第1節 行刑
1 行刑の意義
行刑とは、国の収容施設である刑務所および拘置所の
適正な管理運営を図り、受刑者・未決勾留者・死刑確定者その他の
被収容者の人権を尊重しつつ、それぞれの収容の性質に応じた適正な
処遇を行うという目的の
現実的・積極的実現を目指して行われる行政活動をいう。(刑事施設法案1条 平成3年国会上程) ※赤六法111頁
2 監獄法運用ノ基本方針ニ関スル件(司法次官通牒) ※赤六法55頁
・監獄法における目的・理念・・・@
人権尊重に関する原理
A
更生復帰に関する原理
B
自給自足の原理
第2節 監獄
1 監獄の種類・・・懲役監、禁固監、
拘留場、拘置監
2 分隔・分界
分隔とは・・・監獄を男監と女監に分け隔てることをいい、それは囲壁を設けて視界を遮るなど厳格に拘禁区画(場所)を別にしなければならない。
分界とは・・・懲役監、禁固監等の異なる種類の監獄が同一区画内にある場合に、それらを別にすることをいい、それはついたて等の設備により、相互の視界を遮る程度の区分方法でよい。
3 代用監獄
代用監獄とは、警察署に付属する留置場を監獄に代用させているものをいう。(監獄法1条3項)
4 監獄に付設される拘禁施設
@
労役場・・・罰金・科料を完納しない者を判決に基づいて留置する場所をいう。
A
監置場・・・「法定の秩序維持に関する法律」第2条により、裁判所の職務執行を妨害したり、裁判所の威信を著しく害する行為などをして、20日以下の監置に処せられた者を留置する場所をいう。
第3節 監獄の運営および監獄に対する監督
※監督とは、上級行政機関が下級行政機関に対して、行政の適法性と妥当性を維持し、国家意思の統一を図る目的で、その権限行使を指揮監督することをいう。その手段・方法としては「監視権」「許認可権」「指揮権」がある。
※監視権とは、上級行政機関が監督権行使の前提として、下級行政機関の権限行使の実情を把握するために、資料や報告を求めたり、書類や帳簿を検閲したり、実地に赴いて業務を監査することをいう。
1 監獄に対する監督等
@
巡閲(矯正局が行う)・・・監視権の一つで、実地に赴いて業務を監査することを制度化したものである。これは各行刑機関について、少なくとも
2年に1回は実施しなければならない。巡閲を命ぜられた者を巡閲官吏というが、本省所属の上級職員で、矯正局の課長または参事官などが命ぜられるのが通例である。巡閲官吏は、被収容者の口答または書面による情願を審査して自ら裁決する権限を持つほか、行刑施設の事務について検査・調査し、かつ指示する権限を持つ。巡閲の結果は法務大臣に報告される。
A
監察(管区が行う)・・・矯正菅区長および矯正管区の各部長は、各々自ら年1回以上管内施設の監察を行わなければならない。監察は、監視作用および指導作用を営むもので、その作用は単に事務的なものだけでなく被収容者の処遇の実態にも及ぶ。ただし情願を受けることはできない。監察の範囲は矯正施設事務の全部または一部である。監察の結果は矯正局長に書面をもって報告される。
B
巡視(裁判官・検察官が行う)・・・裁判官または検察官が、その職務上の参考にするため、自己の職権により監獄を視察することをいう。
C
参観(一般人が行う)・・・一般人が行政施設の内部を見学することをいう。
第4節 被収容者の法律上の地位
1 受刑者
2 未決拘禁者
3 死刑確定者およびその他の被収容者
※国家刑罰権行使の根拠(『行刑法』P17)
@受刑者を拘禁して所定の作業を行わせることにより、犯罪に対する報復を遂げて正義の実現に寄与すること
A受刑者を社会から隔離して一般社会を防衛すること
B受刑者の教化・改善を図って社会への適応性を回復・増進すること
第5節 被収容者の不服申立てとおよび訴訟の提起
1 情願・・・「在監者
監獄ノ処置ニ対シ不服アルトキハ命令ノ定ムル所ニ依リ
法務大臣又ハ巡閲官吏ニ情願ヲ為スコトヲ得」(監獄法第7条)
・請願の一種・・・被収容者には情願事項の実現を求める具体的な請求権はなく、情願によって上級庁の指揮監督権を促す片面的権利を有するにすぎないとされる。その処理および処理結果の告知の義務は法律上で保障されているものではない。(通達によって示されている)
・
法務大臣への情願は書面によることを要する。
巡閲官吏への情願は書面または口答をもってする。
・「監獄ノ処置」とは行刑施設の長がその権限と責任においてなした措置のことをいう。
・法務大臣情願の取扱い→「法務大臣に対する情願の取扱いについて」 ※赤六法2301頁)
・情願の顛末
@
不裁決・・・情願の内容が自己の感想・希望または意見を開陳したもので不服に当たらないとき、情願の趣旨が不明であるとき、情願の取下げがなされたとき、情願者が出所したとき
A
裁決 ア
採択 ・・・情願に理由があるとき
イ
却下 ・・・情願に理由がないとき
ウ
棄却(門前払い) ・・・情願の事項が「監獄ノ処置」にあたらない事項についての不服であるとき、すでに採択または却下がなされた事項に反復情願したものであるとき、施設から出所したことのある被収容者がその出所前の事項について情願したものであるとき、2人以上のものが共同情願したとき、所定の手続きによらず代筆されたものであるとき
(※民事訴訟では「判決」「棄却」が審理をした場合で、門前払いの場合が「却下」ということに注意)
2 所長面接・・・「所長ハ
監獄ノ処置又ハ一身ノ事情ニ付キ申立ヲ為サン事ヲ請ウ在監者ニ面接ス可シ」(監獄法施行規則第9条)
・被収容者に面接申請権はなく、面接すべきか否かは所長の裁量権に委ねられると解される
・処遇一般または一身上の都合について所長と被収容者との間に自由な相談の機会を与えるというもので、適正妥当な処遇に役立たせようというものである。被収容者の権利救済という点からは弱いものであるが、苦情や悩みに対する助言相談といった心情安定の役割も果たしている。(
@カウンセリング・・・心情安定 A苦情処理・・・簡易な手段)
3 行刑法以外の法令による不服申立て
1
請願
被収容者も国民の一人として請願権が保障されており(憲法16条)、請願に関する一般法として請願法が定められている。
2
人権侵犯の申告
被収容者が公務員の職務執行に伴い人権を侵犯されたとして、法務局または地方法務局に申告することをいう。
3
訴訟
@行政訴訟・・・施設庁を被告として当該行政行為自体の是正を求める訴訟
A国家賠償・・・国を被告として損害賠償を求める訴訟
B刑事訴訟(告訴・告発等)・・・告訴とは、犯罪被害者その他の告訴権者が捜査機関に対して犯罪事実を申告し、その犯人の処罰を求める意思表示をいい、告発とは、犯人または告訴権者以外の第三者が捜査機関に対して犯罪事実を申告し、その犯人の処罰を求める意思表示をいう。