大宮サンセット
授業が終わるのが待ち遠しい。
帰りのあいさつが終わったら、いつもの場所へ。
大宮駅、待ち合わせのメッカ「豆の木」の前。
でも着くのはいつも私が先だった。
「早いね」
流れていく人をぼっと眺めていると、いつの間にか隣に立っている。
悪びれた様子は全くない。
だけど、憎めない。むこうも計算済みだから、こんなに余裕なんだと思う。
同じ学校に通ってるのに待ち合わせ。
「変な校則だよなぁ」と敬は呟く。まったくです。
私の通っている学校は共学のくせに男女交際禁止。私立ではよくある話らしいけど。
先生たちの言い分は、「学業がおろそかになる」からだって言うけど、思春期に恋するなって
いうほうが無理な話でしょう。かーっ息苦しい。
だからこうやってバラバラに学校を出て、待ち合わせをしないとおちおち放課後デートも
できやしないのです。
「今日は何する?」
「んー・・・ コーヒー飲みたい」
「じゃ、スタバね」
デートといっても、ただ駅をふらふらするだけ。行くところだって決まっているわけじゃないから
その日の気分。
駅ビルの中にあるスタバは、私のお気に入りの場所。
ガラスの向こうには駅の世界が広がっていて、私はそれを見下ろしている。
変な優越感を感じてしまう。
「数学の塚田さ、この前見合いやったらしい」
「ふぅん、今回で32回目でしょ 良くやるよねぇ あの顔でね」
話すことも色気がない。たいていは学校のこと。バカ話ばかり。
カレカノよりも友達の方が近いのかな・・・ なんて思うこともしばしばあります。
これはこれで楽しいんだけど。
「あ、そろそろだな」
ケータイの時計を見て、敬は立ち上がった。
「もうこんな時間?」
私はまだ中身の残っているコップを慌てて持った。
私たちの日課。西口に向かって少し速く歩く。
急に敬に手をとられてびっくりした。あまりそういうことしない男だから。
空は少しずつ茜色に染まっていく。 空気まで色が変わっているみたいだった。
アルシェの黒いビルの向こうに少しずつ吸い込まれていく夕日。
すごい綺麗・・・
ずっとこんな風に2人で眺めていたい・・・
いつの間にか大宮駅に降りていた。
「降りるはずじゃなかったんだけどな・・・」
頬をかきながら、加菜子は呟いた。すでに習慣として体にしみついてしまっていることが悲しい。
加菜子はアルシェを見上げた。消えていく夕日。昔と全く変わらない荘厳な風景。
隣には誰もいない。
END 2003.7.31