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私の場合、彼よりも先にストレイ・キャッツの方を聴いた。その分、同じパンク出身で、パンクのノリをロカビリーに融合させたアーティストといっても、ストレイ・キャッツと比較すると彼は若さやパンク的な荒っぽさに欠けると感じられたし、むしろピュアなロカビリーに近い「渋い、スタイリッシュなシンガー」という印象を持った。 事実このアルバムもオリジナル曲は6.The Catmanと11.I Just Met A Memoryの2曲だけ。他はすべてカバーで、ジョニー・バーネットの1.Rock Billy Boggie、3.I Just Found Out、4.All By Myself、 エディ・コクランの9.Am I Blue、エルヴィスの12.Blue Christmasと、選曲もある意味ベタ。さらには「ロカビリー」というより、オールディーズ・バラードのスタンダード、コンウェイ・トウィッティの7.It's Only Make Believeをも取り上げたりするあたりは、 よく言えば「渋い」、悪く言えば「オッサン臭い」ととれなくもない。全編エルヴィスを意識しまくったような歌い回しだし、低音の声もまた、モッサリとした印象を強くしてしまう。 とはいえAOR、ディスコなど、耳当たりのよい音楽が主流となっていた当時のアメリカのミュージック・シーンにおいて、「過去の音楽」とされたロカビリーに敢えてスポットを当てて蘇らせたという点では、やはり彼の功績は称えられるべきものだろう。私はTHE BEST OF BRITISH ROCKABILLYというオムニバス(「手放してしまったアルバムたち(5)」参照)や、 シェイキン・スティーヴンスのアルバム(「手放してしまったアルバムたち(2)」参照)など、70年代半ばのネオロカ以前のロカビリーも結構聴いたが、はっきりいって「過去の音楽をコピーしている」といったノスタルジーのレベルで終わってる人や、「ロカビリーを歌うポップ・シンガー」みたいな軟弱な人が多く、50年代のロカビリーが持っていたはずの攻撃的な面がまるでなく、 新たなものを生み出そうという意欲の感じられる人も皆無に等しかった。それと比較すればパンクを通過した彼のこと、一見渋くて、ピュアなフォローワーのようでいて、ちゃんとロックン・ロール・シンガーしてるし、スピリットも感じられるし、新たなものを生み出そう、新たなシーンを俺が生み出してやろうという意欲は感じることが出来る。それはジャンルを超えてロックを知り尽くしたギター職人、 クリス・スペディングと組んだことも大きいかもしれない。もちろん、ゴードン本人の資質もあるだろうけど、むしろこれは2人で作り出した、新時代のロカビリーといっても過言ではない。ストレイ・キャッツにはデイヴ・エドモンズが、ロバート・ゴードンにはクリス・スペディングが、ともにロックを知り尽くした職人気質のアーティストが身近にいたというのは見逃せない。 *アルバム好感度 70
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たった3枚のアルバム、2年あまりの活動からの選曲だが、「ロカビリー=同じような曲ばかり」という一般的イメージを覆すほど多種多様な曲がある。得意はやはりエディ・コクランやジーン・ヴィンセント風の作品(再結成後の彼らにはJean & Eddieという曲もある)。もともとこの2人は、50年代のロックン・ローラーの中でもアウトローなキャラで、パンク的なアーティストだが、故に「パンクとの融合」に不自然さを感じないんだろう。1.Rock This Town、9.Runaway Boyなどの代表曲を聴くとよく分かるけど、 どう聴いても「ロカビリー」にしか聞こえない、なのに全然「昔の曲」「古い」という印象を受けることがない。この辺が彼らの斬新さだろう。一方で、意外とピュアなロカビリーに拘る人がやらない、チャック・ベリー・スタイルの3.Rev It Up And Go、ブルース色も感じられる11.You Don't Believe Me(エルモア・ジェームス風のイントロとスライドあり)、ブラス・セクションを従えたちょっと泥臭さもある20.Lucky Charm、 オールディーズ・バラード風の9.Lonely Summer Night、18.I Won't Stand In Your Wayなど、ロカビリーと同時代の音楽、ロカビリーのルーツになった音楽への目配りも忘れない。同時代のネオロカ・バンドや彼らに影響を受けて登場したフォローワーたちが「ロカビリー」というスタイルに固執し過ぎるあまり、 保守的で単調な作品しか生み出せずにすぐに消えてしまったのとは全く対称的。こんなところからも彼らがいかに優れたバンドだったかが分かるというものだ。もちろん、プロデューサーとして彼らを支え続けた「ロックン・ロールを知り尽した男」デイヴ・エドモンズの功績も見逃せないところだ。そんな彼らの最高傑作は17.Sexy And 17か。ハーフ・スポークンではじまって一気に歌に入っていく構成といい、いかにも50年代っぽい歌詞の世界といい、ジーン&エディをたして2で割ったようなブライアンのボーカルといい、「早弾きになったコクラン」といった感じでグレッチを激しく掻き鳴らすブライアンのギターといい、何から何まで完璧だ。 