JAPANESE ROCK

私の地元・福岡出身のバンドを中心にしたジャパニーズ・ロック・レビュー
(注:このコンテンツでは敬称は略させていただいています)
      
トップへ
トップ・ページに戻る
リストへ
前のページに戻る

第3回:GOOD DREAMSーTHE ROOSTERZ[S](2)
  (はじめに)サード・アルバムINSANE発表(1981年11月)後もルースターズは活発なライブ活動を行い、1982年にはレコーディングも開始。しかしそんな1982年9月、大江慎也が体調を壊し、さらにその後、遂に精神不安定に陥って故郷の北九州に帰郷してしまった。 このため、ルースターズは長期間の活動停止を余儀なくされる。この間、大江が「離脱」する直前にレコーディングされた作品を集めたIN NURNBERG(ニュールンベルグでささやいて、1982年10月発売)とC.M.C.(1983年7月発売)という2枚のミニ・アルバムが発売されている。ともに4曲入りだったこともあってか、CD時代になって以降、この2枚の収録曲は、この後発売されたアルバムの ボーナス・トラックとして無理矢理に「付け足し」程度の形でリリースされることが多くなっており、しかも2003年に発表された最新の紙ジャケ盤リリースの際には、これら8曲は無視されてしまった(2004年のボックス・セットには収録)。とはいえ、これら8曲は「ビート・バンドから、ニューウェイヴ・サイケ風サウンドへ」と、ルースターズのサウンドが大きく変化する瞬間を捉えた、 超重要な作品ばかりである。よって、実はこの2枚に収録された8曲を無視してルースターズを語るのは本来なら不可能といってもよい。

  中でも最も重要なのが、IN NURNBERG(ニュールンベルグでささやいて)のタイトル曲。大胆にブラス・セクションを導入したファンク・ナンバーだけど、いわゆるホンモノのファンクのような「暑苦しさ」は皆無で、当時のイギリスのニュー・ウェイヴ勢がやっていたような、クールで無機質、かつパンク的な粗暴な要素もブレンドした、ザ・ポップ・グループのようなサウンドであり、 楽曲自体の完成度、野心性では、全ルースターズ・ナンバーでも群を抜くものがある。「オリジナル・(フル・)アルバムに沿って」ルースターズの歴史を辿ると、当然この曲は無視されてしまうわけだけど、INSANEがあって、その後にこの曲があったからこそ、次作DIS.が登場するんだということが理解できる。この曲を経ずに、INSANE→DIS.と聴き進めると、 きっと「唐突」という印象しか受けないだろう。とにかく、今はこの2枚に収録された8曲を、まともな形でリリースして欲しいと願っている。

  大江慎也は1983年6月になって、ようやく復帰。しかしその直後に池畑潤二(d)が脱退し、下山淳(lead・g)、灘友正幸(d)、そしてスタッフとしてライブやレコーディングでサポートしていた安藤広一(key)が加入(下山の加入で大江はボーカルに専念)するという大きなメンバー・チェンジが。大江は復帰したものの、 以降のルースターズは、さらなる混迷の道を辿ることになる。


DIS.
収録曲
1.She Broke My Heart's Edge、2.I'm Swayin' In The Air、3.She Made Me Cry、 4.Desire、5.Sad Song、 6.風の中に消えた、7.夜に濡れたい、8.Je Suis Le Vent

BONUS TRACKS:9.Sad Song [Winter Version]、10.Heart's Edge [Remix Version]、11.撃沈魚雷、12.バリウム・ピルズ       

      

      

 

 
発売1983年
メンバー大江慎也(vo,g)
花田裕之(g)
下山淳(g,b:1〜10.)
井上富雄(b,syn)
灘友正幸(d:1〜10.)
安藤広一(key,syn:1〜10.)
池畑潤二(d:11,12)
プロデューサー柏木省三
手持ちのCDCOCP-50261(コロムビア)
購入2003年11月
  大江慎也の復帰、メンバーの交代後に発表された新生ルースターズ最初のアルバム。前作INSANEのラスト2曲や、大江の療養中に発表された2枚のミニ・アルバムでも垣間見せたサウンドの変化が更に進み、ここでは初期のR&B系ビート・バンドの片鱗は微塵も感じられない。 大江の精神不安定によって、歌詞は内省的かつ、夢遊病者のような夢見心地なものになり、そうした歌詞がすっかり弱々しくなった大江のボーカルによって歌われる。そしてそれをニューウェイヴ経由のサイケ風幻想的サウンドがバック・アップするというスタイルは、同時代の日本はおろか、欧米にも見られなかった唯一無二のものであり、 まさにこの時代のルースターズだけが作り得たアルバムといっても過言ではないだろう。

