MY CD COLLECTION

毎回1つのテーマに絞って私の手持ちのCDをご紹介、個人的な思い入れなどを語っていくコーナーです

      
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第9回:復活祈願! こんなクラプトン
  1992年のUNPLUGGED以降、大物然として充実した活動を続けるクラプトン。その彼に向かって「復活祈願」なんていうと変な顔をする人が多いことでしょう。 だけど、私に言わせれば近年の「スタイリッシュ・クラプトン」には違和感ばかり。実際、そんな彼を見てブルース・ブレイカーズやクリームの頃の「ギターの神様」なクラプトンを求めている人は多いようです。もちろん、私もその辺は好きだけど、もっと好きなのは 70年代の彼。デレク&ザ・ドミノスを結成して順調なスタートを切りながらもあっさり崩壊、ドラッグ中毒であわや命を落としそうになったり、酒に溺れてアル中になったり、親友・ジョージ・ハリスンの妻、パティを略奪してしまったりと、 彼にとっては激動の時期。だけど反面、それゆえに彼の人間臭さがダイレクトに伝わってくる。全然スタイリッシュじゃないし、頼りなくって、時としてだらしないし、情けない。ある意味カッコ悪いくらい。でも、だからこそ魅力を感じるんです。 作品も、純粋に好きな音楽との出会いに喜び、その愛情を無邪気過ぎるほどにダイレクトに表現しているのが特徴。だからこそ魅力的だと思うし、またそれが彼のアーティストとしての本質ではないでしょうか。

  現在のクラプトンは、かつてのように悩んだり、苦しんだりはなくって、本当に気持ちが充実しているのでしょう。だからこそ「余裕」すら感じられる貫禄たっぷりの作品を発表して大物として振る舞っていられる。 だけど、それゆえに「音楽に対する無垢な愛情」や「人間臭さ」が作品から薄れてしまったというのはなんとも皮肉な話です。キース・リチャーズは皮肉っぽくこう言ったそうです。「奴はイエスマンに囲まれてるからな」。 私も同感。彼に「昔のようにやってみようぜ」って言うだけの勇気のある共演者がいてくれたらなあと思ってしまいます。

  長くなりましたが、そういうわけで今回は私の好きな70年代のクラプトン、しかも敢えて「名盤」を外して3枚をセレクトしてみました。この3枚には私の大好きなクラプトン像が一杯詰まっています。「こんなクラプトンが好き」「こんなクラプトンが聴きたい」。どれも本当に大事なアルバムなのです。

  私はUNPLUGGED直前までは、クラプトンを「ビートルズ、ストーンズの次に好きなアーティスト」と評してきました。それなだけに、彼の真の「復活」を願わずにはいられません。「クラプトン信者」の方にとって腹立たしいような辛口な表現も多数含まれているかもしれませんが、 すべては彼に対する私の深く強い愛情ゆえのこと。その点はご了承ください。だけど、好きだからこそ「軽く聴き流せる、耳当たりのよいBGM」のような音楽を作る「スタイリッシュ・クラプトン」を見ると私は悲しく、寂しくなるのです。


ERIC CLAPTON (エリック・クラプトン・ソロ)
収録曲
1.Slunky、2.Bad Boy、3.Told You For The Last Time(ラスト・タイム)、 4.After Midnight、5.Easy Now、 6.Blues Power、7.Bottle Of Red Wine(レッド・ワイン)、8.Lovin' You Lovin' Me、9.Lonesome And A Long Way From Home(家から遠く)、10.Don't Know Why(何故か知らない)、11.Let It Rain       

      

      

 

 
発売1970年
プロデューサーデラニー・ブラムレット
参加ミュージシャンデラニー・ブラムレット(g,bvo)、レオン・ラッセル(p)、スティーヴン・スティルス(g)、ジョン・サイモン(p)、ボニー・ブラムレット(bvo)、ボビー・ホイットロック(key,bvo)、カール・レイドル(b)、ジム・ゴードン(d)、リタ・クーリッジ(bvo)、ボビー・キーズ(sax)、ジム・プライス(トランペット)、ソニー・カーティス(bvo)、ジェリー・アリスン(bvo)
手持ちのCDP20W-22009(ポリドール)
購入1989年秋頃

