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| このシリーズは、1990年前後にアメリカのライノ・レーベルから発売された全9枚からなるシリーズである。ライノ・レーベルは、レコード会社やレーベルの壁を越えたベスト盤やオムニバス盤を多く発売していることで有名な、ロック・ファン、音楽ファンにはお馴染みの良心的なレーベル。
ということで、このシリーズもレコード会社を越えた選曲がなされており、「ブリティッシュ・ビートもののオムニバスの決定版」といっても過言ではない充実した内容である。確かに、ビートルズ(なぜかトニー・シェリダン・セッションものは収録されているが)、ストーンズ、ザ・フー、初期アニマルズ、DC5、ハーマンズ・ハーミッツなどが含まれていないという不満もあるし、
「定番」が多く、この手のオムニバスにありがちな「発掘もの」の音源も少ないけれど、その辺の不満を補ってあまりあるものではないだろうか。私は91年に上京した時、Vol.5とVol.7を購入。その後、約3年かけてすべてを集めた。ただ、私が購入した当初は国内盤は出ていなかったから、私の手元にあるのはすべて輸入盤。
全て揃えた後に日本語ライナーのついた国内盤がMSIから発売されたのは、個人的にとても悔しいところだ(笑)。 で、今回敢えてこのコーナーの趣旨を変えてまでこのオムニバス盤をご紹介するのは、いつものように「一組のアーティストを取り上げてご紹介」という形では紹介しきれないアーティストや楽曲を取り上げて語ってみたい、というのが最大の理由である。 この時代は、いわゆる「シングル・ヒットの時代」だったわけだから、シングル数枚で消えたアーティスト、私個人が「アルバムを買ってまで聴く気はないけど、1曲だけなら」と思えるようなアーティストも実に多い。だから、そうしたアーティストを語ろうとするなら、このような編集盤をご紹介するのがベストなやり方だろう。 ということで、今回はこのシリーズの全10枚の収録曲をご紹介していくが、敢えて普段はご紹介できないようなアーティストを中心に触れてゆきたいと思う。 |
Vol.1
購入時期 1993年頃
Vol.1は63年から65年頃までのブリティッシュ・ビート全盛期の、しかも超有名どころのアーティストの曲のオン・パレードといった感じ。キンクスのYou Really Got Me、ビートルズの「幻のデビュー曲」であるジェリー&ザ・ペイスメイカーズのHow Do You Do It、ヤードバーズ初のヒット曲でクラプトンが参加した最後の曲For Your Love、「カバーの名人バンド」サーチャーズによるジャッキー・デ・シャノン・ナンバーNeedles And Pins、 リヴァプール出身のストレートなR&Rバンド、スウィンギング・ブルージーンズによるHippy Hippy Shake、クールで小粋なポップ・バンドとして再評価されているゾンビーズShe's Not There・・・。これらは今後も取り上げる機会があるものと思われるので、敢えて触れない。また、ピーター&ゴードンのNobody I Know、World Without Love、ビリー・J・クレイマーwithダコタスのBad To Me、フォアモストのHello Little Girl、トミー・クイックリーのTip Of My Tongueと Lennon-McCartney作品も多いが、ピーター&ゴードンの2曲は、ビートルズ自身のテイクがあれば聴いてみたいと思えるほどの名曲だけど、あとは凡作だし、演奏しているアーティストも特に魅力を感じるものでもない。 で、妙なキャラとダンスが売り物だったコミカルなバンド、フレディ&ザ・ドリーマーズのI'm Telling You Now、女性ドラマーが在籍したことで人気を博した、奇才ジョー・ミーク・プロデュースのハニーカムズHave I The Rightは、「能天気なポップ系バンド」という評価を下されているバンドの楽曲ではあるけど、私は結構好き。いわゆる典型的な「ブリティッシュ・ポップ」だし、「アルバムを買ってまで聴きたい」とまでは思わないけど、文句なしの名曲だ。「この1曲だけなら」といったところか。