙って小さく頷いた。
「そっか・・・」
「原因分からないの・・・?」
「うん。。。。分かんないんだ・・・」
「そっかぁ・・・・」
「ごめんね、博。迷惑だよね?」
「何言ってんの?大丈夫。迷惑なんかじゃないよ」
博はそう言って優しく微笑んだ。
理沙はその笑顔に安堵の笑みを浮かべる。
博といると優しい気持ちになれる・・・
理沙は博の背中に腕を回した。
博もそれに答えるように理沙の背中に腕を回した。
「好きだよ・・・」
理沙はそう言って眠りについた。
「理沙・・・・」
博は理沙を見て、小さく溜息をついた。
「ごめん・・・理沙・・・」
理沙の知らない事実・・・
博は知っていた。
それはあの夢の事・・・
理沙がいつか言った事。。。
「蝶がね、蜘蛛の巣に引っかかってるの・・・」
博はそれを訊いた時、ドキっとした。
理沙はあの事を無意識に覚えているんだ・・・
そう思った。
博は小さく溜息をついて、眠りについた。
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