  私がクラプトンの存在と名前を知ったのは、ビートルズのWhile My Guitar〜。大方のビートルズ・ファンがきっと同じなのではないだろうか。そんな私が最初に買ったクラプトンのアルバムはTIME PEICESという70年代のベスト。次がクリームのベスト。ソロとクリームでの音楽性のギャップ、またソロでの「ギターの神様」のイメージからは程遠いサウンドに驚きはしたけど、 「大人っぽくって小粋でいいな」と素直に思った。そしてその次がこのファースト・ソロだった。ブラインド・フェイスの解散→デラニー&ボニーのツアー参加後に発表されたものであり、それはデレク&ザ・ドミノス結成直前にあたる。そんなわけで、デラニー&ボニーの他、レオン・ラッセル、後のドミノスのメンバーなど「デラニー&ボニー・ファミリー」がガッチリとバック・アップ。 特にデラニーとレオンがソング・ライターとしても貢献している分、 ブルース色というよりも、ゴスペル色の濃いファンキーなスワンプ・ロック・アルバムに仕上がっている。だけど、当時の私にはそんな予備知識は全くなく、いわば衝動買いだった。ルーツ・ロックも、スワンプ・ロックも、サザン・ロックも知らない、そんな私にとってはとても新鮮に響いてきたのを覚えている。

  アルバムはいきなりファンキーなインスト1.Slunkyで幕を開ける。以降も2.Bad Boy、3.Told You For The Last Time、7.Bottle Of Red Wine、9.Lonesome And A Long Way From Homeといったゴスペル・ファンク=スワンプ・ロック風ナンバー、 ブギー調のR&R6.Blues Power、ゴスペル・カントリーとでもいった趣の8.Lovin' You Lovin' Meなど、デラニー&ボニーの影響の濃いナンバーが並ぶ。その一方でJJケイルのカバー4.After Midnight、アコースティックでメロディアスな5.Easy Now、 唯一ドライなサウンドを聞かせる11.Let It Rainのようにポップでイギリス的なナンバーも収録、その分、単調になっていないのもポイントといえる。

  発表当時、「ギターの神様のファースト・ソロ」ということで、ファンはクリームのようなブリティッシュ・ブルース・サウンドや緊張感のあるバトル演奏、ギター弾きまくりの内容を期待、それゆえにギター・ソロもほとんどない上、ゴスペル・ファンク的なリラックスしたサウンドが支配したこのアルバムに肩透かしを食い、酷評も乱れ飛んだらしい。一方現在においても、この後に発表されるデレク&ザ・ドミノスの名盤LAYLAへ至る 「過渡期の一枚」と見られ、決して評価は高くないようだ。だけど、私はこのアルバムが大好きだ。ここには、デラニー&ボニーのツアーに同行することで未知の音楽=スワンプ・ロックに出会った、そのことを純粋に喜び、そうした音楽に対する愛情を無邪気過ぎるほどにストレートに表わした、そんな彼の無垢な気持ちがストレートに伝わってくる。気の合った仲間に囲まれ、大好きな音楽だけをリラックスしたムードの中で歌い、演奏する。 プロ、アマ問わず音楽をやる者にとっての原点であり、理想ではないだろうか。その楽しそうな様子が聞き手にも伝わってくるので、聞いているこっちも楽しくなる。現在のクラプトンが失った「音楽への無垢な愛情」がここにはある。「名盤」とはいえないし、完成度も高くない。でも「なんかいい感じ」(←女子高生風に:笑)な1枚といえるのではないだろうか。もうひとつ、ここでのクラプトンのギターは、異様に泥臭くてファンキーな音を奏でている。彼がこんな音色のギターを響かせるのは、後にも先にもこのアルバムのみである。 サウンド的には延長線上にあるLAYLAでも、こうしたギターは全く聴くことが出来ないし・・・。意外と語られないけど、これは見逃せないポイントではなかろうか。

   アルバム好感度     90


E.C. WAS HERE (エリック・クラプトン・ライブ) / ERIC CLAPTON
収録曲
1.Have You Ever Loved A Woman、2.Presence Of The Lord、3.Drifting Blues、 4.Can't Find My Way Home(マイ・ウェイ・ホーム)、5.Rambling On My Mind、 6.Further On Up The Road       

      

      

 

 
発売1975年
プロデューサートム・ダウド
参加ミュージシャンジョージ・テリー(g)、カール・レイドル(b)、ディック・シムズ(key)、ジェイミー・オルデッカー(d)、イヴォンヌ・エリマン(bvo)、マーシー・レヴィー(bvo)
手持ちのCDP20W-22017(ポリドール)
購入1991年頃、一度売却後、1999年末再購入