「イギリスのビーチ・ボーイズ」と称されたファルセット・ボーカルを生かしたアイヴィー・リーグのFunny How Love Can Be、 トーケンズをカバーしたロッキン・ベリーズのHe's In Town、本国よりアメリカで大変な人気を誇ったフォーク・デュオ、チャド&ジェレミーのYesterday's Goneも注目。全然「ロック」的じゃないかもしれないけど、純粋な「コーラス・グループ」として聴ける「ブリティッシュ・ソフト・ロック」とも呼びたい名演。ただ、個人的にビックリしたのはHullaballoosという、全く知らないバンドによるバディ・ホリーのカバーI'm Gonna Love Too You。本当に、バンド名を片仮名で記せない有り様で私は全然知らないけど、 これが悪くない。このバンドのデータが欲しいところだ。 *アルバム好感度 80
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Vol.2
購入時期 1994年頃
ということで、このVol.2最大の注目はルーレッツのBad Time。このバンドは、ギターとボーカルに後にアージェントに在籍、ソング・ライターとしても活躍するラス・バラード、ドラムに後にアージェント、 現キンクスのボブ・ヘンリットが在籍した「隠れた名バンド」である。音は「ポップ系」なんだけど、ちょっと渋い印象を受けるサウンドと、ポップな曲に不似合いな重いリズムが個性的で、やはりただ者じゃない感じがする。知名度も低く、CDもほとんど出てないので、こうした形で聴けるのが嬉しいところだ。また、Lennon-McCartney作品をレコーディングしたことで知られる女性シンガー、シラ・ブラックのYou're My Worldも入っているけど、 どうせならLennon-McCartney作品を選んで欲しかった。 *アルバム好感度 80
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Vol.3
購入時期 1993年頃
Vol.3もキンクス、ヤードバーズ、サーチャーズ、ホリーズなどの有名曲が多いけど、Vol.2までにはない66年以降の作品やちょっと渋目のアーティストも登場している。まず、ビリー・J・クレイマーwithダコタスのFrom The Windowは例によってLennon-McCartneyの「捨て曲」。ピーター&ゴードンのTurn Love Waysはバディ・ホリー、I Go To Piecesはデル・シャノンのカバーと珍しくLennon-McCartney作品じゃないけど、 後者の哀愁の漂うメロディとハーモニーが素晴らしく、彼らの全レパートリーの中でもトップ・クラス仕上がり。また、ゾンビーズの2曲のうち、I Remember When I Loved Herは、曲自体の知名度は低いけど、とても物静かでクールな演奏ぶりが注目。さらに、後にジミー・ペイジが真似たギターの「弓弾き」の元祖、エディ・フィリップスのいたモッズ・バンド、クリエイションのMaking Time、ジミヘンの「ギター燃やし」、「大仁田厚のテーマ」、映画「メジャー・リーグ」ですっかり有名になったけど、実はこれがオリジナルのトロッグスWild Thing、ジョージ・マーティンがプロデュース、ポール・ウェラーのフェイバリット・バンドとして後に有名になったモッズ・バンド、アクションのI'll Keep You Holding Onといった、66年以降に登場したアーティストも収録されているが、 これらもいくらでも触れる機会があるものと思われ・・・。 注目したいのはサウンズ・インコンポレーテッドのIn The Hall Of The Mountain King。ビートルズのGot To Get You Into My Life、Good Morning Good Morningでブラス・セクションを担当したり、後にジェフ・ベック・グループに参加することになるトニー・ニューマンがいたことで知られる個性的なブラス・バンドで、R&Bとも、ジャズとも違う、個性的なブラス・サウンドを作り出していたバンドだった。