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| 私がビートルズ以来といってもよいほど、「寝ても、覚めても」なほどはまってしまった、北九州出身のバンド、ルースターズ。まさに現在進行形(2003年11月現在)ではまり、 聴き進めている状態。というわけで、彼らのアルバムを時代を追ってレビューしてみたいと思います。「熱いうちに語るルースターズ」といったところか。こちらをお読みいただきながらお付き合いいただければ、より私の「はまり加減」が分かっていただけるものと思います。 |
楽曲のクオリティも、デビュー・アルバムとは思えないほど高い。「俺はただお前とやりたいだけ」というフレーズが生々しい(近年も深夜のバラエティ番組でジングルとして使用されていた)2.恋をしようよ、モータウン風のリズムと、意外なほどポップなメロディに乗せて生々しいけど、切ない恋心を歌った10.どうしようもない恋の唄、 超高速のスカのリズムが強烈なデビュー・シングル(大江曰く「時代の先を行き過ぎていた」)12.ロージーの3曲のオリジナル曲の存在がその中でも飛び抜けており、カバーも多く生んだジャパニーズ・ロックのスタンダード。個人的には、オーティス・ラッシュのブルース・スタンダードHomeworkの改作5.フール・フォー・ユー、後の大江の運命を感じさせるような自虐的な歌詞を持った高速のR&R6.ハリー・アップ、 がなり立てるような大江のボーカルが強烈な11.気をつけろ、の3曲と共に、「ルースターズを知らないロック・ファンに聴かせたい曲」である。もう、この辺は私の「趣味のど真ん中」といえる曲ばかり。ラテン・ナンバーをガレージ・ロックに生まれ変わらせた(似たようなアレンジでヴェンチャーズもカバーしているが)インスト1.テキーラ、 エディ・コクランのR&Rを、コクランのようにスマートに演奏するのではなく、彼らならではのR&Bビート・ロック風に料理してみせた3.カモン・エヴリバディ、途中で生々しい日本語詞も織り交ぜたボ・ディドリー・ナンバー(ストーンズ経由のカバーと思われる)4.モナ、といったカバーの出来も日本のバンドとしてはハイレベル。日本のバンドがR&Rスタンダードをカバーした場合、得てして「寒い」「勘違いな」仕上がりになることが多いことを思えば、 こんなにもピッタリとはまっていること自体驚き。8.ドゥ・ザ・ブギーは、同じシーンの大先輩、サンハウスのカバーであり、間奏の大江と花田のギター・バトルも素晴らしい。 先に述べた通り、「めんたいロック」という言葉から連想される通りの音だが、やはり私には彼らは「北九州のバンドだなあ」と思える。サンハウス(=鮎川誠)らと比べると、ずっと田舎臭いし、洗練もされていない。無愛想、ぶっきらぼう、媚びたところもまるでなく、「近寄り難い」ほどの硬派さも感じる。事実、ジャケットに写る4人の姿も、全員がダークなスーツ姿。笑顔はなく、カメラを睨み付けている。大江に至っては眉も剃っているし、 「下手に近寄っただけで、ぶん殴られそう」なほどの殺気すら感られ、「女子供は近づくんじゃねえ」といわんばかり。でも「熱く」はなく、ひたすらクール、だからより近づき難い。音はひたすらモノクローム。「近寄り難さ」と「硬派な雰囲気」が、音、ジャケット、バンドの持つ空気など、すべてから発散されている。だけど、最近のTHE DIGのインタビューで、ベースの井上が「デビュー時はいきがって『好きな服は特攻服』なんて書いてたけど、実はそんなもの一着も持ってなかった(笑)」と告白している通り、 このイメージはある程度「作られた」部分もあったのかもしれない。「作られた」といっても、決して「誰かにイメージを押し付けられた」とかじゃない。私も同郷人だからよく分かるんだけど、東京に対するコンプレックスと、対抗心からきたものではなかったのだろうか。デビューが決まった、東京に出る、怖い、不安だ。それをかき消そうとする時、思わず強く見せようとしてしまう。特に、全国的にもガラのよくない部類に入るとされる街・北九州、そんな街に生まれ育った我々には「強く見せること=悪っぽく見せること」という発想が無意識に働くし、生まれつき、そういう本能が備わっている。 だからこそ彼らはここで硬派に振る舞った、しかも無意識のうちに。その北九州人独特の本能が生み出したイメージ、サウンド、それがこのアルバムに集約されているように思える。まさに「北九州人にしか生み得ないR&R」だった。 しかし、デビュー作にして既にビート・バンドとしては完成の域に達している、それほどレベルが高いアルバムであることに変わりはない。我々が「ルースターズ」と聞いて、真っ先に思い浮かべるのは、まさにこのデビュー・アルバムの彼らであり、ハイロウズ、ミッシェルガン・エレファントら、多くのフォローワーがリスペクトしてやまないのも、デビュー盤における彼らであることは疑いようもない。 *アルバム好感度 100
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アルバムは前作同様、サーフ・インストのスタンダード1.Radio 上海〜Wipe Outからはじまるが、ダブにアレンジされており、「前とは違うぞ」という気分にさせられる。そしてコニー・フランシスでお馴染み(いや、同郷の北九州出身の先輩、中尾ミエを意識した?)のオールディーズ・スタンダード2.カラーに口紅、と続く。「オールディーズ調で明るい」のはカバーだけじゃない。続く大江作品の3.One More Kissも、 オールディーズ風ポップ。さらに「パンキッシュでハードだけど、明るくてポップなR&R」といったイメージの4.Sitting On The Fence、7.Fade Awayなどは、どことなく中期以降のブルーハーツ、ジュンスカなど、80年代末の「バンド・ブーム」期のバンドがやっても不思議がないようなナンバーで、この辺も「時代が早すぎたのかなあ」という気がしてしまう。