Little Screening Review
”リトル・スクリーニング・レビュウ”
のんびりしたり結論急いだりのエッセイコーナー (by midnight)

第5回 清志郎とベッド(眠り)

今年は寒い日が続きますね。
寒い朝にあったかい”布団で寝ている”ほどキモちEことはない。
そして、寒い朝にあったかいベッドからでるほど辛いことはない!
普段からお寝坊してるらしい清志郎も、起きるのに一層苦労する季節なのでは?
今月は”ベッド(眠り)”についてスクリーニングしたレビュウです。


この季節にぴったりなのは「冬の寒い夜」。
”冬の寒い夜は君を抱いて眠るのさ この冷えたベッドもすぐにあたたまるさ”
恋人との、暖かくて幸せな夜が素直に伝わる。
もっとも、季節を問わず、恋人と一緒のベッドで眠るのは幸せなことだ。
”きみがよくぼくのベッドにはいってきてくれた”「上品な猫みたいな」
”あの娘のベッドで眠ってしまおう”「僕の眠るところ」
これらの曲の中の”僕”と”君(あの娘)”は、一緒には暮らしていない。
お互いの家を行き来している状態だ。
つき合ってそれほど経っていない、一緒にいることが素直にうれしい、そんな時期だろうか。

「誰かがBedで眠ってる」。 この”誰か”とはもちろん恋人のことである。
ここでは二人は一緒に暮らしている、というより暮らし始めている。
”この女”を愛していることは間違いないのだろうけれど、あまり幸せそうな感じはしない。
恋人と生活する、同棲することのリアリティが強すぎるからだろう。

「世界中の人に自慢したいよ」では”毎朝きみのすぐそばで 目を覚ますだけさ・・・
他になにもいらない”とふたりで眠り、目覚める、そんな平凡な幸福を唄っている。
”僕とふたり暮らしておくれよ 生活をはじめよう”とあるのだから、一緒には暮らして
いないはず。
でも、このふたり、既にずっと一緒に生活している感じがするから不思議だ。
こんな感じは、現在の清志郎が唄うから伝わってくるモノかも。


恋人が待つのがきみのベッドなら、家族が待つのが「うちのベッド」。
昨年のラブジャムでも演奏されたこの曲も、現在の清志郎だから創れる唄だ。
”疲れはてたこの僕が 眠るベッドはただひとつ うちのベッドだけさ”
”母さんも眠ってる 妹も眠ってる たまに親父も眠ってる
” そう、これはタッペイ君を主人公にした詩である。


これまで挙げた曲とは異なり、「ギビツミ」でベッドの中にいるのは”僕”ひとりだ。
”ベッドの中でまどろんでいると 夢に出てくる君の笑顔”
ちなみに、この詩のシチュエーションは「ディドリームリバー」と似てると思う。


安らぎを求めて、というよりも、何かから逃げてたどり着くベッドもある。
例えば「共犯者」”ベッドルームだけの君の部屋に かくまってくれるか?”
以前のレビュウでも書いたが、危ない何かから逃れて恋人の元にたどり着く、という詩を
清志郎はよく書く。

忙しい日常から逃げたくて、ふて寝でもしたくなるのが「HONEY PIE」
”死にたくなるぜ 煮詰まるエブリディ・・・眠っていたいよ”
このように冗談混じりに愚痴れるならまだいいが、次曲は真剣な愚痴だ。
”金が欲しくて働いて 眠るだけ”「いい事ばかりはありゃしない」

もっと強烈に現実逃避しているのが次の2曲である。
”ぼくはつかれてるのさ(中略)ぼくに必要な眠りを 眠らせておくれ”「ねむい」
”情けない 何も何もしないで 寝床の中で・・・
やりたい事はあるけれど・・・何も何もできずに寝床の中で”「寝床の中で」
この2曲の状況は、似ているようでかなり違っていて、その違いのひとつは「何もしたくない」
のと「やりたいけどできない」というところにある。
前者は”夢も見たくない 幸福なんかいらない 恋もしたくない お金なんかいらない”
と、ふてくされているようにも読みとれる。

一方、「寝床の中で」はもっと切羽詰まっている。
”腹がへっても金がない ふられても涙がでない たずねてくる人もない 出掛けていくにも
服がない” やりたくてもできない、もしかすると、寝床の中にいながら眠ることすら
できない、そんなやるせなさが伝わる。
こんなやるせない感情は、よほど恵まれた人でない限り、誰もが一度は経験しているだろう。
「世間知らず」もそうなのだが、誰しも心の片隅に隠しているような弱さを、言葉少なに、
素直に唄う、そんな清志郎の世界にいつも共鳴してしまう。若い頃も、大人になった今も。

大人になった清志郎がこう唄う。
”Boysは今頃眠ってるんだろ”「Boys」
この”Boys”は、先に眠ってしまったマネージャの事を歌い始めたらしい。
でも、”クサってみたって退屈するだけさ””楽してられんのも 今のうちさ” なんて、
まるで「ねむい」の”僕”に言ってるみたいではないか?
そして、”日陰の涼しいところで眠ってな・・・うろつくべきだぜ” なんていうあたり、
「寝床の中で」の”僕”を慰めて、元気づけているみたい・・・って考えすぎだろうか?
過去の若い自分や、現在も心の隅に存在する自分の弱さに向かって唄っている・・・
そんなふうに思って聴くと、元気づけられる曲なのかも。
勇気をだしてベッドを出て、東京の街をうろうろしてみようか、寒いけどね。


”ベッド(眠り)”でスクリーニングした曲

「キモちE」          {ラプソディ}
「冬の寒い夜」」      {Baby A GO GO}
「上品な猫みたいな」      {DANGER II}
「僕の眠るところ」          未発表
 (Acknowledgment for "LOVE ME LIVE")
「誰かがBedで眠ってる」       {O.K.}
「世界中の人に自慢したいよ」{GOODBYE EMI}
「うちのベッド」           未発表
 (Acknowledgment for "LOVE ME LIVE")
「ギビツミ」         {Rainbow cafe}
「共犯者」            {MARVY}
「HONEY PIE」          {MARVY}
「いい事ばかりはありゃしない」  {PLEASE}
「ねむい」           {楽しい夕に}
「寝床の中で」   {初期のRCサクセション}
「Boys」            {Memphis}
 (引用順 :{}は主な収録アルバム名)


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