GEORGE HARRISON ALBUM GUIDE

第4回

      
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SOMEWHERE IN ENGLAND
(想いは果てなくー母なるイングランド)
収録曲
1.Blood From A Clone、2.Unconsciousness Rules(空白地帯)、3.Life Itself、4.All Those Years Ago(過ぎ去りし日々)、5.Baltimore Oriole、 6.Teardrops、7.That Which I Have Lost、8.Writing's On The Wall(神のらくがき)、9.Hong Kong Blues、10.Save The World(世界を救え)
CDボーナス・トラック:11.Save The World [Demo Version]          

 

 

      
発売日1981.6.5.(英)
プロデューサージョージ・ハリスン&レイ・クーパー
レコーディング80年夏(2,3,5,8〜10.)
81年1〜4.(1,4,6,7.)
参加ミュージシャンポール・マッカートニー(bvo:4.)、リンゴ・スター(d:4,6.)、レイ・クーパー(key,syn,per,d)、アル・クーパー(key,syn)、ゲイリー・ブルッカー(key)、ジム・ケルトナー(d)、トム・スコット(sax)、ウィリー・ウィークス(b)、ハービイ・フラワーズ(b)、ニール・ラーセン(key)、 デイヴ・マタックス(d)、マイク・モラン(key)、リンダ・マッカートニー(bvo:4.)、デニー・レイン(bvo:4.)
手持ちのCDCDP 7243 5 94088 2 8(米・キャピタル)
購入時期2004年3月

  自信作であったにもかかわらず、前作GEORGE HARRISON(慈愛の輝き)が商業的に失敗に終わったことにより、「商業的成功云々に興味がなくなった」ジョージがマイ・ペースなレコーディングを行い、1980年に発表しようとしたアルバム。しかし、前作が売れなかったことによってレコード会社からの圧力は強くなり、「ジョンのDOUBLE FANTASYと重なるから」と発売時期を延期された上、 「地味な曲が多すぎる」として曲の差し替えまでも命じられる羽目に。そしてジョージが「差し替え用」の、一般受けしそうな新曲の準備に入った頃、ジョンの訃報。こうしてジョンの追悼歌4.All Those Years Agoが急遽作られ、81年5月にシングル発売、Give Me Love以来のヒット(全英13位、全米2位)を記録した。その後81年6月にようやく発売・・・、という紆余曲折を経て世に出たアルバムである。しかし発売日の延期、曲の差し替え、久々のシングル・ヒット直後の発売、 更には一部の曲の手直し、ジャケットの差し替え(現在のCDは差し替え前のジャケット)と、ジョージ自身の意思が反映されておらず、ほとんどレコード会社の意のままに出されたアルバムといっても過言ではない。「差し替え」で外された楽曲、Lay His Head、Sat Singing、Flying Hour、Tear Of The Worldの4曲はこの後、CDのボーナス・トラックやシングルのカップリング、更にはブートなどで聴くことができるが、前作GEORGE HARRISONなどに通じる、ジョージらしい佳曲であっただけに、 この差し替えがなければ・・・、という想いは強い。しかしセールス面から見れば、これら「ジョージらしい反面、コマーシャルではない」作品が外され、代わりに話題性十分な4.All Those Years Agoなどの派手なナンバーが収録されたおかげで、久々にアルバム自体も好セールス(全英8位、全米11位)を記録したというあたりは、あまりにも皮肉である。

  サウンド的にはシンセやパーカッション(プロデューサーのレイ・クーパーが活躍)を導入した派手な曲が多く、特に「差し替え」によって加えられた作品1.Blood From A Clone、6.Teardropsや、メッセージ・ソングの10.Save The Worldにそれが顕著。ただ、派手なわりにはあまり「明るい」という感じがせず、むしろ「空元気」に聞こえてしまうのは、決して気のせいではないだろう。話題性十分のジョンの追悼歌4.All Those Years Agoは、 もともとリンゴに贈る「新曲」として作られ、途中までレコーディングも進んでいたが、急遽歌詞を書き替えて改作されたといういきさつがあるため、ドラムはリンゴが担当。さらにポール、リンダ、デニー・レインが後からバック・ボーカルをオーバー・ダビングしているので、偶然とはいえ、ビートルズ解散後初の「ポール、ジョージ、リンゴの共演曲」となった。とはいえ歌詞は純粋な「追悼」ではなく、ジョンを変人扱いしてきた人たちへの痛烈な皮肉が込められているあたりがジョージらしい。この曲に限らず、どうしても派手めな曲に注目が集まりがちなアルバムだけど、 個人的にはジョージの真骨頂ともいえる「宗教歌」の3.Life Itselfと8.Writing's On The Wallの2曲、これこそがこのアルバムのハイライトだと思う。ともに歌詞こそ宗教色が濃いが、繊細で美しいメロディがいかにもジョージらしい。特に前者の東洋的で美しいメロディとスライドには、聞いているうちに涙が出そうになるほどの感覚に襲われる。派手な曲よりも、こういう曲の方が数段魅力的なんだけど、当時は誰も気がつかなかったのか・・・。 なお、5.Baltimore Orioleと9.Hong Kong Bluesはホーギー・カーマイケル作のスタンダードのカバーである。

