Little Screening Review
”リトル・スクリーニング・レビュウ”
のんびりしたり結論急いだりのエッセイコーナー (by midnight)

第8回 清志郎と雨

 六月・・・もうすぐ梅雨ですね・・・季節柄、今月は”雨”についてスクリーニングしてみましょう。


 清志郎の曲の中で”雨”を歌い込んでいる作品はとても多い様に感じていた。しかし予想に反して、い
ざ抜き出してみると、さほど多くはなかった。雨という単語はあっても、深い意味を持たない場合もあり
(”ぼくはカエル 雨にうかれて”「ぼくはタオル」、 ”アスファルトに煙る雨の夜”「夢中にさせて」
”夜中に雨が降ったこと”「ソングライター」)、結果として、今回のスクリーニングにきちんと引っか
かってきた曲は意外と少ない。
 雨に関する曲が多いなんて、何故そんな先入観をもっていたのか・・・それは”雨”の出てくる曲には
代表曲や個人的に好きな曲が多いからだろうか・・・と思う。

 代表曲といえば「雨あがりの夜空に」。この曲について書くのは今更という感じがして気がひけるのだ
が・・・。最近は歌詞を噛みしめて聴くことも少なくなったが、改めて聴くと、やはりこれは代表曲にな
り得るなあと思う。清志郎の曲に double-meaning は多いけれども(やっぱりロックだからね)、この曲
は単なるHソングに成り下がってはいない。そっち方面の意味深な言い方や乱暴な言葉を使う一方で、メル
ヘンチックな、そぐわないくらいに可愛い言葉を用いて情景を歌い込んでいるあたりが、この曲に普遍性を
もたらしているし、ルックスからは判らない清志郎の繊細さ・純粋さ、みたいのを匂わせているように思う。
もうお判りかと思うが、一番では”どうぞ勝手に降ってくれ”と土砂降りを思わせ、続いて”雲の切れま
にちりばめたダイヤモンド”と雨が止んで晴れ間が覗いてきたことを伺わせ、そして”ジンライムみたい
なお月さま”と月を覆い隠していた雲さえ去ったことを示すーという様に時間経過をも表しているのも、
こころにくい。ちなみに、最近のライブバージョンでは前述の”どうぞ勝手に降ってくれ”はカットされ、
文字どおり雨あがりの夜空の変化になっている事が多い。つまり、”雲の切れ間に”星が覗いてきて、雲
がなくなって”お月さま”が見えてきて、風がそよいでくる(”雨あがりの夜空に吹く風が 早く来いよ
と俺達を呼んでる”)。

 その他の”雨”に関する曲というと、大きく2つのグループに分けられると思う。まずひとつは”雨”
から逃れて恋人の元にたどり着きたい、という気持ちを歌った曲である。
 そのひとつとして第一に思い浮かぶのは「ひどい雨」であろう。”外はひどい雨 いつまで降り続く雨
雨は僕の気持ちをまるで判ってくれない”のあたり、ホントにひどい雨だという感じがするし、だからこ
そ”凍えそうなこのカラダを 早く暖めて”というのが切実に伝わる。(過去の連載でも再三述べている
が、シングル・アルバムバージョンではこの辺の感じがあまりでていないと思う。ライブで聴くこの曲は
とてもいいので、是非ライブ盤を出してもらいたい)
 「SHELTER OF LOVE」も、”降りしきるHIGH WAY””激しい雨の中”と、危険な何かから逃れて恋
人の元に急いでいる。
 これは単なる想像だが、清志郎は「とても辛く苦しい出来事があって、その時雨が降っていた。そして
雨の中、彼女の元へと向かった」という体験をしているのではないだろうか?
 また、前述の2曲中にでてくる”入りたい””中に入れて”や”君のシェルターの中に入れておくれよ”
は double meaning である。かなり遊んでいるが「門前払いの女」にも同じような歌詞(これは男と女で
逆パターンだが)があるし、「雨あがり」といい、雨の曲にはそんな共通項もあったりする。
 「June Bride」も同じグループにはいるだろう。これは”降りしきる雨の中 ふたりはお役所へと急ぐ”
と自分の好きな娘が雨の中にいる。本当は雨の中から彼女をさらいたいのに、その横には別の彼氏がいる。
何もできない自分は、彼氏に向かって”花嫁はほら雨の中 急いで暖めてやれよ”とつぶやく。自分が雨の
中に出ていけないというあたりが、雨から逃げている。それとも雨ではなくて、自分以外の人と結婚する娘
や、そんな現実から逃げているのかもしれない。


