Little Screening Review
”リトル・スクリーニング・レビュウ”
のんびりしたり結論急いだりのエッセイコーナー (by midnight)

第7回 清志郎と空

 ちょっと前の話題になるが、北海道のイメージアップキャンペーンのCMソングに 「サンシャイン・ラブ」
が使われている。そのCMのver.1 は御覧になった方も多いかと思うが、雲の浮かぶ青空が画面いっぱいに映
し出されていた。ver. 2 は大地と空がくっきりと映し出され、青年が地平線にむかって駆け出していく・・・
まるで空を飛ぶ前の助走のように。そして現在も放映されているver.3 でも、数々の情景の中に空のショット
が効果的に使われている。これらのバックに”まぶしいほどの”からサビの部分が流れる訳だが、特にver. 2
では(この曲がいまいち好きではない私でも)曲と空のショットはばっちりはまっていると思う。
 ちなみにこのCM、そのコピー「試される大地」について地元ではいろいろ論議もあったようだが、先日、
全日本広告連盟の広告大賞に輝きました。(前置きが長くなったが)そんな訳で、受賞を記念(?)して今回
は”空”についてスクリーニングをしましょう。


 ”たとえ空が落ちて来ても ふたりの力で受けとめられるさ” 「世界中の人に自慢したいよ」 この世の最期
をこの様に例えるのは常套手段(pie 曰く:「STAND BY ME」が本歌でなかろうか)ではあるが、清志郎が歌
うとそれほどクサく聴こえない。
 ”空が引き裂かれても 俺はこわくないさ”「あふれる熱い涙」も同じくそうだ。


 心情を空模様にたとえている曲もある。
 ”君のように 空も泣き出せばEのに”「空が泣きだしたら」。これは「君が泣いているように ひと雨くれ
ばいいのに」という意味であろう。が、曲を聴いて思うに ”ぼく” もまた泣きたい気持ちなのではないだろう
か。例えると「君のように 僕も泣ければいいのに」というように・・でも、自分は泣く訳にはいかないので、
”空”に気持ちを代弁して欲しい・・・という意味にもとれる。

 ”遠く空が晴れてインディアンサマーなのに ぼくの空は曇ってる”「インディアンサマー」
 ”したくないよ 別れ話は どんなに空が憂鬱な時も””見たくないよ君の涙は こんなに空が冷たい時も”
「この愛が可愛そう」 これら2曲の ”ぼくの空” ”空” という単語は、”ぼくの心・気持ち” とそっくり置
き換えることができる。

 明るい曲調とは裏腹に、ブルーな気持ちを歌っている「あの娘のレター」”風の強いあの日 重たく曇り空”
”いまにも降りそう 重たいあの空” 重たく曇って、いまにも泣き出しそうなのは 自分自身なのかも。さらに
”こんな空におまえは飛んでく” とは、あの娘が飛行場からだけでなく、自分からも飛び立っていくという意
にもとれる。
 完璧な失恋ソング「ワザトFEEL SO SAD」でも、”君の名前を呼んでみたのさ 憂鬱そうな曇った空に” と
は、自分の心の中で名前をつぶやいたのかも、空にではなく。そして ”君の名前は消えていったよ 何も見えな
い遠くの空に” と、心残りなく忘れることができのかも・・・ それもワザトそう思いこもうとしているのかも
しれないが。


 時として、空は歌を伝える媒体でもある。これは清志郎独特の捉え方ではないだろうか。空を越えるというこ
とは、文字どおり時空を超えて(場所や時が違っていても)伝わるという、静かだが普遍的な力を感じさせる。
 例えば ”ホットなナンバー空にとけていった ホットなメッセージ空にとけていった” 「トランジスタラジ
オ」 空から流れてきたホットなナンバーは、アンテナでキャッチされ、更にスピーカーを通じて再び空へと流
れていく。そして今は授業中の彼女にも、同じ空の下にいる限り、いつか届くのかも知れない。
 ”いつか晴れた空を自由に つばさ広げ飛んでみたいのさ” 「鳥の歌はLOVE LOVE」 も同じく、空を飛んで
欲しいのは ”ぼく” ではなく”ぼくの歌”。歌 が自由に空に伝わって”あの娘に聴かせたいのさ”。
 伝える相手を ”君だけ” に限定すると、「メロディーメーカー」のようなストレートなラブソングになる。
”君だけに伝えたい” 想いをメロディにして捧げることができれば、そのメロディと共に ”この想い” も君の
元に届く。そして、たとえ離れていても ”旅から旅のこの空を 今夜君と飛びたい” との希望も叶いそうだ。
 そう、「メロディメーカー」にでてくるように、遠く離れた場所にいる恋人同士でも、同じ空の下であること
に変わりない。”あなたのこと思いだすたび 夜空の星が近くに見える 遠い街に離れていても 僕らの夢は今
夜もひとつ”「夜空の誓い」 同じ空を見ていると思えば、お互いの距離など忘れることができるのかもしれな
い。