何曲も続けて聴くのは辛いかもしれないけど、 いかにも「60年代のイギリスだなあ」と思える、その雰囲気を楽しみたいところだ。また、Vol.1から3枚連続で収録されている「イギリスのビーチ・ボーイズ」ことアイヴィー・リーグだが、このグループ、ポップな曲をやってはいるけど、突き抜けるような明るさがなく、どこか湿った印象を受けるメロディが印象的で、「正統ブリティッシュ・ポップ」といった感じ。 前身がジミー・ペイジも在籍したカーター・ルイス&サザナーズであり、後にフラワーポット・メンに発展したという意外な実力派でもある。もっと再評価されてもよいと思う。 *アルバム好感度 70
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Vol.4
購入時期 1994年頃
まずは有名アーティストの曲ではあるけど、キンクスのA Well Respected Manが個人的には嬉しい。この曲はアメリカのみで発売されたシングル曲なので、私の持ってるキンクスのCDには収録されておらず、この曲の聴ける私の持っている唯一のCDがこれなわけだ。また、比較的有名だけど、ジェリー&ザ・ペイスメイカーズのFerry Across The Merseyは、私の考える「最もリヴァプールを連想させる曲」であり、 「リヴァプールに行く機会があれば、絶対に現地で聴きたい曲」だったりする。また、このVol.4でスペンサー・デイヴィス・グループが初登場。ピーター&ゴードンのWomanは、ポール・マッカートニーが変名を使って提供した曲である。 で、以下は注目曲だが、まずはソーツのAll Night Stand。珍しくキンクスのレイ・デイヴィスが他人に提供した曲である。まあ、曲自体はたいしたことないけど・・・。一方、ソローズのTake A Heartも、同様に1曲で終わったバンドの曲だけど、低音ボーカルが魅力的なR&B寄りのサウンドで、こちらはなかなかよい。こういう曲が聴けるのは、こうした編集盤ならではだろう。Vol.4にも収録されていたシーカーズによるGeorgy Girlは、最近でもCMで使用された知名度の高い曲。オーストラリア出身で、ジュディス・ダーハムという女性ボーカリストをフューチャーした 清楚でアコースティックなポップ・ナンバーをヒットさせたグループで、確かに全然ロック的じゃないけど、純粋にいい曲だし、私は好きだ。しかし、このVol.4で最大の注目はイアン・ウィッカムのYou Turn Me Onだろう。ギターやキーボードのみによるバンド編成のロック的な演奏ながら、ボードヴィルやジャズっぽい、ちょっとクールな雰囲気の漂うバックに、全編ファルセット、しかも単純な歌詞、単調なメロディを歌うという、何とも風変わりな曲である。この人、70年代以降、ボンゾズ周辺でも活動していたそうで、 ただ者じゃない感じがする。私にとってはこのCDではじめて知ったアーティストだったこともあり、「こんな人もいるんだ」と本当に驚いたものだ。 *アルバム好感度 80
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Vol.5
購入時期 1991年
Vol.5はなかなか聴きどころが多い。ゼム、プリティ・シングス、ムーディ・ブルース、さらにビートルズのトニー・シェリダン・セッションといったところは説明の必要はないだろう。ただ、私がはじめてプリティ・シングスを聴いたのはこのCDでだったので、ちょっと感慨深いものがある。また、ブリティッシュ・ビート時代には、同時に多くの女性シンガーが活躍していたわけだが、 ここでは当時既にベテランだった、貫禄あるぺトゥーラ・クラークのDowntown、女性シンガーの中でも人気、実力ともNo.1だったダスティ・スプリングフィールドによる、ポップで明るいI Only Want To Be With You(個人的には彼女の曲で一番好き)、わずか15歳ながら、ソウルフルな歌声を聞かせるルルによるアイズレー・ブラザーズのカバー、Shoutといったところが収録されている。さらに異色なのは、 トム・ジョーンズのIt's Not Unusualまでも収録。このシリーズの幅広い選曲には驚かされてしまう。 