RUST NEVER SLEEPSーニール・ヤング & クレイジー・ホース

     
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「死ぬまでに一度は見ておかなければならないアーティスト」
 1987年にビートルズに目覚め、その後、60、70年代ロックを広く聴き進めるようになった私。その頃の私にはニール・ヤングの良さが全く分からなかった。この辺は「聴かず嫌い克服ノススメ」のニール・ヤング編で述べた通り、最初に聴いたのが弾き語り調の曲で、「暗い」「弱々しい」というマイナスなイメージしか持てなかったせい。 そんな私がなぜ彼に引かれるようになったのか、なぜ彼の音楽を聴くようになったのかについても、やはり「聴かず嫌い」で述べた通り(一度あっちを全部読んでいただいた方が分かりやすいかも)、90年代初頭「グランジのゴッド・ファーザー」として若い世代の間で、彼が再評価されるようになったことが大きかった。そして彼の当時の最新ライブ盤WELDを買い、のめり込んでいったわけで。 そしてWELDを聴けば聴くほど「こんなパフォーマンスを直接体験することが出来たらなあ」という想いも強くなった。ところが、彼は90年代には一度も来日してくれなかった。最後の来日が1989年。「もはやニール・ヤングの来日公演は実現不可能なのではないか?」、そんな噂も何度か聞いた。そんなわけで、ニール・ヤングといえば私にとって 「死ぬまでに一度は見ておかなければならないアーティスト」のひとりだったわけである。

  そんな2001年夏、ニール・ヤングは突然来日した。「フジ・ロック・フェスティバル」のいち出演アーティストとして。野外の大規模フェスティバル、しかもクレイジー・ホースが一緒。間違いなくWELDなどに近い、大暴走ライブになることも想像できた。しかし、こういうフェスティバルって、 一組のアーティストだけを目当てに足を運んでも、決して楽しめるものではない。ただですらチケットは割高、他の出演アーティストは「名前くらいは聞いたことある」レベルの人ばかりで興味もない。こんな状態で高いチケット代を払う気にはなれない。それと、当時は関東在住だから、苗場までなら(九州在住の)今ほど割高ではないとはいえ、交通費もかかる。それらの負担を考えた時、このフェスティバルに彼だけを目当てに足を運ぶという発想は、私にはなかった。 このチャンスを逃すときっと、もう日本で見る機会はないかもしれない、それを承知の上で、私はフジ・ロック行きを断念した。後で聞けば、彼のことなど知らないであろう若い観客の度肝を抜く、いつもの大暴走ニール・ヤング・パフォーマンスだったそうで。そのことを聞いて、またも悔しい想いがしたものだったが。次の来日までまた10年以上待たなきゃいけないんだろうな、 でも彼の年齢を考えれば「10年後」なんてあり得るのか・・・。


まさかの福岡公演決定
 2001年9月、私は地元に戻ってきた。関東からこっちに帰って来て、私が感じた不満はいくつかあったが、その不満の一つが「音楽ファンの求めるイベントや情報がなさ過ぎる」ということ。特に来日アーティストの多くは福岡には来てくれない。東京、大阪限定というパターンが多く、しかもたまにそれ以外の地方を回るアーティストがいたとしても、名古屋、札幌、仙台、広島には来るのに、福岡には来ないというパターンも多かった。 昔なら「仙台や広島よりも福岡優先」だったはずだが、何時の間にか福岡の優先順位は下がってしまったよう。私がこっちに帰って来て以降、何組も見たいアーティストが来日したが、そのすべてが広島どまり。こっちに帰ってきてしばらく、経済的に苦しい状況が続いていた私にとって、「広島まで見に行く」こともまた困難だったわけで・・・。

  そんな2003年、ネットを眺めていたら、「まさか」な情報が。「ニール・ヤング久々の単独来日公演決定」。何しろ、ロック・ファンになった当初から待ち望んでいた人。だから、例え東京と大阪限定であっても絶対に行くつもりだった。ところが、詳しい日程を調べてビックリ。今回は東京と大阪、残るもう1ヶ所はなんと福岡! 名古屋でも札幌でも広島でも仙台でもなく、福岡なんだという。 何という奇跡。もう、これは絶対に行くしかない。すぐにネット上でチケットを予約した。数週間後、チケット到着。なんと、前から3列目。福岡にいると「なかなか来日アーティストがこっちまで来てくれない」反面、もしも来てくれた場合、東京や大阪以上にチケット入手が容易で、しかもよい席で見られるというメリットがあるのもまた事実。この時ばかりは、福岡県在住であることをあり難く思った。


異色作GREENDALE
 だけど、新聞やネット上のニール・ヤング関連のサイトを見ると、「今回のライブは新作の世界をステージで再現したものになっている」とのこと。そういえば新譜は買ってないなあ。ということで、出たばかりの新譜GREENDALEについて調べてみた。なんと、新作はアルバム1枚を使って、架空の街に住む、架空の家族の周りに起こる出来事を歌う、物語仕立てのコンセプト・アルバムとのこと。 確かにニールといえば「ディラン・フォローワー」だから、ストーリー仕立ての作品は少なくない。しかし、どちらかというと「直情型」のアーティストであって、綿密な計算や計画、コンセプトを持って作品を手がけるタイプのアーティストではない。そんなニールが「物語仕立てのコンセプト・アルバム」だなんて。キンクスじゃあるまいし似合わないだろう。とはいえ、いつの時代も、それまでの自分のイメージとか、 そういうことは一切気にせず、常に新しいことに挑戦してきた人でもあるわけだから、これもいつもの「新たな挑戦」のひとつと考えることが出来た。というわけで、ネット通販でGREENDALEを購入。最近は「輸入盤派」になった私だけど、「ストーリーが重要」なアルバムだから歌詞カードと対訳、解説は必要不可欠だと思い、国内盤を買った。

