ONCE AGAIN---2
今日は一段と冷えたから
もしかしたらもしかして少しだけ雪が降ったかもしれないけれど
でも二人はその時間はもう暖かい部屋の中にいたからそれは見れなかった。
小さな居酒屋の上に一人で住んでいる彼女の部屋は、どこか懐かしくって暖かい。
キレイにベッドメイクされたふかふかのスプリングはなくても
真っ白なバスローブやこれ見よがしな夜景はなくっても
ちゃんと暖かいのは嬉しい。
二つ並べた布団の中で彼は、どっかの旅館みたいだなぁなんて思っていた。
それは正直な感想。
多分あと数時間したら夜が明ける。
「ねぇ。」
真っ暗な部屋で彼女が言った。
彼の腕の中で彼女は彼に背中を抱かれていたままでその人を見上げて。
何か話してよ、そう続けた。
「なんかってなによ?」
彼は少し困ったような声で返した。
「なんでもいいよ。」
「じゃぁ、話、聞かせてよ。」
それは彼女にとっては意外な展開だったかもしれない。
彼の腕の中で寝返りをうった彼女の鎖骨と胸元にまだ新しい彼の痕跡が暗闇に浮かび上がる。
「話?」
「俺の知らない話。なんでもいいよ。
いつも聞きたくない他人の話聞いてんだろ?」
彼女が不思議な顔をしていた。
でも少ししてから彼女は嬉しそうに微笑んで。
「そうね。でも。」
「でも?」
「全部は話さない。」
今度は彼が不思議そうな顔をした。
それでも彼は聞き返さなかった。それでいいと思った。
多分彼女には話したくないことがある。多分彼には聞きたくない話がある。
お互い知らなくても、知らせなくてもいいことがあるから。
彼女はゆっくり話した。
本当は誰かに聞いて貰いたくて、でもそういう相手はどうしてか現れなくて
今まで一人でその胸の奥にしまってきた些細なこと。
途中思い出して、いつもならそんなことないけど、
でもなんでだか彼の前では少しだけ涙が滲んだりなんかして。
そうしたら、こんな暗闇の中で気付いているのかいないのか彼は
何も言わないでずっと抱きしめていてくれて。
いっぱい話したあと。
今更温度を感じただけで動く愛情など失せたと思っていたのに
どうしてだろう今日は、幸せになりたいと彼女の心が疼いた。
もう少ししたら夜が明ける。
彼の明日の仕事は午後からだからゆっくりしていられるだろう。
井ノ原はどうしているかな、と彼は思った。
そしたら彼女が同じように呟いた。
「同じこと考えてた」と彼は笑って言った。
彼女とちゃんと仲直り出来たかな?
そう言って彼女は笑った。
おまけになってるんだろうか。
最後までつきあってくれてありがとう。
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