反射

海は静かに空を反射していた

鴎が空を舞っている
いるはずもいないこの砂浜で
私は太陽を睨んでいたね
誰もいない水の上から
あの人の叫び声がこだましていた

海は静かに空を反射していた

真上にあった光は傾き
まっ赤な空が血の通った海に沈んだ
途端に吐き気までもが邪魔をしてきた
下を見たら血液はもうここまで来ていた
私を呑み込む気なのか?

海は静かに空を反射していた

言葉を持たない海が話している
漆黒の空から身を守るように
私自身も同じことをした
自分の領域を汚されないよう
ある程度の距離を置いてきた

海は静かに空を反射している

だが 決して意志がないわけではない
馬鹿にしてはならない海の生き方は
還っていく私の魂までもを浄化してくれる

海は静かに空を反射し続ける

意志を持たない私の心を優しく包み込んでいく
何もかもを忘れさせてくれている
それは幼い記憶の片隅に残る
母への追憶なのかもしれない

それでも
海は静かに空を反射していく



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