<3月>

貫井徳郎「慟哭」(創元推理文庫)
 タイトル買いした一冊。 

 内容は、幼児誘拐事件を軸として、宗教に走る人間の心理と現代の家族が抱える問題を描いたサスペンス&ミステリ。

 この小説、警察官と宗教に走っていく男の二つの視点で話が進んでいくのですが、後者の視点が印象的。
 「胸に穴が開いている」男が抱える嘆きと悔恨。宗教に不信感を持ちながらも、その穴を塞ぐためならすべてを投げ出す思いで依存していく様からは悲痛なものを感じます。
 まさに「慟哭」。悲しすぎて涙も出やしねぇ。

 ラストのどんでん返しも強烈です。時間を忘れてむさぼり読みました。タイトル買い成功!

 

北野勇作「かめくん」(徳間デュアル文庫)

 かめにそっくりなんだけどかめじゃない「かめくん」(←レプリカメっていうらしいです)を主人公にしたお話。

 何が何だかわからないままどんどん話が進んでいく作風はこの頃から変わってません。
 「イカ星人」はそこが面白かったのですが、今作は呆気にとられたまま終わっちゃいました。
 「結局何が言いたかったんだ」と思いましたが、そんなことを考える作品ではないような気もしました。

 哲学的なテイストもありましたが、それでも何が言いたいのかよくわかりませんでした。 何なんだ!
 でもまた読もっと。

 

真保裕一「ホワイトアウト」(新潮文庫)

 日本最大級のダムを占拠したテロリストに、そのダムの運転員が一人で立ち向かう、といった冒険小説。

 ただの運転員がテロリストに立ち向かうなんざ到底ムリじゃねぇか、と普通は思ってしまいますが、事件の背景、人物描写、主人公の心理が徹底して書かれているので、ストーリーにムリを感じることは皆無。
 圧倒的スケールの大自然と徹底した描写が絡み合い、読み手を興奮させてくれます。

  今更ながら「自然は怖い」ということを思い知らされました。
 3月になったというのに、
 「寒くて夜コンビニに行けねーよ」
 なんてこと言ってる俺なんて一日も経たないうちに御陀仏ですね。

 

北村薫「夜の蝉」(創元推理文庫)

 文学部に通う女子大生「私」が感じた日常的な謎を、噺家の円紫師匠が解き明かす、といったミステリ。

 読みながら、メロメロになってしまいました。
 「私」の感受性と会話のテンポが絶妙なのです。
 忙しい毎日を送っていると気付かないようなことに、「私」はふと足を止め、思いを馳せる。 その感性が非常に瑞々しい。
 そして、円紫師匠以外にも登場人物がとても魅力的。その登場人物との会話のテンポ、また、その間が実にいい。たまらない。

 なぜ中年男性にこのような文が書けるのだ、と不思議に思います。
 もしかして、これがミステリだったりして。

 P.S.
 もう読んだことのある方、気付かれました?
 そう、これ、第二作目なんです。
 気付かなかった…。うぅ…(涙)
 この「私」と円紫師匠シリーズ、「私」が徐々に成長していく様が肝心なのです。 まぁ、それでも十分話はわかるんですが、口惜しい…。

 

原田宗典「吾輩ハ苦手デアル」(新潮文庫)

 「苦手なもの」をテーマにしたエッセイ。

 今作はギャグにかなり比重が置いてあるので、笑えます。それが、後をひく面白さ。
 不気味にも電車のなかでニヤケてしまいました。
 そのとき周りにいた方々、公共の場で失礼しました。

 

江戸川乱歩「湖畔亭事件」(創元推理文庫)

 表題作に明智小五郎が登場する「一寸法師」を加えた一冊。

 二作とも純粋な探偵小説ですが、乱歩作品としては可もなく不可もなくといったところ。あまり印象にも残りませんでした。
 どちらかといえば、表題作が面白かったです。

 

北村薫「空飛ぶ馬」(創元推理文庫)

 ↑でヘマを犯し、泣く泣く第一作目である今作を読みました。

 「あ〜、いいなぁ〜」というのが読後の感想。
 瑞々しい文体、会話のテンポ、間が絶品です。
 そして「私」が過ごす、何気ないけどかけがえのない大学生活。いい。実にいい。

 こんなステキな大学生活送りたかったよ、と思わずグチってしまう管理人でした。

 

中村うさぎ「うさぎの行きあたりばったり人生」(角川書店)

 著者の半生を綴った一冊。

 「三つ子の魂百まで」とはよく言ったもので、幼い頃から我が道をいく生き様に大爆笑。

 「思い込み」「勘違い」
 管理人にも身に覚えがあります。人様にはとても言えず、墓場まで持っていくしかないような強烈なものも。
 それをさらけ出せる中村うさぎ、スゲェや。