  ドラッグ中毒で再起不能といわれた彼が劇的な復活を遂げたのは、74年のアルバム461 OCEAN BOULEVARDであった。ブルースとは若干の距離を置き、ボブ・マーリィの曲を取り上げるなどレゲエに接近したりと明るく、乾いた、トロピカルでリラックスしたサウンドを打ち出し、 「レイドバック」なる言葉を生むなど、復活後の彼は大きくイメージ・チェンジしていた。今でこそ名盤といわれるけど、当時は賛否両論入り乱れていたようだ。そんな彼が75年に発表したのがこのライブ・アルバム。全編ブルースのカバーとブラインド・フェイス時代のナンバーのみからなる内容は 「俺はブルースを忘れてないんだ」と世間に宣言するとともに、彼自身の「ちょっと原点にかえってみたい」という気持ちが表れているようにも思える。収録曲はわずか6曲、しかも1曲あたり10分前後。それも「火花の散るバトル」が展開されるでもなく、異常なほど緩いテンポで演奏されており、 461 OCEAN BOULEVARDなどとは違った意味での「レイドバック・サウンド」を聴くことができる。

  アルバムは信じられないほど緩いテンポの1.Have You Ever Loved A Womanではじまる。桑田佳佑がラジオ番組でこの曲をかけつつ「はじめて聴いた時、プレイヤーの回転数を間違ったと思った」と言っていたが、本当にそれほどテンポが緩い。その上、クラプトンのギター・ソロ、ボーカルとも ネットリとしていて耳にまとわりつくかのよう。「ギターの音が卑猥」というと変な表現だけど、そんな感じだ。続く2.Presence Of The Lordはブラインド・フェイス・ナンバー。しかしこれも異様にテンポが緩く、途中にはイヴォンヌ・エリマンのボーカルも入る。個人的にはゴスペル調の荘厳なウィンウッドのボーカルが感動的な オリジナル・テイクの方が数段好きだけど、全く違うブルース色を押し出したネットリ感がクラプトンらしい。4.Can't Find My Way Homeもブラインド・フェイス・ナンバーだけど、こっちはオリジナルに近い演奏。3.Drifting Bluesと5.Rambling On My Mindも緩くてネットリとした演奏。 特にアコースティック・ギターに持ち替えての3.Drifting Bluesに至っては11分以上も緩い演奏が続いているんだから凄い。そして6.Further Up On The Roadはライブでお馴染みの曲である。

  クラプトンは最近もそうだけど、「新境地を開いた直後にブルースに還る」ことが多い。事実、UNPLUGGEDの後にもFROM THE CRADLE(94年)でブルースに還ったのも記憶に新しいだろう。だけど、FROM THE CRADLEは変に肩に力が入り過ぎていて、私的には馴染めなかった。しかしこのアルバムの場合、それとは全く正反対な彼の姿がある。 緩過ぎるほどのテンポでリラックスしてブルースを演奏する彼の中にこそ、私はブルースへの深い愛情を感じる。また、先も述べた通り、ここでのクラプトンのボーカルやギターには、粘り気が全開、本当に卑猥だ。ブルース音痴の私が言うのも変だけど、ブルースの本質とは、こうした卑猥さではないのだろうか。 また、「スケベである」というのもクラプトンという人の本質。ブランドもののスーツを着こなしたスタイリッシュで渋い男じゃない、本能=スケベ心むき出しのクラプトンじゃなきゃといった想いは強い。今の彼に足りないもの、それは意外と「むき出しのスケベ心」なのかもしれない。また、クラプトンを食ってしまいそうなほどに 素晴らしいボーカルを聴かせる女性コーラス陣、イヴォンヌ・エリマン&マーシー・レヴィー、クラプトンと互角にギター・ソロを弾くジョージ・テリーなど、「史上最強メンバー」といわれるクラプトン・バンドのまとまりも見逃せないポイントだ。また、表には背中、裏ジャケは生尻のアップを配したジャケットも卑猥。そのモデルがパティであることはいうまでもない。 ブラインド・フェイスのアルバム同様、「持ってレジに並ぶのが恥ずかしいジャケット」のアルバムだ(笑)。 ちなみに私は最初に聴いた時、あまりの緩さに寝てしまい(笑)、一度売却、その後急に聴きたくなって再購入したということを付け加えておく。