  というわけで、「差し替え」のおかげで久々のヒット作にはなったものの、そのためにジョージらしさは損なわれ、アルバム全体の魅力は乏しい。実際、派手な曲調の作品が多いにもかかわらず、全然明るい感じがしないというあたりを考慮すれば、やはり「差し替えは失敗」と言わざるを得ない。私にとっても、ジョージのアルバムの中では優先順位の低いアルバムであることは疑いようがない。

   アルバム好感度     60


GONE TROPPO
収録曲
1.Wake Up My Love(愛に気づいて)、2.That's The Way It Goes、3.I Really Love You、4.Greece、5.Gone Troppo、 6.Mystical One、7.Unknown Delight、8.Baby Don't Run Away、9.Dream Away、10.Circles
CDボーナス・トラック:11.Mystical One       

  

 

 

 

      
発売日1982.11.5.(英)
プロデューサージョージ・ハリスン、レイ・クーパー、フィル・マクドナルド
レコーディング82春〜夏(1〜6,8,10.)
80春(7.)
81.4.(9.)
参加ミュージシャンジョン・ロード(syn:10.)、レイ・クーパー(key:3,6.、per:1〜3,5〜10.、マリンバ:5.)、ビリー・プレストン(key,bvo:8〜10.)、ジム・ケルトナー(d:7,8.、per:5.)、ゲイリー・ブルッカー(key:7.)、ハービイ・フラワーズ(b:2〜6)、ヘンリー・スピネッティ(d:1〜6,10.)、ウィリー・ウィークス(b:7.)、ジョー・ブラウン(bvo:5.、マンドリン:6.)、ヴィッキー・ブラウン(bvo:5,6.)、ヘンリー・スピネッティ(d:10.)、マイク・モラン(key:1〜6,8〜10)、ニール・ラーセン(p:7.)、ウィリー・グリーン(bvo:2,3,7.)、 ボビー・キング(bvo:3,7)、ピコ・ペナ(bvo:3,7)、シリータ(bvo:9)
手持ちのCDCDP 7243 5 94089 2 7(米・キャピタル)
購入時期2004年3月

 前作はセールス的には成功したものの、「差し替え」などの出来事はジョージにとって以前にも増して音楽業界への不信感を抱かせる出来事になった。1982年になるとオーストラリアに引っ込み、庭いじりにいそしむなど、すっかり隠居状態。そんな中でレコーディングされ、発表されたアルバム。そのためか、南国ムード漂う、トロピカルなナンバーが多く収められた明るいアルバムに仕上がっている。 しかし、セールスに対する興味を失い、音楽業界への不信感を抱いていたジョージに「アルバムを積極的に売りたい」意思は全くなかったようで、一切のプロモーション活動を拒否。そのため、前作から一転、全英ではチャート・インすらせず、全米では108位。さらに、「現役」から一歩引いたような、あまりにも能天気すぎる作風故に、硬派な評論家筋から「全く覇気がない」「過去の人になってしまったアーティストによる単なる道楽」などと酷評された。故に長く「ジョージ最大の失敗作」と見なされていたようだ。 しかし「差し替え」によって無理しているようにしか見えない前作と違って、ジョージ自身のその当時の心理状態をそのまま反映したような、明るく、能天気な作風は、逆に見れば「自然体」「人間的」と見ることもできるわけで、決して発表当時言われていたような「駄作」だとは思えない。むしろ「音楽業界に失望」といっても、落ち込んだり考え込んだりという時期は過ぎ、既に開き直ったかのような、吹っ切れた明るさがあり、その辺には好感が持てるし、この「開き直り」が、次作での「大復活」に繋がっていくと考えることもできる。

