HOME TOP BACK
 
 

 
 
 6月に転勤となって以来、毎日節約の日々が続く。
 安月給の上に家賃補助も出ない生活で、家賃6万9千円の
 マンションに住みながら贅沢をすることは不可能なのだ。
 仕方なく食費を切り詰め、無駄な物は買わないことを心がけていた。
 
 そんなある日の会社帰り、駅から自宅まで歩く間にあるスーパーで
 いつものように朝食用のパンを買おうと物色していた。
 朝食と言っても、毎朝パンをかじり、牛乳をラッパ飲みするという
 お粗末なものだが。
 
 今日はどのパンが安くなっているのか?
 だいたい私がそのスーパーに寄る夕方6時半頃になると、
 賞味期限切れ1日前の商品に20円引きのシールが貼られているので、
 それを買うようにしている。
 
 しかし、今日はたまたま20円引きの商品がない。
 仕方なく100円のパンを買おうと探すが、目ぼしいものがなかった。
 だが、120円だとおいしそうなのがあるではないか!
 
 それは、マロンクリームが詰まった甘そうなパンである。
 朝イチでこれを食べるのは少々キツイかもしれないが、
 いかにもおいしそうに見える。しかも、残りあと1個。
 
 「何で20円引きのシール貼ってないねん!」と心でつぶやきながら、
 この120円のマロンクリームパンを買おうか、1ランク落として
 あまり美味しそうではない100円のパンを買おうか迷った。
 
 そして私は、100円のあまり食べたいとは思わないパンを買った…。
 「勝った!俺は勝った!」
 そう、今は贅沢は敵。私は欲望に打ち勝ったのである。
 
 しかし、家に帰る途中、なんとも言えないイライラ感と、
 を募らせることになる。
 「よう考えたらたったの20円やんけ。税込みで21円やんけ。なんで
  そんな道で拾うかもしれんぐらいの金額で我慢せなあかんねん!」
 
 俺はあの時、本当に戦いに勝っていたのだろうか…。
 
 
 
 ここで一句。
 
  パンでない 朝メシ食いたい 本当は
 
                                 (字余り)