  アルバムは大江作詞、花田作曲のアグレッシヴなニューウェイヴ風ナンバー1.She Broke My Heart's Edgeからスタート。その後もINSANE収録のCase Of Insanityを更にアーティスティックにしたような、フォーク・ロック風の2.I'm Saying In The Air、2本のギターと安藤のシンセがサイケかつ、 壮大で幻想的な音を奏でる大作3.She Made Me Cryと、完成度が高く、しかも幻想的なナンバーが続く。軽いスカ・ナンバーの4.Desireは「小休止」といったところだが、それに続いて中期の代表曲5.Sad Songが登場する。大江の弱々しいボーカルに乗せて、不気味でシュールな歌詞が歌い込まれているが、 これは当時大江が見た夢か、または幻想の世界をそのまま歌われたものと思われ、その歌詞だけでも十分注目されるところ。そして、それに乗せてサイケっぽいフレーズ、さらには東洋的なフレーズなどを多用して、幻想的なムードを盛り上げている新加入の下山のギターが光る。シド・バレット、フランク・ザッパ、トッド・ラングレンらのフォローワーで、 エキセントリックなギター・スタイルを持つ彼の加入は、初期ビート期を好む人の間であまり受けがよくないみたいだけど、この時期の大江の作風の変化を思えば、彼の加入は絶妙のタイミングだったんじゃないかと個人的には思ってる。アルバム後半は、この後も作詞面でルースターズに関わる機会が多くなる元サンハウスの柴山俊之作詞、花田作曲の6.風の中に消えた、 柴山作詞、井上作曲の7.夜に濡れたい、といった淡々とした曲調のナンバーが続くが、どちらも大江の弱々しいボーカルがいい味を出していて、なかなか味わい深い仕上がりである。エンディングの8.JE SUIS LE VENTは花田&下山作曲の幻想的な曲調のインストだけど、それに乗せて大江がフランス語でポエトリー・リーディングを展開するという実験的な作品である。

  ちなみに、私が持ってるCDは2000年発売の限定盤紙ジャケで、これには現行のCDには収録されていないボーナス・トラックが収録されている。9.Sad Song [Winter Version]は5.の、10.SHE BROKE MY HEART'S EDGE(Remix Version)は1.の別バージョン。共にアルバム・バージョンよりラフだけど、 個人的にはこっちの別バージョンの方が好き。残る11.撃沈魚雷、12.バリウム・ピルズはミニ・アルバム「ニュールンベルグでささやいて」に収録されていたナンバーで、前者は強烈なボ・ディドリー・ビートを持ったアグレッシブなR&Rナンバーで、ライブで頻繁に演奏された人気曲。後者は大江が自身の精神治療を歌った自虐的で不気味なナンバーで、サウンドはロカビリーとテクノが融合したようなユニークなもの。 もちろん、この2曲は大江の「一時離脱→活動休止」前のレコーディングだから、ドラムは脱退した池畑。前者のアグレッシブな彼のドラミングを聴くと、本当に彼の脱退は残念に思える。

  というわけで、大江の「迷走」とメンバー交代によって、全く異なるバンドとして生まれ変わったルースターズ。発表当初は賛否両論、初期のファンの多くが彼らから離れていってしまったそうだが、一方でニューウェイヴなどを支持するファンに「日本にもこんなバンドがいたとは!」と高い支持を受けることになった。事実、日本はもちろん、欧米にもこんな世界を作り上げたバンドは皆無であり、そのクオリティの高さと独自性は、もっと評価されて然るべきだと思う。 個人的にはビート期の彼らの方が好きだというのが偽らざる事実だが、この完成度の高さと独自性には驚かされるものがある。
   アルバム好感度     90