   アルバム好感度     70


BACKLESS / ERIC CLAPTON
収録曲
1.Walk Out In The Rain、2.Watch Out For Lucy、3.I'll Make Love To You Anytime、 4.Roll It、5.Tell Me That You Love Me、 6.If I Don't Be There By Morning、7.Early In The Morning、8.Promises、9.Golden Ring、10.Tulsa Time       

      

      

 

 
発売1978年
プロデューサーグリン・ジョーンズ
参加ミュージシャンジョージ・テリー(g)、カール・レイドル(b,g,bvo)、ディック・シムズ(key)、ジェイミー・オルデッカー(d,bvo)、マーシー・レヴィー(bvo)、ベニー・ギャラガー(bvo:9.)、グラハム・ライル(bvo:9.)
手持ちのCDPOCP-9057(ポリドール)
購入1996年秋

  前年発売の名盤SLOWHANDに続いて発売されたアルバム。SLOWHANDが3曲のシングル・ヒットLay Down Sally、ライブの定番となるCocaine、クラプトンの代表的バラードWonderful Tonightという70年代を代表するナンバーを含んだ、きらびやかな印象を残すアルバムだったのに対し、 こちらは派手さのない、肩の力の抜けたカントリー・タッチの作品が中心。それゆえにリアル・タイムでは印象が薄い作品と見られがちで、現在でも評価は低いよう。だけど、その「力の抜け具合」がとても心地よく、また、前作でポップ寄りのアプローチを見せた後、もう一度原点に返ってみた、 そんな彼の姿勢には好感が持てる。

  アルバム・タイトルは「背を向けない」、「振り返らない」といった意味で、クラプトンがディランの生き様に敬意を表した言葉なんだとか。そのディランがヘレナ・スプリングスとともに書き下ろした作品1.Walk Out In The Rainと6.If I Don't Be There〜が、LP時代のA、B面それぞれの トップを飾っている。前者は落ち着いたカントリー調の作品で、いかにも「ディランだなあ」というメロディが印象的、後者の方は軽快でポップな佳曲。ザ・バンドのOpheliaを連想させる小粋な(ギターもロビー・ロバートソン風)2.Watch Out For Lucy、クラプトンが好んで取り上げるJJケイルの作品で泥臭い3.I'll Make Love To You Anytime、 マーシー・レヴィーのボーカルとクラプトンのスライドの絡みの絶妙なファンキーな4.Roll It、Wonderful Tonight風のメロディアスなナンバーながらも、アコーディオンの音が聞こえたりと素朴な味わいのある9.Golden Ringなど、強力とはいえないけど、心地よいナンバーが並ぶ。唯一のブルース・カバー7.Early In The Morningも、 肩の力を抜いて楽に、さらっと演奏されている。そんなアルバム全体の雰囲気を決定付けているのがシングル・ヒットした8.Promises、この後しばらくライブのオープニング・ナンバーになる10.Tulsa Timeの2曲。特に前者の肩の力の抜けたカントリー・ポップ風なサウンドは実に心地よい。地味な曲だけど、個人的には70年代でも3本の指に入るほど好きな曲だ。

  とにかく、前作SLOWHANDが名盤といわれ、派手であるが故に見過ごされがちだけど、私に言わせればこっちの方が数段本来のクラプトンらしさが出てるし、数段好きだ。ある意味、SLOWHANDの路線を極端に推し進めた結果が、90年代以降の「スタイリッシュ系」に繋がっていると見ることもできるわけで、個人的にはSLOWHANDはあんまり好きじゃなかったりする。 とにかく、ここで聴かれるような「肩の力の抜けた感覚」もまた、近年のクラプトンが見失った大事なもののような気がする。それに、Promisesに代表されるようなカントリー・タッチの曲をやらなくなったことも個人的には寂しい。なお、このアルバムでは既にイヴォンヌ・エリマンが脱退しているが、「最強メンバー」のクラプトン・バンド自体がこのアルバムを最後に解散している。 その後、彼はアルバート・リー、クリス・ステイントンをはじめとした全員イギリス人のバンドを率いて活動するようになるが、その結果もったりしたルーツ・ロックから、よりスマートなブリティッシュ・ブルースへと方向転換。それもまた現在の「スタイリッシュ系」にも繋がっているような気がしないでもない。

   アルバム好感度     90

                                                                   *:2001年3月26日UP


      
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