で、他は全編注目曲。元ジョニー・キッド&パイレーツのギタリスト、アラン・キャディ、後にソロ・シンガーとして活躍するベーシスト、ハインツ・バードなどが在籍したインスト・バンド、トーネイドーズによるTelsterは、ビートルズ登場以前の62年に全米でNo.1となった記念すべき曲。「宇宙」を連想させる曲ではあるけど、今聴くと実にチープ。だけど、プロデューサーがジョー・ミークということもあり、独特なエコー感が結構心地よい。 ビッグ・スリーのSome Other Guyは、実にチープな出来だが、リヴァプール最古のビート・バンドであり、イギリス初のトリオ・バンドだったという点では注目に値する。同じくリヴァプール出身のバンド、モージョーズのEverything's Alrightは隠れた名曲、隠れた名バンドだろう。R&B風のダークな前半部、若々しさ溢れる明るめのサビへと転調する、リヴァプールのバンドには珍しい曲で、本当にカッコイイ。後にデヴィッド・ボウイもカバーしている。そしてもうひとつ、 リヴァプール出身といえばマージービーツのI Think Of You。シングル曲では清潔に、アルバムではストレートなR&Rを演奏していた好バンドであり、1曲だけではもったいないという気もするので、私は今後、ベスト盤を手に入れてみたいと思っているところだ。ポップ系のバンドながら、ドラムとベースの絡む渋目のイントロと、ちょっとダークなコーラスが光るウェイン・フォンタナ&マインドベンダーズのGame Of Loveも個性的な曲。 ポップ系なのに、渋くてダークなムードの漂うこのバンド、後に10ccを結成するエリック・スチュアートが在籍していたことでも知られている。そして、モッズ・リヴァイバル・ブーム以降、再評価されているのがジョージィ・フェイムで、ここでは彼の代名詞ともいえるYeh, Yehを収録。R&Bはもちろん、ジャズにすら近いクールさは、この人にしか出せない味。そして、「イギリスのボブ・ディラン」といわれたドノヴァンのSunshine Supermanも収録。私は初期の弾き語り調の曲はあまり好きではないが、ここで聴けるような60年代半ば以降の、カラフルなポップ・ナンバーはかなり好き。最後に、このVol.5で初登場となるフォーチュンズ、バチェラーズは、ともにハーモニーを生かしたバラードを得意としたグループ。特にフォーチュンズは「自分たちはロック・バンドじゃない」と主張して、 バラードばかり歌っていたということで、その開き直りが逆に潔く感じられる。 *アルバム好感度 90
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Vol.6
購入時期 1994年頃
このシリーズも後半に向かうにつれ、66,67年頃の曲や、渋目のアーティストの登場が目につくようになる。有名どころではゼム、ホリーズ、マンフレッド・マンの他、スモール・フェイセズも登場している。また、Vol.5に続いてぺトゥーラ・クラーク、ダスティ・スプリングフィールド、ルルといった女性シンガーの曲も収録。 また、特に日本ではビートルズと競うほどのアイドル人気を誇ったウォーカー・ブラザーズMake It Easy On Yourselfも登場しているが、大袈裟なストリングスとスコット・ウォーカーのイージー・リスニング系のシンガーを思わせる低音ボーカルは、個人的には苦手な世界。一部で再評価されているらしいが、私は駄目。 さらに、62年ビートルズを抑えてデッカ・オーディションに合格したことで知られるブライアン・プール&トレメロウズからブライアン・プールが独立、トレメロウズ名義で発表したHere Comes My Babyもちょっと・・・。さらに、フォーク・グループ、シルキーによるビートルズ・カバー、You've Got To Hide Your Love Awayは、ジョンとポールのプロデュースである。出来の方は・・・(笑) で、以下注目曲について触れると・・・。まずユニット4+2によるConcrete And Clayは、まさにこの時代を代表する一発ヒット・バンドのナンバー。アコースティック・ギターとパーカッションの絡むイントロが印象的な曲である。