人生識字、憂患之始(2003年1月編)

最近とみに感じるのは自分自身の読書スピードの低下。
それは単なる物理的な低下というわけではなく、好きな小説に
没頭するだけの時間がないという理由だったりする。気が付いたら
大人になるにつれ雑用が増え、あの頃のように本の世界へ身も心
も飛び込むことは出来なくなっているけど、それはそれこれはこれ。
自ら選んだ選択肢なのだから、多少の犠牲には目をつむって
通学の電車の中でどっしりと本を読もう(帰りの電車は疲れて眠ること
が多いけど)。

決まり文句(↓)
このページは僕が最近読んだ本(小説中心、たまに漫画、聞いたCDも)
を紹介するコーナーです。僕の評価を客観的に把握しやすいように書名の
下に星印を書いていますが、★が1点、☆が0.5点で5点満点としています。


「ダールワス・サーガ」シリーズ バーバラ・ハンブリー ハヤカワ文庫
★★★
とにかく読むのに時間がかかった作品。
全3巻で1巻のタイトルが「闇の戦い」、2巻が「迷宮都市」、
3巻が「光の軍隊」です。

ハヤカワのファンタジー文庫にはありがちな話でありますが、絶版です。
だから頑張って古本屋で探してください。僕など集めるのに数ヶ月かかりました。
本音を言うと集める時の努力に相対するほどの中味は面白くなかったとなりますけど――。

主人公は二人。
一人はヨローッパの中世史を専攻し、博士論文執筆中のジル(女性)。読んでいて
驚いたのはアメリカにも女性のくせに歴史なんて意味のないことを学びやがって、
という考えが存在するということ。彼女は両親の期待を見事に裏切り、結婚をして
子供を育てるという道を選択せずに学者の道を選択します。こんな思想は日本だけ
だと思っていました。

もう一人はルーディ。
ちなみに男性。彼は簡単に言うと暴走族のヤンキーですね。こういう感覚も日本とは
変わらないのだろうか、彼は日々をつまらなく思うペンキ塗り職人です。

そんな二人がダールワスという異世界へと飛び込んでしまうという、これまたありがちな
話なのです。さすが絶版するだけはあります。指輪物語に出てくるガンダルフを想起
させるインゴールドという老人の魔法使いに連れられて、ジルはファンタジー世界で
剣士として、ルーディはインゴールドの弟子つまりは魔法使いとして生きていきます。

ただ生きていくというのではなく、この世界は今「暗黒の生き物」による侵食に悩まされて
おり、その攻撃を食い止める・・・というより日々ただ生き延びること、それが彼らの当面の
目標となってしまいます。しかし、この「暗黒の生き物」。最後まで僕の頭の中で定型化された
存在にはなってくれませんでした。それが難しい一番の要因は彼らと人間とが単純な善悪2元論
で区別できるわけではないことでしょう。単に彼らは暗闇に生きていて、人間を襲う。
それが宗教的に暗黒であるとか、観念的にとかそういう価値基準で決して計られてはいないのです。

その「暗黒の生き物」の攻撃は過去にもあり、それを人間は食い止めた。しかしその結果文明は
崩壊し、どうやって食い止めたのか、それに関する情報が一切残されていません。

というわけでここで登場してくるのが、そう、歴史学者のジル。
待ってました。恐らく僕が一番面白かったのが、彼女のひたむきな研究姿勢ではないでしょうか。
彼女によって、それまで語られていた「歴史」が見事に崩れさっていく、その極めて実証的な
作業はもうお手本ですね。これは面白い。

とは言うものの、世間的にはそこが面白いはずもないのか、ルーディにはファンタジー世界の
王妃(で未亡人)との甘いラブロマンスが待っています。まあ、がんばってくださいや。
(1月16日)


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