というか、「嫌いな曲」が1曲もない。ベスト盤を聴いてこんな気持ちになるアーティストは、私の場合実は多くない。いや、本当にカッコよすぎる。 デビューからわずか2年あまりで解散した彼ら、その後1989年頃から1993年までは再結成してアルバムも発表していた。この時期の人気は欧米では低かったけど、逆にリアル・タイムであまり受けなかった日本で大ブレイク。90年前後に10年遅れでネオロカ・ブームが起こったのも記憶に新しい。だけど、この時期にもスタイルに拘らず、ナイル・ロジャースと組むなどして最も野心的な作品を発表していたのは、やはり彼らだった。現在ブライアンは ロカビリーとスウィングを合体させたビッグ・バンド編成のブライアン・セッツァー・オーケストラで活動中で、セールス的にはストレイ・キャッツ以上の成功を収めている。「昔の音楽のスタイルに新しい息吹を加えて蘇らせる」という彼のスタンスは今も変わりないようで嬉しい。反面、彼にはやはりロカビリーを歌って欲しい、ストレートなロックン・ローラーでいて欲しいという想いもある。いつかまたストレイ・キャッツを再始動して欲しい、そう願わずにはいられない。 *アルバム好感度 100
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当然注目はその2人。まずはエディ・コクランだが、1.C'mon Everybody(ハンブル・パイ、布袋寅泰)、5.Summertime Blues(ザ・フー、ブルー・チアー)、6.Twenty Flight Rock(ストーンズ、ポール・マッカートニー)など、多くのカバーを生んだ超有名曲が並ぶ。泥臭さもカントリー臭さもないこの時代にあっては独特なR&Rで、シャープで、クールで、スマートで、それでいて攻撃的なナンバーの連続。ブリティッシュ・ビート世代から ピストルズなどのパンク世代までと、実に広い世代に支持されたのも頷ける。特にこの泥臭さの薄いスマートさは、ブリティッシュ・ロックの特徴といってもよく、「本国よりもイギリスで人気があった」というのも納得。得てして「野暮ったい」印象を受けがちな50年代ロックン・ローラーの中でも、そのクールさ、スマートさは貴重だ。個人的には先に述べた3曲も好きだけど、 ハーフ・スポークン気味のボーカルがカッコイイ2.Somethi' Elseが一番好き。本国で人気の衰えた1959年、イギリス・ツアーでの移動中のタクシーの事故で他界してしまった悲劇のロックン・ローラーでもあるが、イギリスでは当時も絶大な人気を誇っていた。もしも彼が生きていたらブリティッシュ・インヴェイジョンの時代になっても、意外とイギリスでは彼らの兄貴分として人気を保ち続けることができたかもしれない。 もうひとりの注目がジーン・ヴィンセント。残念ながら本国では15.Be-Bop-A-Lula以外に際立ったヒットを生み出せなかったが、片足が不自由なのを逆手にとって義足を引きずりながら観客を殴るような仕草で挑発するパフォーマンス、クールでセクシャルなボーカルで絶大な人気を誇った。同時代のエルヴィスも「不良」だったが、今見ると明るく健康的なワル=「芸能」の範囲を超えないワルといった印象が拭えないが、 ヴィンセントの場合、殺気すら感じさせるほどのクールでダークなワル、といった感じ。あまり荒々しい歌い方をすることはなく、17.Blue Jean Bopのように、むしろクールに聞かせる。一方でスタンダード・ナンバー15.Over The Rainbowのように、「ワル」のイメージの裏に潜む、自らの繊細さを時々垣間見せるのもまた彼の魅力。彼も本国よりもイギリスで人気のあった人で、 コクランが亡くなった時、車に同乗して一緒にイギリスをツアーしていた。その後もデビュー以前のビートルズと交流を持つなど、やはりブリティッシュ勢との繋がりが強かった。70年代に他界してしまったが、そのパフォーマーとしての凄さや評価のわりに、ヒットが少なかったのが残念に思う。 最後にジーン&エディ以外にも簡単に触れておくと、リック・ネルソンは16歳でデビューしたR&R時代初の「ティーンエイジ・アイドル」で、R&R寄りのポップ・シンガーといったところ。ジェームス・バートンのギターも見事な10.Hello Mary Louが有名。一般にはポップ・シンガーとして過小評価されてるけど、私は好き。彼については別の機会にでも触れたいと思う。クリフ・リチャードはビートルズ以前のイギリスの最高のスター。 でもこの人もポップ・シンガーっぽい。個人的には「芸能人」っぽくてあんまり好きじゃない。ワンダ・ジャクソンは特に日本で人気のあった女性シンガーで、7.Let's Have A PartyはエルヴィスがPartyのタイトルで歌ったことでも知られる。異色はジョニー・オーティスで、R&Bシンガーの彼が「ロカビリー」のオムニバスに入ってるのが不可解。クラプトンのカバーでも知られるボ・ディドリー・ビート・ナンバー9.Willie And The Hand Jiveが収録されている。 *アルバム好感度 80
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*:2002年8月19日UP
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