<8月>

桑原譲太郎「アウトローは静かに騒ぐ」(ハルキ文庫)

 銀行強盗に入ったはずの主人公が、すったもんだの末革命家に祭り上げられてしまう、という話。

 その過程が簡潔気味で、また、主張が理想論すぎる嫌いもあり、リアリティが薄く感じられます。
 が、そんなことはどうでもよくなるほどの熱気があり、主人公のメッセージに素直に心揺さぶられている自分を発見します。泣いちゃってるし、俺。

 後半は若干尻すぼみになっていきますが、一級のエンターテインメント小説です。面白かった。

 

北村薫「ターン」(新潮文庫)

 前作「スキップ」につづく<時と人>シリーズ第2弾。
 今作は同じ一日が繰り返してしまう、というもの。世界には自分一人しかおらず、どうやっても定刻になると一日前に戻ってしまいます。

 そのテーマが影響したのか、全体的にさみしい印象を受けました。
 登場人物も少なく、そのことがいっそうさみしさを際立たせます。

 北村薫特有の切なさはあまりなく、淡々と話が進んでいきます。その流れにひきつけられる魅力はあまり感じませんでした。「スキップ」が面白かったので肩すかしをくらった感もあります。残念。

 

横溝正史「人面瘡」(角川文庫)

 短編5作を収めた一冊。

 どの作品もテンポがよくすらすら読めます。
 それでいて内容が浅くなく、怪奇性や怨念がほどよくこめられていて、どの作品も印象的なのはさすが。

 コミカルなタッチが収録作のなかでは異色な「蝙蝠と蛞蝓」が、いい味だしてます。

 

桜庭一樹「EVE burst error PLUS サヨナラ キョウコ、サヨナラ セカイ」(ファミ通文庫)

 今作の特徴は「小次郎編」と「恭子編」から成っているところ。設定は「burst error」の直後。

 その内容に後付けの印象がぬぐえない、というのが正直な感想ですが、そんなことはどうでもよろしい。「世界」に入り込めればそれでいいんです。

 

森村誠一「人間の証明」(角川文庫)

 映画版がすごく面白かったので原作も読んでみることに。

 原作と映画では随分内容がちがいました。
 個人的には、映画のほうが要領よくまとめてありドラマティックに演出されてあったのでずっと面白かったです。上っ面だけの偽善を排除し、人間の根本的な醜さ、差別を哀しいくらいにリアルに描いてあるのが良いです。

 戦後という人間の生々しさが露見する場での日本人、白人、黒人の関係は倫理的ではないとはいえ、内面にあるものを隠すことなく発散している分、かえって健全ではないか、と思いました。

 

伊坂幸太郎「陽気なギャングが地球を回す」(ノン・ノベル)

 特殊な能力をもった4人の強盗団のお話。

 4人それぞれの個性が立っており、そのやりとりがイイ感じ。テンポがよくヒネリが利いてる。自然に口元が緩んでしまいます。
 正直リアリティは感じられませんが、スタイリッシュなコメディ映画を観ているかのような楽しさがあります。
 個人的にはムダ口ばっかり叩いてる響野がすきです。

 情報提供してくださったdevils daughter's zakkさんに感謝です!

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