 

乙一「さみしさの周波数」(角川スニーカー文庫)

 甘酸っぱい青春小説「未来予報」、コミカルでさわやかな「手を握る泥棒の物語」、哀しいホラー「フィルムの中の少女」、絶望的な「失はれた物語」の4作を収めた短編集。

 どの作品も冴えてます。

 友達に「お前ら、いつか結婚するぜ」と予言された二人を書いた「未来予報」では、不覚にも泣きそうになりました。
 「近所にかわいい幼なじみが住んでる」っていう設定、もはや化石化してます。現実ではあり得ません。
 んなこたぁわかってます。
 でも、うらやましい。うらやましいぞー!

 事故に遭って右腕の触覚以外のすべてを失ってしまった男を書いた「失はれた物語」。 描写が絶望的です。エグイ。 江戸川乱歩「芋虫」にも通じるものがあります。
 もし管理人がこんな目にあったら絶対耐えられません。視覚か聴覚を失うだけで絶望してしまうと思います。
 だから、読んでて辛かったです。気が狂うかと思った。
 ああ、怖い。

 

古処誠二「UNKNOWN」(講談社ノベルス)

 自衛隊の、誰も入れないはずの部屋の電話に盗聴器が仕掛けられていた。その謎をめぐるミステリ。
 舞台は自衛隊ですが、防衛問題などの記述は希薄で、ミステリ色が高いです。いわゆる密室モノ。

 で、管理人はこの「密室モノ」が苦手なのです。
 もっと心理描写を前面にだして、葛藤する人間模様を書いてくれるのならいいのですが、「不可能なはずのことが何故可能だったのか」ばかり書かれると、う〜ん、となっちゃいます。

 コミカルな文体、自衛隊が抱える葛藤を一歩進めて住民の気持にまで触れた面は良かったのですが。

 

中村うさぎ「ダメな女と呼んでくれ」(角川文庫)

 最近よく本出してますね。TVでもよく見ます。
 それだけ働いてるんだな、と思ってたら、友人から「それだけ前借してんだろ」と言われナットク。

 で、これは新作エッセイ。 期待通り笑わせてくれます。
 たまに出てくる真面目な話もいいスパイスになってます。ネタの引き出し多いですね。

 

北村薫「秋の花」(創元推理文庫)

 私と円紫師匠シリーズ第3弾。初の長編であり、また、初めて人が死ぬという大騒動が起こります。

 とはいえ、「なぜ密室が?」とか「アリバイは?」などという純ミステリ的な展開にはもちろんなりません。いつもの世界に安心して浸れます。

 で、初の長編ということですが、これが長いだけの冗長なものになったら目も当てられない。
 が、さすが北村薫。冗長さなど微塵も感じられないばかりか、長編だけに事件や人間関係を深く掘り下げてあり、ま〜、面白いこと面白いこと。

 そして、節々にでてくるふとした描写。これが切ない!
 あまりにも切ないので電車のなかで雄叫びをあげるところでした。

 

北村薫「六の宮の姫君」(創元推理文庫)

 私と円紫師匠シリーズ第4弾。長編です。

 「私」は卒論のテーマを「芥川龍之介」にします。で、そこで出会った芥川の謎の言葉をめぐった謎解きをする、というのが今作のストーリー。

 で、当然のことながらたくさんの文学作品がでてきます。ホントにたくさん。
 著者の知識には驚かされるのですが、文学部でも何でもない管理人には少々キビしかったです。

 

北村薫「朝霧」(東京創元社)

 私と円紫師匠シリーズ第5弾。
 社会人になった「私」が三つの謎に出会います。

 そのなかでは最初の「山眠る」が秀逸でした。
 人の心の内側にある、哀しくやさしい部分にそっと触れられます。うっとり。

 さて、今作が出版されたのが5年前なのですが、このシリーズはまだ続くのでしょうか?
 5年も開いているということはこれで終わり?
 残念な気がする反面、こういう終わり方もシャレてる気がします。
 それは著者のみぞ知る、ということですね。

 

中島らも「永遠も半ばを過ぎて」(文春文庫)

 ある写植屋(印刷物のタイプライター)が詐欺師に出会い、大手出版社を相手取り本を出版しよう、というコメディタッチの物語。

 これが、ビミョー。
 登場人物にリアリティが感じられず、薄っぺらい印象を受けました。
 「?」と思う展開もしばしばで、読後ポカーンとしてしまいました。残念。

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