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ROAD TEST No.407
素材の魅力+α
TOYOTA ALTEZZA RS200 5AT



 トヨタの”FRスポーツセダン”、アルテッツアがきわめて好調な滑り出しを見せている。発売から一ヶ月で1万5000台もの受注を果たし、4000台/月という目標販売台数をはるかに上回る勢いなのだ。CGでも先月号で期待以上の好印象を受けたことはお届けしているが、その実力はどんなものなのか、フルテストとふたつの比較テストに取り上げて確認することにした。登場車種はRS200の6段MTと5段AT、それにAS200の4段ATモデルの3台。つまりアルテッツアの全グレードを駆り出してのフルコースメニューという具合である。


 最初にまずお断わりしなければならないことがある。先月のロードインプレッションでは予想以上の優れたマナーに数々の賛辞を述べたものの、今回あらためてじっくりテストしたところ、あの時とはかなり異なった印象を受け、結果的にこのアルテッツァに対する
評価も違ったものにならざるを得な得なかったのだ。テスト車の仕様の違いやコンディションなど、いくつかの要因が重なってのことと想像されるが、いずれにせよ今回はいつものテストルートを存分に走りこんでの結果だから、今回をもってアルテッツァに対するわれわれなりの評価としたいと思う。


素のRS200+5段AT

 まずごく簡単にテスト車のスペックから。アルテッツァには大きく分けてふたつのモデルが存在する。直列4気筒の3S−GEを搭載したRS200と、直列6気筒の1G−FEを持つAS200である。AS200は4段ATのみだが、RS200は6段MTと電子制御5段ATという2種類のギアボックスを選ぶことができ、さらにAS200とRS200の5ATモデルには、“Zエディション”と呼ばれるパッケージオプションを装着することができる。パッケージオプションというとオーディオやカーナビなど、走りっぶりそのものとは直接関係のない装備をイメージしがちだが、このZエディションの場合、215/45ZR17のタイアやそれに見合ったサイズのブレーキ(ローター径にしてフロント:296×32mm、リア:307×12。スタンダードはF:275×25、R:291×10mm)、さらにはトルセンLSDなど、実は車そのものの印象を左右する重要な部分が含まれているのである。ちなみにRS200
の6段MT仕様車はそれらを最初から装備しているので、実質的にァルテッツァは5つのグレードに分かれるということができる(RS200の6MTモデルにも“Zエディション”はあるが、標準仕様との違いは“エアログリル”などといった細かい部分がほとんど)。今回フルテストの対象としたのはRS200の“ステアシフトマチック付5AT”仕様のスタンダードモデル。つまりタイアは195/65R15でトルセンLSDはなし。ただしオプションとしてトラクション・コントロールやオーディオなどが追加されていた。なお、車両本体価格は224万円である。


ナチュラルな強さが嬉しい3S−GEユニット

1984年にビスタ/カムリに搭載されてデビューした3S−G型4気筒DOHCエンジンは、もう15年もトヨタの2l自然吸気クラスのスポーティーエンジンとして現役を務めていることになるが、今回初めて縦置きされることに伴い、デュアルVVT−i(吸排気の可変バルブタイミングシステム)の採用や11.5:1という高圧縮比化など、大幅な仕様変更を施されている。結果的に得られた出力は、チタンバルブの採用により高回転化を図った6段MT車で210ps/7600rpm、22.Omkg/6400rpm、5段ATと組み合わせたテスト車でも200ps/7000rpm、22.Omkg/4800rpmとなっている0 2lNAで200ps、つまり100ps/lといえば最近でこそ驚くほどの数値ではなくなったものの、可変バルブリフトなしでそれを達成した例は多くない。となると低速域のトルク不足が心配されるところだが、トヨタがそんなミスを犯すはずもなかった。とにかくこのエンジン、ボトムエンドから7200rpmのレブリミットまで全域にわたって充分なトルクを生み出しながらスムーズに吹けるのが特敏だ。たとえば路面の摩擦が高いJARIの高速周回路でブレーキを踏みながらスロットルを踏みこんでやると、2750rpmあたりで回転上昇が一瞬止まったかと思う間もなく、すぐさまホイールスピンを開始してしまうほどのトルクが確保されているのだ。これは逆説的にタイアのグリップを含むトラクショシ性能の低さを表わした点ともいえるのだが、いずれにせよ自然吸気のAT車でストール発進がでさないなんて3l以下の排気量ではまず考えられないことであり、その点だけをみても低速域のトルクが充分以上なことが想像できるに違いない。一万で4000rpm以上の高回転域の伸びも問題はなく、4800rpmあたりで軽くトルクが盛り上がったかと思うとそのままスポーティーな排気音を奏でながらトルクはさらに少しずつ盛り上がり、スロットルを踏みつづけるだけで0−400m:16.0秒という爽快な加速を得ることができる。これが純粋なスポーツカーだとしたら1330kgという
車重に対してやや線が細いという評価になるかもしれないが、スオーツセダンとしてなら充分だし、280ps級のターボカーに慣れ親しんだわれわれでさえ、このナチュラルそのものの加速感は、決して過剰ではない、人間の自然なリズムに合ったパワー感ということが
以上の高回転域でヘッド周りからの高周疲音が耳につくが、このATモデルではバルブタ
イミングが違うのかと思うほどノイズは穏やかで(もっとも実用車として考えれば5速3500rpmに相当する130km/h以上ではややノイジー)、かえって無理なくトップェンドを多用でさるほどだった。