  作風はとにかく明るい。シンセやパーカッションを多用した重厚なサウンドは前作と同様だけど、ジョージの作品とは思えないほど力強い1.Wake Up My Love、2.That's The Way It Goes、マリンバをフューチャーしたトロピカルな5.Gone Troppo、ジョージが設立した映画制作会社ハンドメイド社制作の映画「バンデットQ」のテーマ曲の9.Dream Awayなど、作品自体が明るいので、前作のような重苦しさがない。このあたりは「作風が」云々というより、作者のジョージの心理状況がそのまま現れた結果と考えた方がよいだろう。 バック・コーラス隊と一緒にボーカルをとる、オールディーズ調の3.I Really Love Youは「これがジョージの作品?」と驚いてしまうほどの異色作。一方でLP時代のB面(6.以降)には、ジョージらしい繊細なバラード調の曲が多く並ぶが、中でも「パティ争奪戦」でいろいろあった親友エリック・クラプトンとの変わらぬ友情を歌った6.Mystical Oneが素晴らしい。ゲストのジョー・ブラウン(ビートルズ以前の時代のイギリスのロック・シンガー)の弾くマンドリンの音が耳に残る。しかし重厚な10.Circles(ビートルズ時代の68年に書かれていた曲)にディープ・パープルのジョン・ロードが参加しているのはちょっと意外である。

  ということで、ただですら商業的成功に縁遠いジョージのソロの中ですら最も売れなかったがために、やたら「駄作」と評されるアルバムだけど、ここで聴けるジョージらしからぬ能天気さはとても心地よく思われる。ビートルズ解散後、常に悩み、苦しみながらソロ活動してきたジョージ。そのジョージが、ここでこうしてすべて吹っ切って、開き直ることができたからこそ、次作での「劇的な大復活」を遂げることができた、そう考えることもできる。それを思えば、間違っても「単なる隠居アーティストの道楽作品」などではないと私は思う。むしろ「ようやく悩むことをやめることができた」ことは喜ばしいことではないだろうか。 また、そんなこと抜きに、この能天気なほどの明るさ、決して悪くないと思う。少なくとも「売れたけど、内容に魅力が乏しい」前作よりは数段よいアルバムであること、これは否定できない。

   アルバム好感度     80


CLOUD NINE
収録曲
1.Cloud Nine、2.That's What It Takes、3.Fish On The Sand、4.Just For Today、5.This Is Love、 6.When We Was Fab、7.Devil's Radio、8.Someplace Else、9.Wreck Of The Hesperus(金星の崩壊)、10.Breath Away From Heaven、11.Got My Mind Set On You       

  

 

 

 

      
発売日1987.11.2.(英)
プロデューサージョージ・ハリスン&ジェフ・リン
レコーディング87.1〜6.
参加ミュージシャンジェフ・リン(g,b,key)、リンゴ・スター(d)、エリック・クラプトン(g)、エルトン・ジョン(p)、ゲイリー・ライト(key)、ジム・ケルトナー(d)、ジム・ホーン(sax)、レイ・クーパー(per)
手持ちのCD32XD-848(ワーナー)
購入時期1988年5月頃

  前作発表後、チャリティ・コンサートへの出演や他のアーティストのセッションへの参加はあったものの、本格的な音楽活動は停止してしまったジョージ。もはや「現役アーティスト」とすら思われなくなりつつあった1987年、5年ぶりに発表された大復活作。80年代に入って親交を深めていたデイヴ・エドモンズの紹介で知り合ったELOのジェフ・リンがプロデュースを担当。ビートルズ解散後、ジョージが拘って避けてきたと思われる「ビートルズ的」なシンプルなポップ・ロック・サウンドに仕上がっているあたりは、 ビートルズ・フォローワーとして有名なジェフの手腕によるところが大きいことはいうまでもない。とはいえ、そればかりではないであろう。やはり前作GONE TROPPOで聴くことのできた「吹っ切れた」感覚。つまりジョージは本当にあの時点で「売れる、売れない」とかというレベルの話ばかりではなく、自らの過去=元ビートルというしがらみからも「吹っ切れた」のではないだろうか。拘りを捨てることができた、それがここで聴ける「ビートルズ風サウンド」の要因のような気がする。とはいえ「ビートルズ的=60年代風」といっても、決して懐古的ではなく、 シンセを導入したり、適度に音にエコーをかけるなど、無理なく「80年代の音」に仕上がっており、決して古臭くはない。このあたりもポップ職人ジェフの手腕が大きい。ビートルズ的な音、だけど古臭くはない。だからこそ売れた。全英10位、全米8位。まさに劇的な復活。しかもSOMEWHERE IN ENGLANDと違って、話題性だけで売れたわけでもないわけだから・・・。

