JOHN LENNON ALBUM GUIDE

第3回

      
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ROCK 'N' ROLL
収録曲
1.Be-Bop-A-Lula、2.Stand By Me、3.Medley:Rip It Up / Ready Teddy、4.You Can't Catch Me、5.Ain't That A Shame、 6.Do You Want To Dance(踊ろよベイビー)、7.Sweet Little Sixteen、8.Slippin' And Slidin'、9.Peggy Sue、10.Medley:Bring It On Home To Me(悲しき叫び) / Send Me Some Lovin'、11.Bony Moronie、12.Ya Ya、13.Just Because       

  

 

 

 

      
発売日1975.2.17(米)
プロデューサージョン・レノン(1〜3,5,6,8〜10,12)
フィル・スペクター(4,7,11,13)
レコーディング73.10〜12.(4,7,11,13)
74.10.(1〜3,5,6,8〜10,12)
参加が予想されるミュージシャンエルトン・ジョン(vo,p:10他)、ジェシ・エド・デイヴィス(g:1,2他)、レオン・ラッセル(p)、スティーヴ・クロッパー(g)、ジョニ・ミッチェル(bvo)、ホセ・フェリシアーノ(g)、ジム・ケルトナー(d)、ニッキー・ホプキンス(p)、ハル・ブレイン(d)、ニルソン(bvo)、クラウス・ヴアマン(b)、アーサー・ジェイキンス(per)、バリー・マン(bvo)、ニノ・テンポ(sax)、ジェフ・バリー(bvo)、ケン・アッシャー(key)、ジム・ホーン(sax)、ボビー・キーズ(sax)、リンゴ・スター?(d)、チャーリー・ワッツ?(d)、スティーヴィー・ワンダー??(p)、ポール・マッカートニー??????(p)
手持ちのCDCP32-5452(東芝EMI)
購入時期1989年初頭

  ジョンのディスコグラフィの中でも異彩を放つロックン・ロールのスタンダードのカバー・アルバム。しかし、その楽しい企画に反し、 レコーディング開始から発表までトラブル続きだったアルバムでもある。レコーディング開始は73年10月。しかし、当時のジョンが数々の裁判沙汰に巻き込まれ、ヨーコとの関係も悪化していた時期だったこともあり、 ジョンは連日酔っ払ってスタジオに現れており、精神的にも不安定。プロデューサーのフィル・スペクターの方も、夫人との別れ話もあって精神不安定。ということでセッションは思うように進まず、ついにはスペクターによる マスター・テープの持ち逃げにまで発展してしまい、レコーディングは中断してしまった。その後、74年になってこのテープはジョンのところに戻ってきたが、使えるテイクは少なかった。そこで、ジョンはWALLS AND BRIDGES完成後の 74年10月にもう一度セッションを行い、完成させた。完成後ジョンはマスター・テープをチャック・ベリーの著作権管理者に送っている。実はジョンは「Come Togetherはチャック・ベリーのYou Can't Catch Meのパクリだ」と訴えられ、 「ジョンがYou Can't Catch Meをカバーすること」でこの問題は解決しており、発表前に著作権管理者に聴かせようとしたものだ。ところが、そのテープをもとにした海賊盤、ROOTSが出回るという問題が生じたのである。ということで、このアルバムの発売が 75年4月から2月に早められるという事件まで引き起こしている。

  このように数々の問題はあったが、この手の企画盤としては極上の出来といってよいだろう。特徴としては、ブラスやストリングスを多用した分厚い音がバックを支配していることである。おそらく、当初スペクターがプロデュースしていたこともあり、 「70年代型Wall Of Sound」を目指していたんじゃないかと思われる。また、この手のアレンジはWALLS AND BRIDGESにも通じるところがある。これは、ロックン・ロールのカバー集にありがちな「ストレートでシンプルなバンド・サウンド」というカラーとは全く対極に 位置するといっても過言ではない。また、アレンジを大きく変えて、スウィング・ジャズ風に仕上げたチャック・ベリーの7.Sweet Little Sixteen、レゲエ風に仕上げたボビー・フリーマンの6:Do You Want To Danceのように「ストレートなロックン・ロール感覚」からは程遠い、オリジナルと 全く異なる解釈のテイクまである。こういうバックや解釈でロックン・ロールする(「ロックする」ではない!)と、ノリが悪くなって物足りないのが普通だけど、このアルバムは全然そんな感じじゃない。それはジョンのボーカルや彼のキャラに負うところが大きいだろう。 ジョンにとってロックン・ロールとは「喜び」や「悲しみ」、そうしたすべてをひっくるめた人生そのものというか、生き様なんだということだろう。そういう人のやる音楽は、スタイルがロックン・ロールじゃなくっても、すべてロックン・ロールになる。 そうした彼の「ロックン・ロール・スピリット」があればこそもたらされた結果だといってもよいのではないか。ポールを引き合いに出すのは嫌だけど、敢えて比較すると、ポールは「音楽のスタイルとしてのロックン・ロール」を追求しているところがあり、それを考えるとポールのRUN DEVIL RUNとこのアルバムの違いが分かるというものだ。 この辺は2人のキャラクターの違いであって、どっちがよい、悪いと言える問題ではないことは言うまでもない。