GOOD DREAMS
収録曲
1.ゴミ、2.Good Dreams、3.C.M.C. [Health Mix]、 4.Hard Rain、5.Drive All Night [Club Mix]、 6.Nurnberg (ニュールンベルグでささやいて:Health Mix)、7.カレドニア[Re-Mix]、8.All Alone

      

      

      

 

 
発売1984年
メンバー大江慎也(vo:1〜4,6〜8.)
花田裕之(g,vo)
下山淳(g,b:2〜6,8.)
井上富雄(b:1〜4,6〜8.)
灘友正幸(d:2,4,8.)
安藤広一(key,syn:2〜4,6,8.)
池畑潤二(d:1,3,6,7.)
プロデューサー柏木省三
手持ちのCDCOCP-50756(コロムビア)
購入2003年12月
  今ではオリジナル・アルバムとして扱われているものの、実は企画盤的色の濃いアルバム。実際、新曲の2,4,8の他、大江離脱中に発表された2枚のミニ・アルバム収録曲のリミックス・テイクの3,5〜7、そして大江離脱前の1982年のセッションでレコーディングされながら未発表だった1と、 様々な時期のナンバーを寄せ集めることによって構成されており、メンバーも曲によってバラバラ、時代もバラバラ。ただし、大江が迷走を繰り返していた時期に録音されたテイク、しかもそうした色の濃い作品が多いこともあってか、それなりに統一感はあり、聴いていて違和感はあまりない。

  まず先も述べた通り、3,5〜7.は大江離脱中発表の2枚のミニ・アルバム収録曲の別ミックス。6.ニュールンベルグでささやいて、はオリジナル・バージョンから大胆にホーン・セクションをカットして、新たに下山のエキセントリックなギターと安藤のシンセを加えたものだが、 このことによってオリジナル・バージョンにあった「ファンクとニュー・ウェイヴの融合」という大胆さが半減、普通のニュー・ウェイヴになってしまったという想いが強く、あまりよい印象はない。一方でこの時代の代表作であり、ラモーンズ風能天気系パンクの3.C.M.C.は、飛行機の音などのSEや下山のギターが加えられることによって、 より曲の魅力が増していると思う。初の花田のボーカル曲(ライブでは彼の歌うレパートリーもあったけど、レコードでは初)でエリオット・マーフィーのカバーでもある5.Drive All Nightも打ち込みの音(ドラムレス)がより小さくなっており、これもよいと思う。しかし「飛んでいく〜」などと夢見心地な歌詞を、大江がフニャフニャな声で歌う7.カレドニア、はどう手を加えられても変わることのない、 本当に不気味な空気に彩られていて、何度聴いても気持ち悪くなる(褒め言葉)。一方で新曲のうち、一際目を引くのが2.Good Dreams。歌詞にある通り、大江の「ファンタスティック・ワールド」の炸裂した歌詞が素晴らしく、大江の「夢見心地系」の歌詞としては最高傑作ではないだろうか。「君はこの夜を素敵に彩らないかい?」「君はこの街を美しく塗り込まないかい?」というシュールな問いかけなど、 もはや「歌詞」というレベルを大きく超えた、文学作品としての「詩」の世界でも通用しそうなフレーズが多用されていて、大江の「迷走」がプラスに働いたからこそ生み得た大傑作だと思う。安藤のシンセ、下山のギターがその歌詞を歌う大江をきっちりサポートしているあたりも光る。ラストに収められた8.All Aloneはタイトルこそ変更されているが、実はサンハウスの名バラード「ふっと一息」のカバー。 叙情的な歌詞(柴山俊之作詞)を朴訥とした低音で渋く歌っていたサンハウスの柴山俊之と対照的に、大江の夢見心地なボーカルで歌われるこのテイクも悪くない。ソロ以降の大江、花田、そして柴山と、各人がレパートリーに加えており、「福岡ロック」を代表するバラードといえるかもしれない。

