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| パロディというと、「笑い飛ばす→馬鹿にしてるんじゃないか→ふざけるな、くたばれ→そんなもの聴きたくもない」と考える人も決して少なくないようです(笑)。でも、ちょっと待て!!
良質なパロディは、「元ネタへの愛情」があってはじめて生まれるもの。私の場合は、その「元ネタへの愛情」が感じられるパロディであれば、親しみが湧き、共感こそすれ、「ふざけるな」などと思うことはあり得ません。
とはいえ、パロディとは、愛情だけでは成り立たないもの。その愛情に、ほんのちょっとだけの悪意や毒を放り込むことによって、はじめてそのパロディは良質なものになるのではないでしょうか。
ただし、悪意や毒が強すぎると、単なる中傷ネタにしかならないわけで、これでは共感は生み得ない。つまり、まず愛情があって、その中に「元ネタを笑い飛ばす」という程度の、弱い、適度な毒をブレンドすることによってはじめて、
「パロディ」は「良質なパロディ」へとランク・アップすると考えてもよいでしょう。 ということで、ここではそんな「愛情&笑い飛ばす精神」に溢れたビートルズのパロディ・アルバムをご紹介しましょう。ん? まだ「笑い飛ばすなんて許せん!」と、力んでるそこのあなた!! もっとお気楽にいきましょうよ。 ビートルズの4人だって、クソ真面目な人たちじゃなく、「笑い飛ばす精神」を兼ね備えた、ユーモア感覚溢れる人たちだったじゃないですか!! さあ、みんなでビートルズを笑い飛ばしましょう。 |
説明の必要もない、ビートルズ・パロディの最高峰がラトルズ。ビートルズへの愛情とともに、「神格化されたビートルズ」を敢えて笑い飛ばしてしまう、そんな姿勢が楽しく、痛快に思われる。私がはじめてラトルズの存在を知ったのは、実ははじめて動くビートルズを見た1987年6月17日放送の11P.M.でのこと。 つまり、「動くビートルズ初体験」と、「動くラトルズ初体験」が同じ日だったという、何とも奇妙な体験をしているわけだ。例えるなら、「ファースト・キスの日と、SMプレイ初体験が同じ日だった」ようなものなわけで・・・(笑)。なので、存在自体は早くから知っていたけど、その時点ではまだビートルズの全メンバーの名前すら認知してなかったわけで、 「ビートルズを知る」ことに一生懸命。ラトルズのことなんてすっかり忘れており、関心を持つようになるのはずっと後、社会人になった92,3年頃からだった。 ということでラトルズとは70年代末、イギリスのコメディアン集団、モンティ・パイソンのメンバー、エリック・アイドルと、60年代のイギリスで活躍したコミック・バンド、ボンゾ・ドッグ・ドゥー・ダー・バンド(ビートルズの映画MAGICAL MYSTERY TOURのストリップ小屋のシーンで演奏していたバンド)のニール・イニスの二人が仕掛けたビートルズのパロディである。 最初はビートルズそっくりの曲をイニスが書き、エリックが監督を務めて有名なシーンをパロった映像を制作する程度であったが、遂にはビートルズのデビューから解散までの「ビートルズ・ヒストリー」をまるごとパロディにしてしまった映画All You Need Is Cashまで制作してしまったのである。メンバーはちゃんと4人いて、ジョンに当たるロン・ナスティをニール・イニス、ポールに当たるダーク・マッキィックリーをエリック・アイドル、ジョージに当たるスティッグ・オハラを一時期ビーチボーイズの正式メンバーも務めたリッキー・ファター、リンゴに当たるバリー・ウォムをジョン・ハルシーがそれぞれ演じている(ただし、演奏はエリックのパートのみニール・イニスがボンゾ・ドッグ・バンド解散後に在籍したバンド、グリムズの元メンバー、オリー・ハルソールが担当している)。 映像版All You Need Is Cashと同時にアルバムも発表され、これはグラミー賞の最優秀コメディ・レコード賞も受賞。 このCDは、そのLPとは収録曲を代えて、「良心的な再発盤」で知られるライノ・レコードが編集したものである。普通、映像を伴ったパロディというのは、その音楽だけを取り出しても大して楽しくないもの。 例えば、ゲームは多くの人が楽しめるけど、ゲーム・ミュージックだけを聴いて楽しめるのは、ごく限られた人だけだったりするのと同じだと考えてもよい。 それなのに、こんなにも良質な作品が揃っていて、なおかつ楽しめるというのは奇跡的だと思う。それもこれも、作曲を担当したニール・イニスの才能に負うところが大きい。大きく分けると、「特定の曲にそっくりな作品」、「複数の曲の要素を寄り集めた作品」、「特定の曲に似てるようで似ていない、でもビートルズそのものな作品」という3タイプの作品で占められている。 単純に「ビートルズに似ている曲」を作ることだって大変なこと。それなのに、単に似てるだけじゃなく、良質で、楽しめる内容に仕上がってるわけで、ニール・イニスという人の才能の凄さを感じずにはいられないところだ。以下、1曲ごとに元ネタを探ると・・・。