レスボンスに優れたAT

 そんなエンジンの好印象を支えているのは、トヨタならではのシフトスケジュールの巧みさだ。普通のスロットル操作なら3000rpmにも届かないうらに、ほとんどショックらしいショックを感じさせぬままシフトアップしてくれるこのAT、ノーマルモードでもスポーツモードでもちょっとした右足の匙加減に確実に反応してくれるし、5段のおかげで各ギアのつながりも理想的だ。たとえばフルスロットル加速の時、2速以上はリミットまで200回転ほど残して次のギアヘ切り替わるのだが、一番回転が落ちる3速へのシフトアップ直後でさえ5000rpmを割ることはなく、常に一番美味しい回転域をキープできるのだ。 ただATに関してひとつ疑問に感じたのはセレクターの設定だ。メルセデス風のスタッガードゲートを持つこのセレクター、向こうからP−R−N−D/M−3−2/Lとなっていて、DとM、2とLは左右にずらすだけなのだが、DからMにシフトしてもあくまでステアリングホイール上にあるスイッチが作動するようになるだけであって、たとえば100km/hでクルージング中に一段強いエンジンブレーキを得ようとすると、左手でセレクターを動かしてからステアリングの手前側スイッチを押すという2アクションが必要になるのだ。ポルシェのテイブトロニックに代表されるシーケンシャルシフトとは異なり、マニュアルモードでも各ギアを変速する設定(メルセデスAクラスと同じくMモードでも上限のギアが変わるだけ)の考え方は理解できるが、せめてDからMヘシフトしたときには自動的に4速へ落らて、必要ならボタンを押して5速へシフトアップさせるほうが明らかに自然だと思うのだが。燃費はボディサイズと性能を考えれば、満足できるものだった。1100kmにおよぶテストの総平均で9.Okm/lという成績も立派なら、それからJARTでの性能計測区間を除いた公道上での平均9.5km/lという成績は、ターボカーにはとても真似のできない数値である。先に述べた自然そのものの加速感といい、優れた燃費といい、このアルテッツァのパワーユニットは、いろいろな意味で“良識的”といえるのではないかと思う。なお区間ごとの燃費を一応記しておくと、最低はJARIで記録した5.3km/lで、都内を含む一般道では7.9−8.4km/l、山中では5.8km/l、大人しい100km/h巡航では14.3km/lといったところ。リアシート下部に設置された燃料タンクは60lの容量が確保されているから、いわゆる足の長さの点でも文句ない。