 そしてもうひとつのグループに属するのは、心情を雨降りに例えている曲である。そこにはHな歌詞も
乱暴な言葉もなくて、素直な気持ちが詩的につづられている。
  その代表が名曲「あの歌が思い出せない」。”この街角一人で 何のあてもない ついてないよぼくに
雨も降りだした” ”ぼくには歌う歌もない”簡単な言葉だし、特に情景を説明しているわけではないのに
なんとなく絵が浮かぶ、そんな歌。
 未発表ではあるが、フォーク時代の代表曲の「雨の降る日」も似ている感じがする曲だ。いい詩なので、
ちょっと御紹介しよう
”雨の降る日は寂しいものさ 時計の音と雨だれが重なった
 雨の降る日は優しい君のひざまくらに あの頃が目を閉じる
 ああ今日も 長い雨が窓の外に 僕たちの計画を延期させる
 雨の降る日は航海みたい 時計の音と君の胸が重なった”
恋人と一緒なのに、どこか物憂げな寂しい曲調で、「あの歌が」と共通の世界を感じる。フォーク時代の
清志郎がよく描く内向的な世界。

 ブルーな気持ちを雨にたとえていても、前述の陰鬱な世界とは違った、ちょっと明るい、positive な詩
もある。例えば「空が泣きだしたら」”君のように空も泣きだせばEのに”この曲については先月も触れた
が、”君が泣くように ぼくも泣ければいいのに”という意味にとれる。
 そして「JOKE」”ぼくがジョークを言い始めたら 世界中が泣き出した”これはカバーズ騒動のこと
なんかを歌っているようにも捉えられるが・・・この曲の好きなところは「ぼくのジョークに君だけが
笑った 世界中が泣いているのに”という部分である。「君が僕を知ってる」と共通の価値観。君だけが
僕のことを判ってくれるという、清志郎がずっと歌っているテーマがそこにある。
 同じアルバム中の「サヨナラはしない」の”曇った空でもやがて晴れる いつも君がそばにいるだけで”
もそんな意味の歌詞だと思う。君さえいれば大丈夫、という強い信頼。最近でいえば「世界中の人に自慢
したいよ」などもそうかと思うが、そういいきれるようになったのは清志郎が一生のパートナーを見つけ
た以降なのかもしれない。
”ある日君が僕を泣かせても ある日雨が僕を濡らしても” サヨナラはしない・・・なんて、フォーク
時代では歌えなかったのではな?なんて思うのである。




”雨”でスクリーニングした曲

「ぼくはタオル」 {PLEASE}
「夢中にさせて」               {MARVY}
「ソングライター」          {GROOVIN' TIME}
「雨あがりの夜空に」            {RAPSODY}
「ひどい雨」              {Rainbow cafe}
「SHELTER OF LOVE」            {MARVY}
「門前払いの女」              {HOSPITAL}
「June Bride」             {Baby a Go Go}
「あの歌が思い出せない」 {ハードフォークサクセション}
「雨の降る日」                {未発表曲}
        (Acknowledgment for "LOVE ME LIVE")
「空が泣きだしたら」             {MAEVY}
「JOKE」              {復活!タイマーズ}
「サヨナラはしない」         {復活!タイマーズ}
 (引用順 :{}は主な収録アルバム名)


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