  収録曲の方を冷静に見ると、やはり精神的に不安定だったり、完成までに紆余曲折があったりした分、テイクごとの出来にばらつきがある。通して聴くと気にならないけど・・・。文句なく出来がよいのはやはりジーン・ヴィンセントの1:Be-Bop-A-Lula、オリジナルをも越える出来との評価があるのも言うまでもない ベン・E・キングの2:Stand By Me(全英30位、全米20位)、ブラス・アレンジや殺伐としたボーカルがピッタリはまったリトル・リチャードの3.Rip It Up/ Ready TeadyとSlippin' And Slidin'、バディ・ホリーの物真似ボーカルが効果的な9:Peggy Sue、殺伐としたエモーショナルなボーカルが胸に迫る「隠れた名唱」、サム・クック・メドレーの10:Bring It On Home To Me / Send Me Some Lovin'の出来がよい。 わざとCome Togetherぽいアレンジに仕上げた4.You Can't Catch Me、久々にラリー・ウィリアムズ・ナンバーを歌った11.Bony Moronie、最後に自らを「ドクター・ウィンストン・オー・ブギー(当時他のアーティストのセッションに参加する際にジョンが使った変名)」と紹介しつつ挨拶をしているロイド・プライスの13.Just Becauseあたりも聴きどころといえよう。 なお、セッション参加メンバーは一切クレジットされておらず、また、現在まで明らかにされていない。ジョンは「レオン・ラッセル他豪華メンバー」とだけコメント。ただ、73年のセッションにはハル・ブレインやバリー・マンらスペクター周辺人脈やホセ・フェリシアーノらが、74年のセッションにはWALLS AND BRIDGES参加メンバーやジョニ・ミッチェルが参加しているといわれている。 Stand By Meのギターがジェシ・エド・デイヴィス、Bring It On Home To Meを一緒に歌っているのがエルトン・ジョンであることは、クレジットがなくっても容易に分かるが・・・。リンゴ&チャーリー・ワッツ参加説もある。さらに、セッション中にポールが現れ、ジャム・セッションを行ったというエピソードもあるが、正規のレコーディングには参加していないよう。 ただ、「ジョンが参加メンバーを公表しなかったのは、ポールが参加してるからかも」とも推測できるわけで、このアルバムのセッションに関しては、もっと解明して欲しいと思う。全英10位、全米6位。

   アルバム好感度     100


DOUBLE FANTASY
収録曲
1.[ Just Like ] Starting Over、2.Kiss Kiss Kiss、3.Cleanup Time、4.Give Me Something、5.I'm Losing You、 6.I'm Moving On、7.Beautiful Boy [Darling Boy]、8.Watching The Wheels、9.I'm Your Angel(あなたのエンジェル)、10.Woman、11.Beautiful Boys、12.Dear Yoko(愛するヨーコ)、13.Every Man Has A Woman Who Loves Him(男は誰もが)、14.Hard Times Are Over(辛い時は去って)       

      

  

 

 

 

      
名義ジョン・レノン&ヨーコ・オノ
発売日1980.11.15.(米)
プロデューサージョン・レノン、ヨーコ・オノ、ジャック・ダグラス
レコーディング80.8〜9.
参加ミュージシャンヨーコ・オノ(vo:2,4,6,9,11,13,14)
アール・スリック(g)、ヒュー・マクラッケン(g)、トニー・レヴィン(b)、アンディ・ニューマーク(d)、ジョージ・スモール(key)、アーサー・ジェイキンス(per)
手持ちのCDTOCP-65528(東芝EMI)
購入時期1990年頃(一度97年売却、2000年にリマスター盤を再購入)

  75年10月9日、ジョンの35回目の誕生日に息子・ショーンが生まれると、ジョンは一切の音楽活動を停止、以降、主夫生活に入った。そんなジョンが5年ぶりに沈黙を破って復活を遂げた復帰作ヨーコとの連名名義で、2人の作品が交互に登場、「夫婦の対話」がコンセプトとなっている。しかし、復帰早々の80年12月8日、ジョンは凶弾に倒れ、結果的にこのアルバムが遺作となってしまった・・・。ちなみに、日本発売は12月5日だったそうで、日本では「復帰作」として楽しめた期間は、ほんの5日程度に過ぎなかった。

