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ここにご紹介するD.I.Y.(パンクの基本精神といわれるDo It Yourselfの略)シリーズは、アメリカのライノ・レコードが企画した、パンクのコンピレーションである。ライノといえば、レーベルを越えた選曲による、ファンにとっては嬉しいオムニバス、ベスト盤などをリリースしてきたことで知られるレーベル。 私もBrithish Invasionシリーズの他、多くのコンピレーション盤のお世話になってきたものだ。そして、ここでもやはり「レーベルを越えた」様々なアーティストをフォロー。「パンクのコンピレーション盤の決定版」ともいえそうな、素晴らしい内容である。とにかく、有名どころから、 一瞬にして消えてしまったためにCD化すら実現しないバンドまで、見事なまでにフォローされている。確かに、ニューヨーク編にトーキング・ヘッズが、ロンドン編にクラッシュが、と有名どころが権利の関係で漏れてはいるけど、ここまで完璧なコンピは、他には存在しないだろう。 なので、初心者、マニア、ともに楽しめることは間違いないと思う。 なお、同シリーズには、今回ご紹介するロンドン編、ニューヨーク編の他、パワー・ポップ編やニュー・ウェイヴ編(U.K. POP Vol.1はこちら)もあるので、パンクに興味のない方でも楽しめるのではないだろうか。それらはまた、別の機会にでも・・・。 |
「パンク」という言葉から最初に連想されるイメージ、「攻撃的でストレートなサウンド」「反社会的かつ、『未来はない』といったような絶望感を歌った歌詞」・・・。これらはまさに「ロンドン・パンク」を指す言葉といっても過言じゃないだろう。 ということで、同シリーズの第1集は、そのロンドン・パンク、しかもごく初期に当たる76,77年のナンバーを集めたものである。クラッシュが収められていないのは寂しいけど、ピストルズ、ジャム、ダムド、ストラングラーズなどの代表的なバンドが勢揃い、とても充実した内容である。 まず、ピストルズはAnarchy In The U.K.、God Save The Queenの2曲が収録されているけど、権利関係の問題のためか、デモ・バージョン。しかし、このデモ・バージョンが素晴らしい。粗削りで、暴力的で、むしろ公式テイク以上に彼ら本来の魅力がダイレクトに伝わってくる。 正直、私は公式テイクよりもこっちの方が好き。ジャム、ダムド、バズコックスといったところは、揃って代表曲が収録されている。しかし、これら大物の中では、やはりサイケっぽいキーボードをフューチャーしたストラングラーズのカラーは異色で、一歩間違うと単調に聞こえがちな初期ロンドン・パンクの中では異彩を放っていたのが分かる。 少し遅れて来た世代の中では、ビリー・アイドル率いるジェネレーションXによるザ・フーのMy Generationへの返答歌Your Generation、後に「ライブ・エイド」の仕掛人として脚光を浴びることになるボブ・ゲルドフ率いるブームタウン・ラッツのLooking After No.1、 後に「元祖マンチェ・バンド」として再評価されたバズコックスのOrgasm Addictあたりも注目。特にバズコックスは、個人的にはポップ・バンドとしてもとても高く評価している。オーストラリア出身のセインツによる(I'm )Strandedも、ハードなサウンドとは裏腹な、ポップなメロディが印象的。 「聴かず嫌い」のピストルズのところでも述べたが、後追い世代の私にとって、パンクとは「衝撃的な音楽」というよりも「ポップでシンプルなロック」という印象が強いんだけど、こうした楽曲を聴けば聴くほど、そういう想いを強くさせられる。また、どうしてもストレートなサウンドのバンドが多いから、 こうして聴くと「単調」という印象も否めないところだけど、そんな中に引きつったような女性ボーカルと、無感情なサックスをフューチャー、「女性版ロキシー・ミュージック」ともいわれたX−レイ・スペックスのOh Bondage Up Yours !