前者の曲など、あの時代に発表されていたら大ヒットしてるはず。歌詞はビーチボーイズのIn My Roomなどに通じる、内省的なものだし、逆に大江の歌いっぷりがクールな分、決して能天気にはならないバランス感覚も失ってないけど。 さらに彼らにとって、はじめてのバラード5.Girl Friendも文句のつけようのない佳曲で、大江がはじめて「繊細さ」を露呈したナンバーともいえる。一方で、高速シャッフルR&R(ストーンズのRip This Joint風)6.Dissatisfaction、サンハウス→シナロケのカバー(鮎川のボーカル・ナンバーとして有名)8.Bacillus Capsule、ヤードバーズ経由でボ・ディドリー・ナンバーをカバーした10.I'm A Manなどでは、 前作と変わらない「硬派」な一面を見せ付けている。 というわけで、前作よりもポップでカラフルになったイメージは受けるものの、そこはやはり「ルーツ=ブルースやR&B」をしっかり持ったバンドだから、決して単なる「アイドル・ロック」には成り下がっていないし、5.Girl Friedのような曲をやっても甘くはならないあたりも「さすが北九州人」と思わざるを得ない。とはいえ、決して彼らは「変わった」のではないと私は思ってる。もともと彼らには、 前作のような硬派でモノクロームなビート・バンドという一面はあっただろうけど、それとは逆の、オールディーズ経由のポップな側面もまた持っていたはず。でも、ファーストでは敢えて後者の部分を封印、2枚目で一気にその部分を表現した、そういうことではないだろうか。決して「世の中に媚びを売って」路線変更したというわけではないと思う。しかしこうして打ち出した「アイドル路線」も、次作ではあっさり捨て去ってしまう。いや、捨てざるを得なかったのかも・・・。 最後に、大江のボーカル、前作のような「がなる」スタイルは影を潜め、随分弱々しくなったような印象を受けるが、実はこっちの方が彼本来の姿だったと考えた方がよいのではないか、ジャケ写のルックスと同様に・・・。とはいえ、クールさを失わない、だから決して能天気にはならず、ルースターズ特有の緊張感も失っていない。 *アルバム好感度 100
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先も述べた通り、A面はストレートなR&Rが並ぶ。1.Let's Rockは、この時代の彼らの代表曲。後のブルーハーツの「キスして欲しい」に酷似しているような気がするのは、気のせいか(笑)。まさに80年代後半のバンド・ブームを先取りにしたような縦乗りパンキッシュ・ナンバー。ここでは英語詞だが、シングルでは日本語詞。その日本語バージョンは歌詞に問題があるとして発売禁止→歌詞差し替えが行われたことでも知られている。 2.We Wanna Get Everythingもまた、英語詞によるパンキッシュ・ナンバーだが、こっちはそれほどポップではなく、変則的で先鋭的なリズムを伴って攻撃的な仕上がり。池畑の激しく、手数の多いドラムが素晴らしい。3.Baby Sitter(初の井上の作品)、4.All Night Longは、ポップでストレートなR&R。そして、このアルバムのポイントはやはりB面。 6.Case Of Insanityは、60年代のフォーク・ロックを思わせるメロディアスなバラード。彼らのバラードとしては最高傑作といわれ、人気の高いナンバーだが、歌詞は内省的(英語詞)で、後の大江の「迷走」を思わせるものがあるし、決して「美しい曲」というより、ヒリヒリと凍てつくような「冷たさ」を感じるナンバーに仕上がっている。また、井上の弾くキーボードも印象的。しかし、もっと衝撃的なのが、ラストに収められた7.In Deep Grief。コンパクトな作品の多い彼らには珍しい、 9分という長尺ナンバーで、無機質なビート、引きつった金属音のようなギター、大江の陰鬱で沈み込むようなボーカルと、まるでP.I.L.、エコー&ザ・バニーメン、ジョイ・ディヴィジョン→ニュー・オーダーあたりを思わせるような、暗いトーンのニューウェイヴ・サイケ。きっと、当時のファンは????状態だったのではないだろうか。大江が精神を病み、最初に活動停止するのは、このアルバム発表から約1年後のことだけど、既にこの頃から兆候はあったのでは? と思わずにいられない。 ビートルズをファーストから順にアルバムを買い揃え、REVOLVERのラストTomorrow Never Knowsをはじめて聴いて味わう感覚、それに近い衝撃といえる。しかも彼らの場合は、デビューからわずか1年なのに・・・。 というわけで、曲数は少ないが、これから先の大江の「変化」「迷走」の兆候が垣間見えるという点では、重要なターニング・ポイントとなるアルバム。事実、ジャケットの大江の表情、目が気になる。ファーストのあの、睨みを利かせた鋭い目からは何光年も離れてるような気がするけど、本当にわずか1年後なんだから・・・。大江の激変ばかりがクローズ・アップされるが、自作曲を提供、6.Case Of Insanityでサウンドの核になるキーボードを弾くなどの、 井上の成長にも注目したい。バンドのNo.2で、後期にはリーダーの座に収まることになる花田よりも貢献度が高いんだから。しかし、ハードな曲にしろ、アバンギャルドな曲にしろ、ここまで攻撃的で野心的な音、姿勢を示したバンドが当時の日本に他にいただろうか? *アルバム好感度 90
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*:2003年11月6日、MY CD COLLECTION内にUP
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