1.Goose-Step Mama・・・Some Other Guy ・・・とまあ、大雑把に見るとこんな感じになるけど、断言できるもんじゃないし、断片だけ他の曲の要素が入っていたりするから、隅々までじっくり聴いていると、いろんな発見がある。つまり、映像の方もそうだけど、「ビートルズ・マニア度」が 高い人ほど、より楽しめるというわけで・・・。ここまでやられると、「パロディなんて」と否定的な気持ちで聴いたとしても、のめり込めないはずがないと思う。はじめて聴いた時、私は笑えなかった。あまりにも凄すぎて感心するばかりだったから・・・。すべてのビートルズ・ファン必聴の1枚だと断言したい。なお、3.Baby Let Me Beと5.Blue Suede Schubeltは、映像版には登場しなかった曲。一方、ナスティ(ニール・イニス演じるジョン役)のソロ、You Need Footは、 映像には登場するもののCDには未収録。CDにはAll You Need Is Cashのストーリーと、ミック・ジャガーのインタビューも載ってるからこれも必見。最後に、ちょっとしたエピソードをひとつ。18.Cheese And Onionsにおける、ジョンを意識したニール・イニスのボーカルを聴いた多くの人が、 「これを歌っているのはホンモノのジョンだ!」と信じ込み、一部で「(当時主夫生活を送っていた)ジョン・レノンが活動再開」と報じられるなどの騒ぎも起こっている。さらに、ビートルズのブートにまで収められたとか・・・。 ここまで来ると、もはやパロディの域を大きく越えているといってもよいのではないだろうか。 *アルバム好感度 100
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ビートルズの「アンソロジー・プロジェクト」に便乗するような形で登場した、まさかのラトルズ再結成アルバム。ただしエリック・アイドルは乗り気じゃなかったそうで不参加。よって映像版は作られず、また、レコードではエリック・アイドルの「影武者」を務めていた オリー・ハルソールも92年に亡くなっていたため参加できず・・・。ということで、映像なし、その上ビートルズでいえばポール役抜きという、何となく寂しい再結成となった。また、イニスは「ジョンが亡くなった以上、このジョークは続けられないと思った」ということで、 純粋な「ビートルズのパロディ」というよりは、「ラトルズというバンドの再結成」、または、「ラトルズのセルフ・パロディ」といった方が適当とも思える、そんな内容に仕上がっている。ただ、「ビートルズのパロディ」というコンセプトが薄まった分、ニール・イニスという「埋もれた天才」の才能が、 純粋な形で発揮されたアルバムに仕上がっているという見方もできるかもしれない。 ということで、「ビートルズのパロディ」という色が薄い分、今回はどの曲も「元ネタ」を特定することが全く不可能な状態となっている。つまり、「ビートルズのどの曲にも似てない、だけどいかにもビートルズが作りそうな作品」に支配されているといった方がよい。 1.Major Happy's Up And Coming Once Upon A Good Time Bandのように、タイトル、曲調から簡単に元ネタを探ることのできる作品もあるけど、このアルバムの楽しみ方は、もっと別のところにある。例えば、ジェット音まで再現しているBack In The USSRのパロディ、4.We've Arrivedは演奏が中断したり、 途中で笑い出したりする、ビートルズの「アンソロジー」をネタにしたものであったり(ラストにNumber Twoという、Revolution 9を意識した呟きが入るという芸の細かさ!)、6.Unfinished Wordsの歌詞にはCheese And Onionsが登場、ラトルズ自身がネタになっていたり、イントロだけがTomorrow Never Knows風、しかも公式テイクではなく、ANTHOLOGY 2収録の初期テイク風の13.Joe Public、 ドイツ語版She Loves Youのパロディともいえそうな、フランス語版Baby Let Me Beの18.Baby S'il Vous Plait、タイトル、歌詞、曲調ともWhen I'm Sixty-Four風だなと思っていると、いつしか全然違う曲になって、「あれ? 違うのか」という気持ちにさせられる16.Back In '64、さらに、70年代のレコーディング時のアウト・テイクをわざわざ「発掘」して、 「アンソロジー・ネタ」に引っかけた19.It's Looking Good(当然、ここには亡くなったオリー・ハルソールも参加)・・・。といった具合で、芸の細かさでは往年の上をいっている。一方で、「ビートルズ・パロディ」というコンセプトが薄れている分、ちょっと趣の違うテイクもある。例えば、5.Lonely-Phobia、12.Eine Kleine Middle Klasse Musik、14.Shangri-Laは、 タイトル、曲調ともキンクス風。特に14.Shangri-Laなんて、キンクスの作風そのものなのに、A Day In The Life、Hey Judeも入っていたり、イントロが何と、オアシスのWhateverのメロディ(イニスによると、「オアシスが僕のソロ作品をパクッたことへのお返し」とか:笑)だったり・・・。