、シンプルなワン・コードの楽曲ながら、無機質で冷たい雰囲気が、後のニュー・ウェイヴを思わせるワイヤーの 12XUといった、個性的な連中もいるあたりも目を引くところだ。一方で、パブ・ロック・シーンで活躍していたメンバーにより結成、「パブ・ロックとパンクの架け橋」的な存在として評価されているエディ&ザ・ホット・ロッズのTeenage Depression、70年代初頭からシンガー、ソングライターとして活動、 繊細でひねくれたメロディの楽曲を得意としたピーター・ベレット率いるオンリー・ワンズのLovers Of Todayといった、パンク・ムーブメント以前から活躍していたバンドの楽曲も収録されている。個人的には、エディ&ザ・ホット・ロッズの、60年代のブリティッシュ・ビート・バンドを思わせるサウンドに好感が持てる。 というわけで、ロンドン・パンクの、しかも初期のナンバー中心ということで、とにかく、シンプルでストレートな楽曲が多い。そのため、否定的に見れば「単調」といえなくもない。でも、「パンクって何?」と思っている方、これからパンクを聴こうと思っている方などには、同シリーズの中では最もお勧めできる内容といえる。 *アルバム好感度 90
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ロンドン・パンク編の第2集。パンク・ムーヴメント自体、あっという間に現れ、あっという間に消えたムーヴメントだった、ということもあり、この77,78年頃のテイク集を聴くと、 早くも「パンク・シーンの終焉」を思わせるような内容になっている。 とにかく、第1集と比較すると、様々なスタイルの楽曲が混在、「パンク」の中でもスタイルの細分化が進んでいく様子が分かる。全体的に「過激さ」は影を潜め、よりポップなメロディを強調したような楽曲が多い。 パーティ感覚の「明るくコミカルなバンド」といった雰囲気のレジロズのGood Sculptures、パブ・ロック寄りのポップ・バンド999のEmergency、Homicide、第1集にも登場、より湿り気のあるポップ色を強めたバズコックスのWhat Do I Get、 そのバズコックス出身のハワード・ディヴォートが結成、「ネオ・サイケ」の元祖的存在のマガジンによるShot By Both Sides、ロビン・ヒッチコックが在籍していたソフト・ボーイズによるAnglepoise Lampなどにそれが顕著。 また、その後息の長い活動をすることとなるスージー&ザ・バンシーズのHong Kong Gardenも、エスニックなサウンドで、元々のパンクのイメージとは大きく異なるものである。 サブウェイ・セクトのAmbitionも、ストレートなポップ・ロックだが、このバンドも後にスウィング・ジャズに接近するなど、大きく方向転換することとなる。 一方、第1集に続く収録となるワイアーのI Am The Flyのアバンギャルドでクールなサウンド、皮肉に満ちた歌詞や変拍子も導入したザ・フォールのBingo Masterは、後のニュー・ウェイヴの先駆けともいえる空気を漂わせている。 しかし、逆に徹底した「硬派路線」を打ち出しているバンドもいる。それがシャム69で、メッセージ色が強い歌詞、男臭いキャラクターといい、「クラッシュの後継者」といった感じ。そうした路線は、パンクをより過激にした「ハード・コア」にも繋がるものといえる。 つまり、先に述べたポップ路線、アバンギャルド路線を打ち出したバンドとは全く違った形でパンクを「進化」させたバンドといえるかも・・・。なお、北アイルランド出身のスティッフ・リトル・フィンガーズも「硬派路線」のバンドだが、サウンドは「ポップ寄り」といった印象を受ける。 しかし、ザ・フォールの変拍子は「ロックのプロフェッショナル化に対するアンチテーゼとして登場したパンク」という点で疑問を感じるし、シャム69のIf Kids Are Unitedにおける「もしもキッズがひとつになれたら」というメッセージも、どことなくパンクが否定したはずの 「ヒッピー幻想」を思わせるなど、パンク・ムーヴメントの矛盾点を露呈している、と思うが、考え過ぎなのか・・・。 といった感じで、第1集と比較すると、「ストレートなパンク」一辺倒じゃなく、様々なスタイルの楽曲が混在しているから、聴いていて楽しい、という点ではこっちの方が上。「パンクなんてワン・パターンで面白くない」と思ってる人にこそ聴いて欲しいと思う。 *アルバム好感度 80