  特徴としては、70年代の作品と比べると、作風、サウンドとも、とにかく明るく前向きであること。70年代のジョンの作品に「明るさ」はなかったというのが、偽らざる事実なわけで・・・。 「復活」ということでジョンが晴れやかな気持ちを持ってレコーディングに臨んだことやバック・メンバーの変化が大きな要因といえよう。それ以上に、ここでのジョンには「大人」を感じる。 詞作、作風、ボーカルに攻撃的なイメージは薄く、落ち着いた、そして優しげな空気が全体を支配している。「大人になった元不良」とでもいったところか。復帰第一弾となったシングルで、再出発を告げる曲ともいえる1.Starting Over(全英1位、全米1位)のイントロの軽くて明るい鐘の音は、 JOHN LENNON / PLASTIC ONO BAND1曲目のMotherの重く、荘厳な鐘の音と対極に位置するし、ボーカルの方も転調に伴ってスタイルを次々に変える巧みな歌いっぷりが印象的。息子・ショーンに捧げた7.Beautiful Boy、「ヨーコとすべての女性に捧げた」という10.Woman(全英1位、全米2位)の作風とボーカルの優しさも、 これまで見られなかった新境地といえる。また、8.Watching The Wheels(全英30位、全米10位)は長く活動を停止し「怠け者だ」と批判されたことに対する反論を歌った曲。以前なら皮肉っぽい歌詞、殺伐としたボーカルで「反論」していただろうけど、ここでのジョンは実に大人。掃除をテーマ(といっても「心の掃除」)にした、主夫生活を思わせる3.Cleanup Time、バディ・ホリー風のボーカルの、ヨーコへのストレートなラブ・ソング12.Dear Yokoあたりも注目。 一方、ヨーコの作品も純粋な「歌」としては、これまでで一番充実している。ヨーコの作品をちゃんと受け止められるようになって日が浅いので多くは語らないけど、衝撃的な2.Kiss Kiss Kiss、レゲエを採り入れた13.Every Man Has A Woman Who Loves Himなどが注目だが、 ジャージーで小粋な9.I'm Your Angel、ドラマティックでメロディアスな14.Hard Times Are Overは悪くない。そうしたジョンの作品とヨーコの作品が交互に登場することで、「夫婦の対話」形式になっている。ジョンの5.I'm Losing Youに対してヨーコの6.I'm Moving On、ジョンのBeautiful BoyやWomanに対してヨーコの11.Beautiful Boys(複数になっているのはジョンとショーンに捧げたため)が登場するあたりにそれが顕著。 対話といっても、時には反発し合ったり、心を探り合ったりもする。「対話」といより、「夫婦生活」といった方が適切か。そのような内容なので、「ヨーコの曲を飛ばして」聴いてしまうと、意味を成さないアルバムになっているといっても過言ではない(笑)

    アルバムは「復帰作」、さらにすぐに「遺作」となってしまったことで全英、全米ともに1位という大ヒットとなり、以降も現在まで「ジョンの代表作のひとつ」といわれている。だけど・・・。以下、ちょっと異端な意見を述べさせていただくことを最初にお断りしておきます。 結局「復活作にして遺作」となったことで、このアルバムに対して冷静な目が向けることは、これまでなかったのでは? と、私は常々思ってきた。生前は「復帰作」という興奮、死後は「遺作」ということで神聖な扱い。これは趣味の問題だろうけど、ここで聴けるジョンの作品は私には優しすぎる。その優しさは嫌いじゃないし、魅力も感じる。 大人になった、それも分かる。だけど、これまでのジョンの作品にあった、尖がった感覚がほとんどないということ。一聴すると軟弱に思える作品にでも、これまではそうした感覚があったものだ。それが感じられないあたりに、私はちょっとだけ(本当にちょっとだけ)寂しさを覚える。だけど、この時期のアウト・テイクなどを聴くと、 自伝本を巡って当時対立していたジョージを皮肉ったRishi Kesh Song、キリスト教に入信したディランを皮肉ったServe Yourselfという曲があるので、ジョンが「刃(やいば)」を失くしてしまったというわけでもないようだ。ということは、このアルバムでは敢えてコンセプトに合わせて、優しげな作品だけを集めたということなのか、 いや、ひょっとすると、このアルバムは復帰第一弾だからと、敢えて「刃」を隠していたのか。ジョンのいない今、そして、次作を聴くことができない今となってはそのことは確かめようがないけど、もしそうなら、この後ジョンはどんな作品を聴かせてくれたのだろう? 興味深いとともに、無念・・・。そんなわけで、私の中ではこのアルバム、その「優しさ」ゆえに、「遺作」という点を除けば重要度はさほど高くはなく、「代表作」「傑作」という感覚は薄く、「平均的なジョンのアルバム」として接しているというのが偽らざる事実だ。リアル・タイム・ファンの方には怒られそうだけど・・・。

