DARK HORSE / CCODC-05

GEORGE HARRISON ANTHOLOGY

 

It Don't Come Easy*
Gopha Krishna
Dehra Dun
Going Down To Glders Green
Get Back
**
Window, Window
Everybody, Nobody
Mother Devine
Cosmic Empire
Tell Me What Has Happend With You
Everytime Somebody Comes To Town
***
I Still Love You
Down To The River
Miss O'dell
Flying Hour
+
Lay His Head
Life Itself
Shelter In Your Love
++
Someplace Else
Abanedoned Love
***
Maxine
++

all songs written by George Harrison except
*Richard Starkey
**Lennon-McCartney
***Bob Dylan
+Harrison/Ralph
++Harrison/Lee
+++Traveling Wilburys

 

<解説>

 ジョージ・ハリスン未発表作品を集めたアルバムである。ビートルズの「アンソロジー」とは異なりライブからの音源はなく、公式に発表した曲の初期テイクの類もほとんどない。どちらかというとこの「ジョージ・ハリスン・アンソロジー」はジョージの未発表曲を選りすぐったアルバムといえる。
 なにより驚くのは、何故こんないい曲をリリースしないんだろうかという曲ばかりだということである。

It Don't Come Easy

 ご存知リンゴ・スター作の大ヒット曲(英・米共に4位)だが、この曲のプロデュースを担当したジョージは、自らベーシックトラックの上にリンゴのためにガイドボーカルを録音している。これが下手をするとリンゴ自身の正式のバージョンよりもいいのだから困ったものである。
 リンゴのバージョンと同じテイクだが、ブラスなどのオーバーダビングがまだなく、間奏も1フレーズ長い。
 一般にオール・シングス・マスト・パス・セッションより前の70年3月11日の録音とされており、ビートルズ解散より前となるが、ジョージのボーカルは実に生き生きしていており、もうビートルズの足かせから完全に抜け出ているかのようだ。
 しかし、一般的にこの時期のこの曲のプロデューサーはジョージ・マーティンとされており、また、この曲の発表はかなり後の71年4月であるので、70年3月ではなくもうちょっと後の録音ではないかと思われる。そうでないとすれば、その時期にジョージによるガイドボーカルがとられているということになると、実はこの曲の大部分はジョージの手によるものではないかという疑いまで出てきてしまう。

 

Dehra Dun
Gopala Krishna

 ジョージのプロデュースにより全世界で大ヒットしてしまった、本物の坊さん集団「ラダ・クリシュナ・テンプル」のシングル"Hare Krishna Mantra"のセッション中に録音された未発表曲。おそらくは1969年の3月〜4月頃の録音だと思われる。
 "Dehra Dun"は、ビートルズの「アンソロジー」のビデオにおいて、ジョージの自宅であるフライアー・パーク内の芝生にジョージ・リンゴ・ポールが座ってインドへ行った時の話をしている場面で、ジョージがウクレレ片手にインドで作った曲として歌っているものだ。ジョージがウクレレを片手に歌っていた曲である。
 アルバム「ダーク・ホース」収録の"It Is 'He'(Jai Sri Krishna)"と同じように、同じフレーズ・言葉をくりかえし唱え、それが次第に早くなっていくというマントラの形式の"Gopala Krishna"は非常に耳触りが心地よく、出色の出来である。
 どちらもバックの楽器はほとんどジョージ一人でマルチトラック録音しているものと思われる。

 

Going Down To Golders Green
Get Back

 ラダ・クリシュナ・テンプルと同じく、ジョージがプロデュースしたアップルレーベルのミュージシャン、ドリス・トロイのデビューアルバムのセッションから。1969年の10月〜12月頃の録音だと思われる。
 "Going Down To Golders Green"は、ジョージの作品の中ではめずらしいストレートなロックン・ロール。まだセッション的な色合いが濃いが、完成させればかなりいいいところまでいく予感をさせている。
 "Get Back"は、ご存知ビートルズのヒット曲だが、ドリス・トロイがカバーするにあたってジョージがセッションで新たな曲の解釈と方向性を導き出しているようだ。
 ここまですべて他人をプロデュースしたセッションからの作品で、ビートルズから離れたところでしかこれら作品を残せなかったジョージの苦悩が読み取れるようだ。

 

Window, Window
Everybody, Nobody
Cosmic Empire
Mother Divine
Tell Me What Happened To You
Everytime Somebody Comes To Town