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ロンドン・パンクと比較すると、知名度が低いニューヨーク・パンク。だけど、ピストルズのマネージャーで「ロンドン・パンクの仕掛人」だったマルコム・マクラレンは、元ニューヨーク・ドールズのマネージャーで、 彼が、そのドールズを意識してピストルズのイメージを作り上げたというのは有名。事実、ニューヨークには、ヴェルヴェット・アンダーグランドの時代から、「アンダー・グランド・シーン」というのがあり、それを引き継ぐような形で、 ドールズ→パンクという形で登場したのだから、ロンドン・パンクと違って、突然現れたムーヴメント、という訳ではなかったのである。そのためだろうか、このニューヨーク・パンク・シーン、ロンドン勢と比較すると初期の頃から様々なスタイルのアーティストがいて、 とてもひとつのシーンとしては語れないほどのものがある。しかし、私個人は、だからこそロンドン・パンク以上に面白く感じられる。 とにかく、スタイルは様々。有名どころだけ見ても、ストレートでお馬鹿、だけどアメリカン・ポップスの伝統も感じさせるラモーンズ、インテリジェンスでクールなパティ・スミスやテレヴィジョン、元ニューヨーク・ドールズのジョニー・サンダース率いる、男臭くて硬派なハートブレーカーズ、 後にセクシー・キャラで大ブレイクするデボラ・ハリー率いる、60's風のドリーミーなポップ・バンド、ブロンディ、イギー・ポップ直系の暴力的なパフォーマンスで鳴らしたスティーヴ・ベイター率いるデッド・ボーイズと、とても同じシーンから登場したとは思えないほど多彩だ。 立てた髪、破れたT−シャツやジーンズ、安全ピンといった、「パンク・ファッションの元祖」で、テレヴィジョン、ハートブレイカーズなどを転々としたリチャード・ヘルによるザ・フーのMy Generationへの返答歌、Blank Generationにも注目したいところ。 また、マイナーなアーティストの中にも、後にネオ・ロカビリー・シーンで活躍するロバート・ゴードンが在籍していたタフ・ダーツ(ただし、ここに収録された曲はゴードン脱退後のもの)、後のボーイ・ジョージを先取りしたような女装でステージに登場、オカマ・キャラで鳴らしたウェイン・カウンティ(曲は歌詞にニューヨーク・パンクのバンド名が多数登場するニューヨーク・パンク讃歌)、パンクには珍しい、ブラック・フィーリングを採り入れたサウンドが売りのミンク・デヴィルなどの、 個性的なアーティストが実に多い。個人的には、ちょっとコステロ似の、渋いボーカルが魅力的なウィリー・デヴィル率いるミンク・デヴィルがお気に入り。そんな中でも、一際異彩を放っているのがスーサイド。70年代初頭から既にドラム・マシーンやシンセを駆使していたというデュオ・グループで、無機質で冷たいサウンドを構築、「ひょっとすると、この人たちこそ元祖テクノでは?」と思ってしまう。なのにステージでは イギー・ポップばりのパフォーマンスをやっていたというのだからすごい。「埋もれているけど、本当はとんでもない大物かもしれないアーティスト」の筆頭にあげたいアーティストでもある。 ということで、一部の大物を除くと、ほとんど注目されていないニューヨーク・パンク。だけど、個性的なアーティストはこっちの方が多いので、なかなか楽しい。リアル・タイムでは、もっと注目されなかった、というのだから信じられない。ひょっとすると、まだ未発掘の、すごいアーティストが埋もれていそうな予感もする。なお、トーキング・ヘッズは、 権利の関係か未収録で、それだけがちょっと残念。 *アルバム好感度 100
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*:1999年12月19日UP
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