  英語が苦手なせいで、どうもコンセプト・アルバムってのは苦手だし、THE DIGではニール自身が「TRANS以来の問題作」と語ったという情報があったりしたので、聴く前は不安だったけど、いざ聴いてみれば「いつものニール・ヤング」だった。確かに歌によってストーリーが展開するわけで、作品も当然ストーリー・テラー的な、淡々としたものが多い。ただし、彼のアコースティック系の曲ってのは、基本的に淡々とした、 メロディに抑揚のないナンバーが多い。考えてみれば、いつもの作風なわけ。つまり、普段の彼がアコースティックでやるようなタイプの曲を、クレイジー・ホースと一緒に、バンド編成で演奏してみた作品。そういう印象。だから、コンセプト云々を抜きに聴けば全く違和感はなかった。

  とはいえ「このストーリーをステージで再現する」ということは、寸劇や語りを織り込んだライブになるということか。個人的には有名曲がいっぱいの、LIVE RUSTのようなライブが見たいんだけど。そんなわけで、少なからず不安もあった。おそらく彼が「しょっちゅう日本に来ているアーティスト」だったら、「今回は見送り、次回の来日に期待」だろうけど、めったに来ない、二度と見られないかもしれない人だから、そんなことくらいでは断念する気にはならなかった。


突然の雨とビーチボーイズ・カラオケ
2003年11月、ずっと夜型の生活をしていたこともあり、「時差ボケ」気味の毎日。そんな11月12日昼の2時過ぎ、私は家を出て会場の福岡へと向かった。夕方まで福岡の中心地・天神で過ごしたあと、夕方6時に会場の福岡サンパレスへ。この数日、天気が悪くて雨が降ったりやんだりしてたんだけど、午後からは回復気味。 ところが、会場に着いてしばらくした頃、つまり開場時間直前になって、唐突に本格的な雨になった。実はサンパレスの隣は、大相撲九州場所が行われている福岡国際センター。私たちサンパレスに向かう一団と、相撲を見終わって帰る一団が入れ違いになるような、そんな人の「流れ」が出来上がっていた。とはいえ、生憎の雨。会場前に人だかりができていたものの、 傘を持たずに濡れている人もいる、傘を持ったまま突っ立って待ってる人もいる。しかし私は、世の中の誰よりも「雨の中を歩く、雨の中で突っ立っている」ことが苦痛な性格。まして「濡れる」なんて、涙が出そうになるくらい嫌。とりあえず開場時間の6時半まで、隣のサンパレス・ホテルのロビーに逃げ込む。しかしここにも、今日のライブに来た人で溢れている。ベテラン・アーティストのライブらしく、 年齢層は幅広いものの、平均すれば20代後半〜40代前半が主流。いわゆる「ネクタイ族」は少なく、ラフな格好の人が多いのはディランのライブの時に近い。黒のジャケットを着た私は、明らかに浮いていた。女性の割合はディランの時よりは多いけど、やっぱり多くはない。それと、私より上の年代の人には、「ごく普通の人」よりも、「わけあり」っぽい人が多かったような気もする(笑)。 まあ、私も周りの人から見れば「わけありっぽい人」なんだろうけどね。

  6時20分を過ぎたので「よし、そろそろ」とばかりに折り畳み傘をさして外へ出て、会場前の列に加わる。「雨ですので、とりあえず入り口を開けます」との主催者の声。開場時間前だけど、建物の中に入る。そしてこういうイベントには珍しく、時間通りに開場。すぐにグッズ売り場へ。当然私が買うのはパンフのみ。さっさとパンフを買って、自分の席へ行く。目の前にPAの山。 隅の方とはいえ、前から3列目。ステージ全体がよく見える。よしよし。自分の席から客席全体を見回してみる。うーん、意外と小さい会場だなあ。後で知ったことだけど、サンパレスって2000人ちょっとしか入らないらしく、今回のツアー(米欧豪を含む)の全会場中、最小なんだとか。入りは八部くらい、福岡にしては悪くないか。開演前のBGMは、なぜかビーチボーイズ・カラオケ。In My Room、Sloop Jhon B.、Would't It Be Nice他、次々に登場するビーチボーイズ・ナンバーのカラオケ。 心の中でそれに合わせて歌いつつ、パンフを読んで過ごした。周りの会話にも聞き入る。「フジ・ロックの時は・・・」云々という声。なぜか標準語。きっと「全公演見る」とかの熱心な追っかけなんだろうな。「20年以上ぶりだよ!」という声も。そういえば福岡公演は初来日(1976年)以来だよな。その時以来、ずっと待ってた人もいたんだな。日本語の堪能な外国人の声も聞こえた。

  例によって開演の7時を過ぎてもはじまらない。7時15分頃、「早く出てこい」という意味なんだろうけど、なぜかBGMのCalifornia Girlsのカラオケに合わせて客席から手拍子が起こる。この曲が終わって遂に登場か、と思いきや、続けてDarlin'のカラオケが。その曲が終わる頃、セットにかかっていた幕が落ち、向かって左側に刑務所の鉄格子、右側にアメリカの一般家庭のリビング・ルーム、そして中央にスクリーンと舞台、これらセットがあらわになり、 同時に右側のセットに「劇」の登場人物が。そして遂に登場、ニール・ヤングとクレイジー・ホース。ニールは白のTシャツ(GREENDALEのロゴ入り)にジーンズ、帽子を目深に被っているため、顔ははっきりとは分からない。しかし白髪&長髪(実は「白髪」ではないんだけど、ライティングの関係か、私の肉眼にはそう見えた)。遠目には、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の「ドク」に見えてしまった(笑)。とはいえ、確かにあの人。ようやく登場したのである。

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