 自らのビートルズ解散後初のソロアルバム「オール・シングス・マスト・パス」に向けてのデモで、基本的にギター1本による弾き語りとなっている。これがまたジョージの線の細いボーカルにマッチして実にいい味を出している。
 ソロのレコードを発売する時点で、何十曲もあったという手持ちの曲の中には、後に発表することになる"Beautiful Girl"、"You"、"I Don't Want To Do It"といった曲も含まれている。ここに収録されたものは、それにも該当しなかった曲であるが、なかなかどうして下手をすればアルバム収録曲よりも耳あたりがいいんじゃないかという、"Mother Divine"、"Window, Window"、ギターのリフが印象的な"Cosmic Empire"、イントロの部分がアルバム収録の"The Ballad Of Sir Frankie Krisp"に流用された"Everybody, Nobody"など、聴きどころが多い。
 "Everytime Somebody Comes To Town"は、テイクのはじめに曲名を言わずに始めてしまっているものもあるために、"Nowhere To Go"、"When I Come To Town"などとも呼ばれていたりする。

 

I Still Love You
Down To The River

 同じく「オール・シングス・マスト・パス」セッションからで、ジャム・セッション的に演奏されているもの。おそらくアレンジを模索している段階なのではないだろうか。
 "I Still Love You"は、当時は歌い出しの歌詞を取って"When Every Song Is Sung"の題名で呼ばれていた。この曲は一度シラ・ブラックに贈られたが完成に至らず(シラ・ブラック本人は気に入っていたようだが)、最終的にはリンゴ・スターに贈られ、アルバム、「リンゴズ・ロートグラビア」に収録された。"Down To The River"は、ジョージのヨーデルのようなよれたボーカルがとても奇妙な曲である。

 

Miss O'dell

 シングル"Give Me Love"B面曲だが、ジョージは歌っている最中で笑ってしまい、歌詞がところどころとぎれていまっているので、笑っている部分だけとり直したのがこのバージョン。あまりに露骨に笑っているところだけを録音し直したためか、結局ジョージは笑っている方を正式に発売した。

 

Flying Hour
Lay His Head

 ワーナー側の以降により再編集される前のアルバム「想いは果てなく〜母なるイングランド」より。
 どちらも後に発表されたリミックス・バージョンより半音分テンポが速く、同じテイクのようだがミックスの違いにより雰囲気もだいぶ違い、曲の長さも異なる。
 「想いは果てなく〜母なるイングランド」は、曲が差し替えられた後、結果的にジョン・レノンの死によりヒットしたが、そうでなければ、確実に差し替えられる前のものの方がはるかによい。

 

Life Itself

 アルバム「ゴーン・トロッポ」からのデモで、唯一ジョージのデモとしては公式に発表されていた(豪華本"Songs By George Harrison"に収録)作品である。ジョージが一人ですべての楽器をマルチトラックで演奏しているのだが、ドラム音がリズム・ボックスによるポコポコとした音である以外は、アルバム収録の物とほとんど変わらない。

 

Shelter In Your Love

 自作曲"So Sad"を提供したこともある元テン・イヤーズ・アフターのギタリスト、アルヴィン・リーとの共作曲で、おそらくは彼の86年のアルバム"Detroit Diesel"に向けたセッションでの録音。

 

Someplace Else

 ジョージが音楽を担当した映画「上海サプライズ」より。映画の中で挿入歌として何回か断片的に聴くことが出来る。アレンジに関しては、ある種未消化という感も否めず、のちにアルバム「クラウド・ナイン」に収録されたバージョンに聴きなれると何か物足りなさを感じてしまう。

 

Abonedoned Love

 75年のボブ・ディランの作品のカバーだが、完成度が非常に高く、公式発表しても何ら不思議ではない。これは映画「ポーキーズ・最後の逆襲!」のサントラの一つとして録音されたが結局お蔵入りし、映画には同じくボブ・ディランのペンによる「青春の想い」が劇中でわずかに使われている。

 

Maxine

 トラベリング・ウィルベリーズのセカンドアルバム「ヴォリューム3」セッションより。一説によるとデル・シャノンがこの曲のセッションに参加しているらしいが、真偽のほどは定かではない。
 「ヴォリューム3」では、ジョージの存在が少し薄いので、ぜひともこの曲を入れてもらいたかったという感がある。