まあ、もともとニール・イニスとレイ・デイヴィスって、似通った個性を持ったアーティストだから、キンクスに似ていても不思議はないんだけど、こういう面が表に出ているというあたり、やはり今回は純粋なビートルズ・パロディじゃないということを象徴してるといえるかもしれない。 ということで、映像なし、純粋なビートルズのパロディじゃない分、ニール・イニスというアーティストの個性が純粋に前面に出ているので、彼の魅力を知るにはもってこいといえよう。私はまだ、彼のソロは聴いてないけど、今後聴いていきたいと思っている。また、元ネタを特定できず、芸も細かくなっている分、何度も聴き込んで気がつくネタというのも多いから、「ネタ探し」の楽しみは、こっちの方があるともいえよう。 ジャケットはPAST MASITERSのパロディ。しかし、噂されていた来日公演が実現しなかったのは残念。次回はぜひエリックも合流しての4人での再結成を望みたい。 *アルバム好感度 80
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ラトルズの登場を見て「やられた!」とばかりに、最も悔しい想いをしたのは、自他ともに認めるビートルズ・フリークのトッド・ラングレンだったのではないだろうか。ポール的なポップ・センスを持ちながら、一方でアバンギャルドな個性も持ちあわせた奇才アーティストがトッド・ラングレン。「アバンギャルド」といっても、ザッパやジョンのような、 「攻撃的なアバンギャルド」というより、「オタクっぽい、屈折したアバンギャルド感覚」を持った、まさに唯一のアーティストといってもよいだろう。ソロではすべての楽器をひとりで担当したワンマン・レコーディングによるアルバムを発表、そのソロ活動と平行してバンド、ユートピアを率いて活動、プロデューサーとしても大活躍と、多才な面も持っている。そんなトッドはソロ名義のアルバムFAITHFULで、 ヤードバーズの「幻の10年」、ビーチ・ボーイズのGood Vibrationの他、ビートルズのRain、Strawberry Fields Foreverの「完コピ」を実現、「さすがビートルズ・マニア(いや、オタク:笑)」と絶賛された。そんな彼だから、このアルバムは「ラトルズを意識した」というよりも、「FAITHFULの発展形」と考えた方がよいかもしれないけど、 全く意識しなかったといったら嘘になるだろうな。 ということでラトルズに遅れること約2年、ジョンがDOUBLE FANTASYで復活する1ヶ月前の80年10月に発表されたのが、ユートピア名義のこのアルバム。当初は1,2曲だけやってみるつもりが、あまりに上手くいき、かつ、あまりに楽しかったので、思わず1枚のアルバムにまで仕上げてしまったというエピソードもある。「全曲、ビートルズのあの曲に似ているようで、実は似ていない」というのはラトルズと同じ。だけど、決定的に違うのは、ラトルズと比較すると「笑い飛ばす」というか、コメディの要素が薄く、 毒や皮肉といった屈折した愛情(好きな異性を、なぜかいじめてしまうような感覚)、さらにはトッドだけが持つ独特な狂気やアバンギャルド感覚が無理なくブレンドされた仕上がりであること。言いかえるなら「ビートルズを一度分解して、その断片やトッド独自の個性を使って再構築してみました」といったところか。そうした、トッドだけが持つ個性が発揮されているおかげで、「ラトルズの二番煎じ」、「パクリ」といった印象は皆無だし、誰もそんなことはいわなかった。 「ビートルズ・パロディ」でありながら、「トッドにしか生み得ない世界」をしっかり築いているのである。ということで、ここでも各曲の元ネタを探ってみよう。
1.I Just Want To Touch You・・・タイトルやクラッピングはI Want To Hold Your Hand、「ウー」はShe Loves You、 ・・・といった感じ。ラトルズと比べると、トッドとイニスの音楽的資質の違いだろうが、ロック色が濃く、演奏にドライブ感があること、ストリングスのパートだけでなく、リズム・ギターのパートもシンセやキーボードで代用していること、 そして、先述した通り、トッドならではのアバンギャルド感覚に溢れていることなどが特徴といえよう。 ということで、ラトルズとは全く違ったアプローチによる「ビートルズ・パロディ」なので、全く違った楽しみ方ができるだろう。 また、このアルバムが気に入ったビートルズ・ファンのみなさんには、これを機会に、ぜひトッドのソロを聴き込んで欲しいなあと思う。 しかし、熱狂的なトッド・マニアには「トッドの道草」のように言われて、あんまり評判がよくないよう。でも、こういうことを平気でやってしまうところが、 この人の特徴だと私は思ってるんだけど・・・。ちなみに、発表当時、アルバムには「ミート・ザ・ユートピア」、1.には「抱きしめたいぜ」などといった邦題がついていた。 *アルバム好感度 100
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*:2000年8月31日UP
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