次に、ファウンデイションズは、60年代半ばから末にかけて活躍した、イギリス人、バルバドス人、ジャマイカ人、ドミニカ人など、 複数の国籍のメンバーからなるホーンをフューチャーしたバンド。Baby, Now That I've Found Youは、同バンド最大のヒット曲で、ソウルフルなボーカルとホーンの絡みなど、70年代以降のタワー・オブ・パワーなどを先取りしたような仕上がり。普段は見過ごされがちな「シングル・ヒット・アーティスト」の中に、こうしたアーティストが埋もれているんだから面白い。 アイズのWhen The Night Fallsも、一発屋バンドによるシンプルなR&B系のビート・ロックだけど、間奏のギターの歪み具合などは、「サイケ時代」に向かっていく「時代の変化」を感じさせる。 で、個人的に注目なのはVol.5に続いて収録されているウェイン・フォンタナ&マインドベンダーズ。ここでは、It's Just A Little Bit Too Me、さらにウェイン・フォンタナがソロとして独立後、マインドベンダーズ名義で発表したA Groovy Kind Of Loveの2曲を収録。特に後者は80年代にフィル・コリンズがカバーして大ヒットさせたことでも知られる隠れた名曲。 時々「エリック・スチュアートが在籍した」ことで語られるだけのバンドだけど、もっと注目したいバンドでもある。 *アルバム好感度 80
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Vol.7
購入時期 1991年
なかなか聴きどころの多い内容。スモール・フェイセズAll Or Nothing、ドノヴァンMellow Yellow、ダスティ・スプリングフィールドYou Don't Have To Say You Love Me、ぺトゥーラ・クラークMy Loveなど、超有名な大ヒット曲の他、ビージーズも初登場している。また、マインドベンダーズから独立したウェイン・フォンタナのPamela, Pamela、ソング・ライター、マネージャー、そしてタレントと多彩な活動をしていたジョナサン・キングのEveryone's Gone To The Moonという珍しい曲も収録されているが、 どちらもストリングスをバックにしたイージー・リスニング調の曲、ウォーカー・ブラザーズのThe Sun Ain't Gonna Shineも例によって大袈裟に感じられる曲で、私にとっては面白いと思えるものではない。 で、注目曲は多いが、まずイージー・ビーツはオーストラリア出身のポップ・バンドで、Friday On My Mindは彼ら最大のヒット曲。リズム・ギタリストのラリー・ヤングは、 70年代に登場するAC/DCのアンガス&マルコム・ヤング兄弟の実兄でもあり、AC/DCのマネージャーでもあった。続くロス・ブラヴォスはスペイン出身のバンドで、Black Is Blackは彼ら唯一のヒット曲。確かに一発屋だけど、ソウルフルなボーカルとラテンっぽい演奏がなかなか魅力的なよい曲だと思う。そして、マーク・ボランが在籍したことでも知られる奇行バンドがジョンズ・チルドレンで、ここではSmashed! Blocked!を収録。サイケなオルガンに語りが重なるイントロ、ポップなコーラス、 イージー・リスニング調のピアノをバックにアンディ・エリスンが怪しげに歌うバラード風のパートが重なる「変態サイケ・ポップ」。本当に変な曲だ。「サイケ調」といえばスモークのMy Friend Jackもまさにそうした曲。ワウハウのかかった妙なギターにポップなメロディが絡むが、歌詞はドラッグ体験を歌ったものであり、一発屋だけど印象的な1曲。そして、このシリーズには登場しない有名バンドのひとつがアニマルズだが、エリック・バードン&アニマルズがここで初登場。しかし、このバンドは「オリジナル・アニマルズ」とは別のバンドと考えた方がよいだろう。 事実、この後Vol.8,9にも同バンドの曲は収録されているが、メンバーの入れ替わりが激しく、やっている音楽もバラバラ。つまり、このバンドは「エリック・バードンとそのバック・バンド」といった方がよいのかもしれない。