  とにかく捨て曲はない。両スピーカーに振り分けられたジョージとクラプトンのツイン・スライド・ギターの絡みが素晴らしい1.Cloud Nineにはじまり、ジェフ、ゲイリー・ライトとの共作で、もろELO風の2.That's What It Takes、A Hard Day's Nightの頃のビートルズを思わせるポップ・ロック3.Fish On The Sand、エルトン・ジョンのピアノが印象的な「IMAGINEの頃のジョン風」(ジョージ談)のバラード4.Just For Todayの4連発で一気に引き込まれてしまう。 ハイライトは「これまで避けてきた」ビートルズを真っ正面から歌った6.When We Was Fab。曲調はサイケ時代のビートルズを思わせるし、ドラムはリンゴだし、歌詞にビートルズ・ナンバーを連想させるフレーズが登場するし、プロモも凝ってるし、最後にはシタールの音まで登場・・・。この曲だけを語っても話題は尽きないほどである。マスコミを痛烈に批判した7.Devil's Radioは、攻撃的な歌詞といい、声が裏返るのも気にせずにシャウト気味に歌うボーカルといい、ビートルズ初期のジョンを思わせる部分がある。かと思えば8.Someplace ElseはGEORGE HARRISON以来の繊細でジョージらしいバラード。派手さはないけど、個人的にははじめて聴いた時からこのアルバム中No.1のフェイバリット・ナンバー。 そしてラストには久々の世界的シングル・ヒット11.Got My Mind Set On You(全英2位、全米1位)が控える。しかしこの曲、実はスタンダード・ナンバーのカバー。この辺は「ちょっと残念」とは思うけど、この曲をシングル・カットするように勧めたのが、当時9歳の息子ダニーだったという話を聞けば、逆に微笑ましく思われる。

  というわけで、GONE TROPPOで「もう終わった」とされて多くの人に見限られたジョージ、久々の、まさかの大ヒット作。内容、セールス、両面で「成功した」といえるのは、ALL THINGS MUST PASS以来かもしれない。実は私がビートルズを聴きはじめたのは、このアルバムの発表された1987年。ファンになったちょうどその頃、発表されたアルバムということになる。というより、ファンになって最初に出た「元ビートル」のアルバムがこれだった。当時の私は「ジョージは長年低迷していた」なんて全く知らなかったので、「へえ、さすがジョージ、まだ第一線で頑張ってるんだな」と思い、普通に聴き、普通に受け入れた。素晴らしい出来だと思ったし、繰り返し聴いていた。それなだけに、しばらくして 「実はこれが久々のヒットだった」と聞いた時は心底驚いた。それ程にこのアルバムでのジョージは「現役感覚」溢れていた。この年はビートルズの全アルバムCD化がはじまり、ちょっとしたビートルズ・ブームが起こった年である。だから、そのことが若干の追い風になったと考えることもできるかもしれない。だけど、同時期にポールが出したシングルOnce Upon A Long Agoの方はポールにしては低調に終わったことを思えば、この追い風がなくともジョージのこのアルバムは同様の成功を収めていたであろうということは容易に推測できる。発売当初は大絶賛されたアルバムだけど、「今聴くと80年代的なアレンジが古臭く感じられる」「ジェフの色が強すぎて本来のジョージらしさがない」、今ではそんな批判的な意見も目にすることがある。確かにGEORGE HARRISONなどに代表される本来のジョージらしい作風とは一味違っており、 それをもたらしたのがジェフであることは否定できない。ただし、だからといって、そのことがこのアルバムの完成度の高さ自体を否定する材料にはなり得ないはずである。

   アルバム好感度     90

                                                                   *:2004年4月11日UP


      
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