私は毎月容赦なく厳しい締切日を宣告され、その後、「おいおい、マジかい。」
と打ちひしがれながら、カタカタと端末に向かっている。
仕事が何事もなく終了するまでは、飲みにも行けず、自宅でドラマも見られない
日々が続く。
先日もぐったりしながら、終電に乗り込み、空いている席の隅に座った。
頭の中では、「・・あれは、どこのデータミスだ???」とか
「しまった!あそこに電話かけるのを忘れていた!!」とか考えながら、
さらにストレスを溜めていた。
どこかの駅で電車が止まり、数人乗り込んで来た中に50代後半と思われる
中年サラリーマンがいて、私の目の前に座った。
酔っている様子はない。
私は、次第に睡魔に襲われ、グラグラと頭が揺れはじめたが、ある瞬間ふと、
目が覚めて、前を見たら、その中年サラリーマンは、両足の靴を脱ぎ、椅子に
べったり浅く座り、狭い空間で大の字になって寝ていた。
よほど靴が窮屈だったのか、両足の指が開放感を味わいつつ、ワラワラとまる
で別の生き物のように動いていた。
伸ばされた足は私の目の前まで来ていたので、匂いが今にも漂ってきそうだった。
「全く、勘弁してよ〜。」
と、私は更に疲れを覚えたが、あと2駅ほどだしと自分を励まし、できるだけ
正面で呼吸しないように試みた。
が、その後、次の駅で酔っ払いが乗り込んできて、こともあろうに私のすぐ右
側に座るではないか。
しかもかなり泥酔しているため、全身から体臭とアルコールの混ざった匂いが、
水蒸気のようになって目で見えそうなほどであった。
嗅覚が鋭い私は完全に打ちのめされた。
「くっさー、なんてこと!あー腹立つ!!こいつらオヤジ狩りにでもあってし
まえ!!!!」
心のゆとりがない私は、この二人のオッサンに殺意漂う視線を投げかけながら、
すぐに席を立った。
うちの父親がこんなんじゃないことを祈りながら・・・。
The End
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