本来の姿は17インチ

 というわけでパワートレーン系については高く評価されるアルテッツァなのだが、乗り心地やハンドリングにはまだ煮詰めの余地が残されている。
 まず乗り心地だが、ゆっくりとしたペースでなら問題はない。53:47という基本的な重量バランスの良さのせいで無駄なピッチングはほとんど感じないし、195/65R15サイズのブリヂストンB370はケースもトレッドも比較的ソフトなタイプで、その優れたエンベロープ特性と高いボディ剛性のおかげで、キャッツアイや大きめの目地段差を乗り越えたときの衝撃も充分に遮断されている。ただそうした単発的な入力に対しては良くても、路面の凸凹が連続する場面ではリアタイアが明確にバタツキを見せてしまい、しかも周波数によってはフロアの共振まで招くのが大きな減点対象となってしまうのだ。まるでタイアの縦バネ定数とコンプライアンスがうまくチューニングされていないかのようなこの動きは、先月試した車ではまったく見られなかったものである。ちなみにアルテッツァのサスペンションはグレードによって異なり、RS200の6MTだけは他のグレードより前後のスタビライザー径が太くなる(フロント:26mm径の中実→27.2mm径の中空、リア:15mm径中実→14mm径中実)ということだが、スプリングもダンバーもブッシュも、実
はまったく同じなのだという。となると逆に乗り心地が大きく違って当然ともいえるのだが、MTモデルのダンピングの効いたスポーツセダンらしい乗り心地を知るものとしては(もっとも比較テストのために今回借り出した6MTはだいぶ傷んでいたが)、フルテスト
車のしゃきっとしない乗り心地にはどうしても不満を覚えてしまうのだ。ちなみに15インチ仕様車のホイールは6.5JJ×15のスチールホイールにホイールキャップが組み合わされているが、いくら17インチ仕様がアルミホイールとはいっても、ブレーキローターまで大型化されていることを考えると、バネ下重量がそう大幅に違うとは思いにくい。だからこそブッシュとタイアの関係についてもっと慎重になってほしいと思う。いっそのこと全車17インチにしてしまった万が、アルテッツァという車の佐格をはっきり表わせたような気がしてならない。
 そんな乗り心地から想像できるとおり、ハンドリングもそれなりのものだ。もちろんトヨタの基本的な流儀どおり、ある程度限界に近づくと明確なアンダーステアを示し、最絶的にはトラクション・コントロールが働くという安全そのものの図式は守られているし、狭い路地での取りまわしの良さなど後輪駆動のメリットを充分に生かしているのだが、何せタイアがタイアだけにコーナリングの限界は高くなく、だいいち比較的早い段階でタイアが腰砕けになってしまうため、コーナリングを楽しもうという気になりにくいのだ。も
ちろんTRCをカットオフして振り回せば”エフアール”ならではのテールアウト状態を得ることはできるが、その際のトラクション不足も明らかだ。
 そんな限界的なことはともかくとして、今回のテストでは直進性にも疑問を感じた。もちろん基本的なスタビリティーに問題はないのだが、荒れた路面では轍に対する反応が少なくないし、何よりパワーステアリングが直進付近で不自然な重さというか、フリクショ
ンを感じさせるのが気にかかる。そういえば横風に対してもやや敏感に反応することが多かった。


スポーツセダンらしくあれ

 全長:4400mmというと、同じトヨタでいえばコロナ・プレミオ(4520mm)よりずっと短いことになるのだが、それでもアルテッツァの居住性はさほど悪くない。たとえば後席ではヘッドスペースこそ実用セダンとしてミニマムでしかないが、身長170cm程度の大人がタンデムに腰掛けて窮屈に感じないで済むレッグスペースが確保されているし、センタートンネルの張り出しも我慢できる範囲。トランクルームは開口部が狭いし、天地の高さもFWDセダンの棲準を明らかに下回るが、絶対的な容量はそこそこ確保されている。つまり大人ふたりと子供ふたりの家族なら充分に実用になるスペースは確保されているのだが、ここで問題にしたいのはもうちょっと細かい部分のことだ。たとえばドライビングシートなど一応パケット風の形状はしていてもサイドサポートが不足しているし、ぶわぶわとした柔らかいタッチもスポーティーさとは縁遠い。先月はシャープなハンドリングや乗り心地に感激してつい書さ漏らしてしまったが、こういった細かい部分の積み重ねによって醸し出される車全体のイメージの演出という点では、まだまだトヨタもBMWから学ぶべきところがありそうだ。


+αを

 何だかあれこれと不平を並べ立ててしまったが、それもわれわれがアルテッツァという車の成り立ちに期待するところ大だからである。これぐらいのサイズで、これぐらいの価格で、これぐらいのパワーのスポーツセダンは、セダンに実用性以外のプラスαを求める
ドライバーにとって共通の理想像であり、そんな車が日本の自動車メーカーにほとんどなかった方がおかしいぐらい。予想以上に高い人気も、ある意味では当然ともいえる。ただ、そんな順調なアルテツッァだけに、これからの本格的な熟成が望まれるのも事実だ。少なくとも今回のテストで得られた印家は、まだ“スポーティーなセダン”の範疇を超えたものではない。“スポーツセダン”と豪語するからには、あらゆる面でもっと骨太さを感じさせてほしいし、廉価グレードだからといって走りっぶりまで安いものにしてほしくない。
No.1メーカーだからこそ素材を提供するだけではなく、「スポーツセダンとはこうでなければならない」という迫力に満らた主張を打ち出してほしいのだ。