全盛期のアニマルズの曲が収録されていないのは本当に残念。次に、Vol.6ではこき下ろしてしまったトレメロウズだが、ここに収録されたSilence Is Goldenは名曲。「シェリー」で有名なアメリカのフォー・シーズンズのカバーだが、もの憂げなメロディ、ベーシスト、チップ・ホークスの高音のファルセット・ボーカルが美しい。 なお、チップ・ホークスは、80年代末にイギリスで人気のあったアイドル歌手チェズニー・ホークスの父親ということで一時期話題になっていたが、そのチェズニー・ホークス自体が今では「あの人は今」状態に・・・(笑)。そしてVol.5に登場したマージービーツの中心メンバー2人によって結成されたデュオ・グループがマージーズで、デヴィッド・ボウイのカバー、ビートルズのIt's All Too Muchで一部歌詞が引用されたことで知られるSorrowは彼ら唯一のヒット曲。彼らのセカンド・シングルはザ・フーのSo Sad About Usだったがヒットに至らなかった。 さらに珍品はスタジオ・ミュージシャンによって結成されたニュー・ボードヴィル・バンドWinchester Cathedral。私の世代には「ポンキッキ」で使われていたのでお馴染みだし、「そんなバンド、知らない」という人でも聴けば「ああ、この曲か!」と思い出すはず。私もはじめて聴いて「ああ、この曲か」と思ったものだ。とにかくボードヴィルに徹したサウンドは、ビートルズのWhen I'm Sixty-Four、キンクスなどに大きな影響を与えたといわれている。そしてWild Uncertaintyって何者? *アルバム好感度 80
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Vol.8
購入時期 1992年
67,68年頃のサイケ時代のアーティスト、曲が多くなり、「ブリティッシュ・インヴェイジョン」というこのシリーズのテーマからのズレが生じはじめているVol.8だけど、逆に「アルバム中心の時代」へと移行していく中で登場したヒット・チャートものの曲が収録されており、それなりに楽しめる内容。 プロコル・ハルム、クリームなど新時代のアーティストが登場、ジョージィ・フェイムもソロ名義、ムーディ・ブルースもクラシック路線にイメージ・チェンジ。「時代の変化」を予感させるような内容ともいえる。しかし、クリームのSunshine Of Your Loveはギター・ソロをカットしたシングル・バージョンである。 注目はサイケ・ポップ系のアーティスト。まず前作に続いて収録されているジョンズ・チルドレンだが、ここではマーク・ボランの作品Desdemonaを収録。歌っているのはボーカリストのアンディ・エリスンだけど、ボランによるビブラート・ヴォイスのバック・ボーカルに引き付けられるところ。そして、トゥモロウは ソロ・シンガーとしても実績のあったキース・ウェスト、「サイケの申し子」といわれた変人ドラマー、トゥインク、後にイエスで活躍するスティーヴ・ハウなど豪華メンバーによって結成されたサイケ・ポップ・バンドであり、きらびやかで、カラフルで「機械仕掛けの玩具」を思わせるようなサウンドが売りだった。 テープ・ループ、逆回転ギターをフューチャーしたMy White Bicycleは、彼ら最大のヒット曲であり、私は「ブリティッシュ・サイケを象徴する1曲」だと思っている。あと、比較的有名だけど、ELOの前身で、奇才・ロイ・ウッドの才能が最初に開花したバンドとして知られるムーヴのFlowers In The Rainも、ポップかつチープな曲で、この時代を象徴する曲といえそう。 一方でアメリカの「シスコ系」のサイケに影響を受けたエリック・バードン&アニマルズのSan Franciscan Nightを聴くと、同じ「サイケ」でも、イギリス的なものと、アメリカ的なものとでは全然スタイルが異なるというか、ドラッグ体験を音楽で表現するアプローチの違いを思い知らされる。で、珍品はステイタス・クォの Picture Of Matchstick Man。クォといえば、70年代以降「ハード・ブギ・バンド」としてブレイクするわけだが、ここではまだサイケポップをやっている。