  というわけで、企画盤とはいえ、聴きどころ、重要なテイクは多いので、絶対に無視できないアルバムである。ただ、個人的に残念なのは「ニュールンベルグでささやいて」はオリジナル・バージョンを収めて欲しかったということ。そして、それ以上に残念なのは、1982年の大江一時離脱直前にレコーディングされた曲1,3,5〜7に、やはりこの時期発表のミニ・アルバムに収録された「撃沈魚雷」「バリウム・ピルズ」、 そしてこの時期にレコーディングされながらも未発表に終わったという数曲を加えてオリジナル・アルバムが出せていたら、きっと凄い名盤が出来上がっていたに違いないと思われること。大江の一時離脱さえなければ実現してただろうに・・・。そして1984年=このアルバム発表時、2.Good Dreamsという名曲を生みながらも、復帰後も大江の調子がよくならず、結局は1枚のアルバムとしてまとめあげるだけの楽曲を揃えることが出来なかった。それがために、過去のテイクを掘り起こして、 それらと抱き合わせることで、強引にこの編集盤を発表せざるを得なかった。それがこのアルバムが登場した経緯だと私は推測している。このアルバムを企画したのはマネージャー兼プロデューサーの柏木省三。このアルバムを強引に生み出した彼に対して、近年では一部にバッシングする向きもあるけど、私は「仕方なかった」と思える。確かに「こうすればもっとよくなった」等の不満もある、だけど2枚のミニ・アルバムが未CD化状態の今、 手軽に(別ミックスとはいえ)「ニュールンベルグでささやいて」とC.M.C.という中期の超重要曲が聴け、傑作ナンバーGood Dreamが聴けることは、それなりに有り難いことである。なお、このアルバムからバンド名をThe RoostersからThe Roosterzに改めている。

   アルバム好感度     80


Φ (PHY)
収録曲
1.Venus、2.Come On、3.Down Down、 4.Heavy Wavy、5.Broken Heart、 6.Femme Fatale、7.Street In The Darkness、8.Message From・・・Come On, Love My Girl、9.Last Soul、10.Music From Original Motion Picture "Punishment"

BONUS TRACKS:11.Come On To Me [Live]、12.I'll Be Eyes [Live]、13.Femme Fatale、14.Tonight [Live]       

      

      

      

 

 
発売1984年
メンバー大江慎也(vo:1〜5,7〜9,11,12,14.)
花田裕之(g,vo)
下山淳(g,b)
灘友正幸(d)
安藤広一(key,syn)
柞山一彦(b:11〜14.)
参加ミュージシャン柴山俊之(bvo:3.)
プロデューサー柏木省三
手持ちのCDCOCP-50263(コロムビア)
購入2004年1月
  大江慎也在籍時最後となってしまったアルバム。前作発表直前、オリジナル・ベーシストの井上富雄が脱退(元祖渋谷系バンド、ブルー・トニックを結成)、後任にニュースを聞いてオーディションを受けに押しかけて来た柞山一彦が加入しているが、 彼はレコーディングには参加せず、ここでは下山がベースを兼務している。大江の状態はその後もよくならず、ステージ上で突然棒立ちになったりで進行がままならないことも多く、そのことに苛立った花田がステージを降りる際にギターを放り投げるなどの事件も発生、バンド内は相変わらずガタついていた。そんな中レコーディングが開始されたものの、大江が姿を現わさない日があったり、歌入れの際にも「1日1行の歌詞を歌うのが精一杯」の日があったりで一向に進まず、下山が露骨に不快感を表わすことも多かったらしい。 とはいえ、このアルバムを聴く限りではそんな混迷の跡は感じられず、DIS.で完成させた中期ルースターズ・サウンドを更に高めることに成功、隅々にまで「夢見心地で幻想的」な空気が散りばめられ、見事なほどに構築されたサウンドを聴かせてくれる。