 でも、同じ空の下にはいない人もいる。それは、空の向こうにいってしまって、もう二度と会えない人。時に
”お月さま”(本連載第2回で触れたが)を連想させる人でもあるが・・・”オフクロのうたを 遠い夜空に”
「Johnny blue」
 ”歩道橋わたるとき 空に踊るエンジェル”「エンジェル」
 そういえば、”歩道橋”「エンジェル」や ”屋上”「トランジスタラジオ」など、清志郎が空に近づく手段て
とても身近だ。


 ここまで ”空”でスクリーニングした曲を grouping してきたが、どの範疇にもいれることができなかった曲
がある。
 そのひとつは「うわの空」 この曲はドラッグソングという話もあり、それを念頭に置いて聴くと、確かにそう
思わせる詩部分や雰囲気がある ( pie 曰く: BEATLES の 「Lucy in the Sky with Diamond」 の影響を受けて
いるのではないか ) 。もっとも、私が初めてこの曲を聴いた時はそんな事は知らず、先入観を持つことなく聴い
た感想は「一見、幻想的・空想的の様でいて実は超現実的な世界」・・・小説でいえば、阿部公房やカフカの世
界に共通するような・・・(昔、「飛ぶ男」を読んだときにこの曲が浮かんだ、というせいかも知れないが)。
以下、そんな私の first impression に基づいて書いてみよう。
 他の曲と違い、この曲における ”空”は、自分と異なる、手の届かない世界の比喩として唄われている。空を
飛ぶ ”君” とそうでない ”ぼく”・・・一緒に暮らしていても同じ価値観を共有できなかった二人。”ぼく”
は、君を、羨ましげに、あきらめ気味に、でもちょっと未練ありげに見つめている。しかも、まるで空を見上げ
ているかの様にに歌っているため、この ”空” はとても遠くにある感じがする。
 ”だけど空の上からじゃ 何もはっきりみえやしない” と ”君” の目に ”ぼく” は留まっていないけれど、
”ぼく” には ”空”も ”君”も明瞭に見える。それが ”ぼく”が背負う哀愁の一因かも。かといって”ぼくも
空を飛んでみようかなんて” 思ってみても ”ぼくは空など飛べやしない” と続きそうな気がする。

 もう一曲が「空がまた暗くなる」。”笑っていても 暗く曇ったこの空を かくすことなどできない” とは、
「笑って、暗い自分の気持ちをごまかさずに、勇気を出して立ち向かえ」ということかと理解している。
 でも・・・私がちょっと判らないのは ”空がまた暗くなる” の意味なのだ。特に ”また” の部分が気になる。
”知ってることが誰にも言えないことばかりじゃ””悲しいときも涙だけじゃ” 空がまた暗くなる、の空とは何
を意味しているのだろう?どうして ”また” 暗くなるのだろう?
 これも「自分の気持ち」のことなのか?「気持ちがまた暗くなる」ということ?
 それとも、単なる感情を超えた、自分の価値観や希望のことを指しているのか?
 それとも・・・文字どおり ”空” の事なのかも?また日が暮れて、無駄な一日がただ過ぎてしまうということ
なのかもしれない・・・

 これから先、しばらく経ってこの曲を聴いたならば、また違った意味を見いだすかもしれない。でも、解釈がど
うであれ、”おとなだろ”のフレーズ で元気づけられることに変わりはないだろう。
 「空がまた暗くなる」名曲である。



”空”でスクリーニングした曲

「サンシャイン・ラブ」           {Rainbow Cafe}
「世界中の人に自慢したいよ」   シングル,{GOODBYE EMI}
「あふれる熱い涙」 {Baby a Go Go}
「空が泣きだしたら」               {MAEVY}
「インディアン・サマー」         {GO GO 2・3'S}
「この愛が可愛そう」     {Music From POWER HOUSE}
「あの娘のレター」                 {BLUE}
「ワザト FEEL SO SAD」(CANADA SEVEN) {レザーシャープ}
「トランジスタラジオ」              {PLEASE}
「鳥の歌は LOVE LOVE」         {GROOVIN' TIME}
「メロディメーカー」           {レザーシャープ}
「夜空の誓い」                 {日本の人}
「Johnny Blue」                  {BLUE}
「エンジェル」                {RHAPSODY}
「うわの空」                 {シングルマン}
「空がまた暗くなる」            {Baby a Go Go}
 (引用順 :{}は主な収録アルバム名)


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