   アルバム好感度     70


MILK AND HONEY
収録曲
1.I'm Stepping Out、2.Sleepless Night、3.I Don't Wanna Face It、4.Don't Be Scared、5.Nobody Told Me、 6.O' Sanity、7.Borrowed Time、8.Your Hands、9.[Forgive Me] My Little Flower Princess、10.Let Me Count The Ways、11.Grow Old With Me、12.You're The One       

      

  

 

 

 

      
名義ジョン・レノン&ヨーコ・オノ
発売日1984.1.27.(英)
プロデューサージョン・レノン、ヨーコ・オノ
レコーディング80.8〜9(1〜9)
80.11(10,11)
83(12)
参加ミュージシャンヨーコ・オノ(vo:2,4,6,8,10,12)
アール・スリック(g)、ヒュー・マクラッケン(g)、トニー・レヴィン(b)、アンディ・ニューマーク(d)、ジョージ・スモール(key)、アーサー・ジェイキンス(per)
手持ちのCDPOCP-1884(ポリドール)
購入時期1990年頃

  ジョンの死から約3年が過ぎた84年1月、突然登場したジョンの「最後の新作」。実はジョンは亡くなる直前までDOUBLE FANTASYの次のアルバムのレコーディングを行っており、年明けの81年には発表する予定であった。ということで、これはヨーコがそのセッションで録られたテイクを集め、 それに自身の作品を集めて1枚のアルバムとしてまとめたもの。よって、このアルバム以降もジョンの未発表テイクや未発表曲は多く発掘されているけど、純粋に「最後の新作」といえるのは、このアルバムだといって過言ではないだろう。

  ジョンの作品はどれも未完成テイク。どの曲もone moreとか、gimme a breakなどとバック・メンバーに指示を出す声がそのまま入っているし、7.Borrowed Time(全英32位)に至っては、後からダビングする予定だったのだろう、ブラスやパーカッションの口真似をする声までが入っている。 それゆえに完成度が低く散漫な印象は拭えないし、初心者が聴くと、「何、これ」と思うかもしれない。だけど、曲の出来自体はかなりよいと思う。「家事を終わらせ、子供を寝かしつけた後、街へ繰り出す」、いわば「不良主夫」を歌った1.I'm Stepping Out(シングル・カットもヒットせず)、痛烈な皮肉を歌いつつ、2コーラス目では 自分のことすら皮肉ってみせる攻撃的な作風と歌詞の3.I Don't Wanna Face It、ポップでストレートな5.Nobody Told Me(全英6位、全米5位)の3曲はDOUBLE FANTASY収録曲に何ら引けを取らない。そして何といっても、11.Grow Old With Me。ヨーコへ捧げた歌詞が秀逸な、美しくも荘厳なバラード。ここに収められているのは、家庭用テープ・レコーダーに吹き込まれた、 ピアノのみのデモ・テイクだが、もしも完成させて発表していたなら、一躍ジョンの代表曲になっていたこと間違いなし。ジョンは「ストリングスを入れて讃美歌のようにしよう。きっと結婚式の定番曲になるはずだ」と言っていたらしい。98年発表のANTHOLOGYには、ジョンのその願いをジョージ・マーティンがかなえたテイクが収録されたが、 それもなかなかの出来。だけど、このデモ・バージョンも捨て難い。ヨーコの作品はDOUBLE FANTASYを踏襲したものが中心だが、ニュー・ウェイヴをもとり入れるなど充実はしている。なお、12.You're The Oneのみ83年のレコーディングである。

 とにかく、ジョンの作品に関しては未完成なので、DOUBLE FANTASYと完成度を比較することはでようはずもない。事実、世間ではそんなに評価は高くないようだ。だけど、正直に言うと、収録曲の作風自体は、私はこっちの方が断然好きだ。Grow Old With Meは多くのファンに人気がある反面、他はそうでもないみたいだけど、 私はI'm Stepping Outにおけるジョンの不良っぽさが微笑ましく思えるし、I Don't Wanna Face Itに、前作で見えてこなかった「尖がったジョン」が感じられて嬉しくなった。また、この2曲の作風やボーカルに感じるロック色の濃さも嬉しかった。だから、もしもちゃんと完成させて発表されていたならば、私はDOUBLE FANTASYよりもむしろ、こっちの方が気に入っていたかもしれない。 未完成テイクばかりのこの状態で聴いたって大好きな私なんだから・・・。全英3位、全米11位。

   アルバム好感度     80

                                                                   *:2000年11月26日UP


      
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