<2002年11月分>

福井晴敏「亡国のイージス」(講談社文庫)

 軍事モノです。

 本当にせっぱつまったときは、感情を押し殺した判断をとらねばなりません。それが国家に関する問題ならなおさらです。
 それは十分に理解できても、実際に行動に移せるかはまた別の問題です。
 また、それが理解できるのは所詮他人事だと思っているからで、当事者になってみるとそれが大きな間違いだったと気付くかもしれません。

 と、いうようなことをテロリストと日本政府との戦いのなかで書いているのですが、これが強烈に面白い!

 矛盾した世界に葛藤する登場人物がとてもリアルで、そこで行われる駆け引きは実にスリリング。
 また、理屈に溺れることなく、感情を表すラストシーンも美しい。

 「正義」という言葉にウサン臭いものを感じる人は必読です。

 

東野圭吾「毒笑小説」(集英社文庫)

 ブラックユーモア短編集第2弾。

 ブラックユーモアだけでなくミステリ、ヒューマンものもあり幅の広い内容です。

 "超たぬき理論"、"しかばね台分譲住宅"、"あるジーサンに線香を"などの短編を収めた「怪笑」のほうが総合的に面白かったですが、"エンジェル"、"手作りマダム"は秀逸な出来。
 どちらも実に日本人的な行動パターンが面白く、セリフ回しがツボにはまります。

 

横溝正史「悪魔の手毬唄」(角川文庫)

 御存知金田一耕助の探偵小説。

 管理人が読んだ金田一シリーズはこれが3冊目なんですが(他は「女王蜂」「八つ墓村」)、構成はNo.1でした。読んだ後、とてもすがすがしい気持ちになりました。

 横溝作品は文体がきれいでいいですね。雰囲気が厳粛で読んでると落ち着きます。

 

夢枕獏「空気枕ぶく先生太平記」(集英社文庫)

 大作家・空気枕ぶくの傲慢&ワガママにキレた編集者が空気枕ぶくの暴露本をだす、というお話。

 文章のテンポが軽妙で、噺家の話をきいているよう。
 ハチャカワ書房、驚愕館、太宰御茶無、飢餓直哉といったネーミングもナイスでした。

 「あんたガンやで」「がーん」というギャグに不覚にも大笑いしてしまいました。

 

福井晴敏「Twelve Y.O.」(講談社文庫)

 「亡国のイージス」があまりにも面白かったので、おおいに期待してよんだのですが、これが正直肩透かし。

 おもしろくないことはないです。が、「亡国のイージス」をよんだ後なのでどうしても不満が残ります。

 RAINBOWで言うと、1stと「RISING」ほどの差はないにしても、「STRAIGHT BETWEEN THE EYES」と「BENT OUT OF SHAPE」くらいの差はあります。

 

賀東招二「本気になれない二死満塁?」(富士見ファンタジア文庫)

 え〜、22にもなってジュニア小説に手を出しちまいました。笑ってください。

 が、これが最高におもしろいのです。それだけにタチが悪いのです。

 ジュニア小説コーナーに180cmの男がたたずむ光景はかなり異様なものでしょう。

 この手の小説をレジにもっていくときは勇気がいりますね。
 「カバーはどうなさいますか?」
 なんて御丁寧に店員さんが訊いてくれますが、そんなのどーでもいいから一刻も早くレジをすませて頂戴!
 そのうち店員が
 「いい歳してこんな本よんでんじゃねーよ」
 と心のなかで言ってるような妄想がふくらみ、
 「ちがうんだ!ちがうんだ!俺が悪いんじゃない!この本が悪いんだ!だっておもしろいんだもん!」
 と胸倉つかんで叫びたくなる衝動にかられてきます。
 その結果、よけいに挙動不審になり、どっからどーみてもヘンな人になってしまうという悪循環。
 嗚呼、ダメ人間。自分の器の小ささを痛感させられました。

 

桜庭一樹「EVE TFA 亡き王女のための殺人遊戯」(ファミ通文庫)

 人気AVG「EVE」シリーズの小説版。これは設定が「TFA」の少し前。

 いつもの「小次郎編」と「まりな編」ではなく、「小次郎編」と「弥生編」から話が成立しているのが特徴。

 これが良い!
 性格がネガティブな管理人は、弥生の心情につよく共感をおぼえるのです。
 自分に自信がなく、自分は必要な人間なのか訊きたいのに答えが怖くて訊けない。でも、そういう自分を知られるのが怖くて強がってしまう弥生に、
 「切ないねぇ」「わかる、わかるぞぅ!」
 と、おもわず半泣きになってしまうのです。

 と、弥生の心情は良いのですが、事件は浅かったりします。サスペンスを期待して読むと肩透かしをくらいます。ま、この厚さだと深い事件は書けないか。

 この小説よんでから、コーヒーの量が格段にふえました。
 

<HOME>