  アルバムは柴山俊之作詞、花田作曲の大作1.Venusからスタートする。Good Dreamsの延長線にあるような夢見心地な世界が展開され、幻想的な安藤のシンセと下山のギターの絡む長いイントロといい、途中のブレイクといい、まさに「計算され尽した」サウンド。この曲は当時オーディオのCMソングとしても使われたそうで、確かにサビの「1,2,3,4 go go in the sky、誰もまだ行ったことがない」のフレーズは聴き覚えがある。 続く2.Come Onは、なんとこのアルバム唯一の大江の単独作品で、一見普通のブギー調のR&Rのようでありながら、単語を並べてしゃべってるだけのような掴みどころのないボーカルを聞かせていて、一筋縄ではいかない。大江のソング・ライティング面での貢献が少なくなった分、ここへ来て下山の貢献度がアップしている。4.Heavy Wavyは大江作詞、下山作曲だが、下山のシド・バレット好きがよく現れていて、 幻想的かつ、つんのめったようなビートを持ったエキセントリックなサウンドに「僕と君とユニコーン、ファンファン、ファンファン」などという夢心地の大江のシュールな歌詞が上手くマッチしている。9.Last Soulも大江作詞、下山作曲で、こちらは美しい歌詞とメロディを持ったナンバーで、安藤のメロトロン風のシンセによるサポートも光る。結局、下山が本領を発揮しはじめるのは本作からで、大江と下山のコラボレイトは本作でしか聴くことが出来なかったけど、 意外と大江の歌詞の世界と下山の生み出すサウンドは相性がよかったのでは? とも思えるし、もっと2人の絡みを聴きたかった。熱心な「大江信者」ほど下山を悪く言う傾向があるけど・・・。一方で花田も柴山俊之作詞の3.Down Down、ヴェルヴェット・アンダーグランドの名盤、ファースト収録曲のカバー1.Femme Fatale(宿命の女)でボーカルをとり、ポップな隠れた名曲8.Message From・・・・・Come On, Love My Girlを作曲(作詞は柴山俊之)するなど、 大江を除くとただひとりのオリジナル・メンバーとなってしまったわけだけど、その存在感を示している。そして「全体をフラワー・パワーの頃のようなムードで統一する」ことをコンセプトにプロデューサーの柏木省三と相談の上、全曲にメロトロンやストリングス風のシンセをダビングしたという安藤の貢献も忘れてはいけない。

  というわけで、完成度は高く、一切の隙が見当たらないほど構築され尽した大傑作。おそらく音楽的完成度の高さなら、ルースターズの全アルバムの中でも群を抜いている。ただし、そのことによって「ロック的」な感覚が薄れてしまっているのは事実。それは大江の「迷走」が更に進み、満足なレコーディングが行えなくなったために、花田&下山に、詞を提供した柴山俊之の3人で曲を作り、安藤とプロデューサーの柏木省三がアルバムのトータル・コンセプトやイメージを作り上げることで、 最初に「舞台」を作り、大江はその、あらかじめ用意された舞台の上で「大江慎也」を演じてみせている、そんな形でこのアルバムが制作されたからに他ならないだろう。ただし、そのために弊害もあるのは事実で、私には「大江の顔が見えないアルバム」という感が否めない。確かに柴山俊之は、大江のキャラにピッタリの「ファンタスティック・ワールド」な素晴らしい歌詞を提供しているんだけど、 それはSad SongやGood Dreamsのように、大江自身の言葉で歌われている歌ではない。大江のキャラにピッタリな「ファンタスティック・ワールド」なサウンドを構築した花田、下山、安藤、だけどそれは大江自身の生み出した世界ではない。このことは残念ながら否定できない。もちろん、ここで展開されている世界は「大江ならではの世界」なんだけど、大江自身で生み出した世界ではないのである。そのことで「大江色」が薄い、大江は「歌わされている」とどうしても映ってしまうんだけど、こうでもしなければバンドを維持することが出来なかった、 そしてそんな中でこれだけの傑作を生み出した、そのことは称賛に値する。

  私の持っているのは2000年発表の限定盤紙ジャケ、これにはボーナス・トラックとして、ライブ・バージョンの11〜14.が収録されているが、ここには新ベーシスト柞山が参加している。なお、アルバム発表後の1985年3月、安藤が脱退(プロデューサーに転身)。そして同月、またも精神のバランスを崩して入院した大江は同年8月、遂にルースターズを脱退。ひとつの時代が終わる。ソロ独立後の大江は入退院、バンドの結成と解散を繰り返しながらソロ活動を続けていたが、1991年にまたしても精神のバランスを崩して以降は地元に帰って隠居状態となり、いつしか「幻のロッカー」と呼ばれるようになってしまった。 彼が再び表舞台に帰ってくるまでには、2003年まで待たねばならなかった。

   アルバム好感度     80

                                                                   *:2004年2月14日UP


      
トップへ
トップ・ページに戻る
リストへ
前のページに戻る