ワウハウのかかったギターにサイケなオルガン、テープ・ループなど、典型的なブリティッシュ・サイケだけど、リズムに「重み」があり、後の変化を予感させられる部分は確かにある。 サイモン・デュプリー&ビッグ・サウンドはR&Bバンドながら敢えてサイケ・ポップに挑戦、怪しげでバラード調のKiteをヒットさせたバンド。しかし、そのことが逆に自らのイメージと「やりたい音楽」とのギャップを生み、シーンから消えてしまった。おそらくこの時代、彼らと同じような運命を辿ったバンドが多く存在したのだろう。 なお、モールズのWe Are The Molesは、そのサイモン・デュプリー&ビッグ・サウンズの変名シングル。しかし、当初は正体を明かさず、ジョージ・マーティンのプロデュースで「覆面バンド」として登場したため、「ビートルズではないか?」という噂も広まったらしい。 *アルバム好感度 80
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Vol.9
購入時期 1992年
Vol.9は68,69年の曲も多く収録、前作から登場したクリーム(White Roomはまたもショート・バージョン)やビージーズはもちろん、ディープ・パープル、ロッド・スチュワート&フェイセズ、元ゾンビーズのロッド・アージェントや元ルーレッツのラス・バラードが結成したアージェントといった、70年代に活躍することになるアーティストまで登場と、最初のコンセプトはどこへやら・・・(笑)。でも、おかげで面白い曲が多くて楽しめる。まずはケバケバしい衣装やメイク、 演出じみたパフォーマンスで売ったアーサー・ブラウンのFireではじまる。しかし、音だけ聴くと実にチープでお間抜けなポップ。「ポップ」といえば、ビートルズのOb-La-Di, Ob-La-Daをカバーしてヒットさせたマーマレードも、いかにもイギリス人らしいポップ・バンドで、ここではReflections Of My Lifeを収録している。とにかく、珍しいポップ系のアーティストの曲が目につき、他にもザ・フーのピート・タウンゼンドのバック・アップで結成され、 後にウイングスに加入するジミー・マッカロウが在籍したことでも知られるサンダークラップ・ニューマンによるトラッド調のSomething In The Air、民族音楽風かつきらびやかな作品を発表し続けたデイヴ・ディ、ドージー、ビーキー、ミック&ティッチ(日本ではデイヴ・ディ・グループと呼ばれていた)によるエスニック調のZabadak、ピーター・フランプトンが在籍していたアイドル・バンド、ザ・ハードによる能天気なアイドル・ポップI Don't Want Our Love To Die、 90年代にグランジのニルヴァーナとバンド名を巡って訴訟にまで発展したクラシック、民族音楽まで採り入れたデュオ・グループ、ニルヴァーナによるストリングスをフューチャーしたRainbow Chaserなど、こうしたオムニバスならではのアーティスト、楽曲が続いている。 また、ウッドストックでの熱唱で有名なジョー・コッカーのビートルズ・カバーWith A Little From My Friendsだが、ここに収録されたのは意外と聴く機会の少ないスタジオ・バージョン。ウッドストックのバージョンと比べると、かなりあっさりしたアレンジだ。このシリーズの最後を飾るのがホリーズの He Ain't Heavy, He's My Brother。「ブリティッシュ・インヴェイジョン」初期から、徹底したポップ路線を打ち出してきたバンドだが、この曲は初期の彼らにはなかった荘厳な空気も漂っており、ポップ路線を追求した末に到達した「頂点」といってよいかも。グラハム・ナッシュ脱退後、失速してしまった彼らだけど、この曲は大ヒット。ピアノは当時無名のエルトン・ジョンが弾いていることも付け加えておきたい。 *アルバム好感度 70
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*:1999年11月1日UP
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