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ここからはしばらくニューウェイヴ、パブ・ロック勢が続く。まずはネオ・スカ・ブームの立役者、スペシャルズから。私自身はこの映像で唯一、全くアルバムを持ってないバンドでもある。スカ自体が馴染みのない音楽だから、ってのが手が出ない理由だけど、パンクと融合させることで現代(1979年時点)にスカを蘇らせたバンド。
コミカルなコーラスに合わせて、妙なダンスを見せながら、白人(テリー・ホール)と黒人(ネヴィル・ステイプルズ)のボーカリストが歌っている。黒人と白人の混成バンドというのも面白いし、黒人のボーカリストはコミカルなのに、白人の方はネオ・モッズみたいなスタイリッシュなファッション。いかにも「雑食」なサウンドのバンドらしい。確かにスカといっても、演奏はパンクのように尖がっている。やがて黒人のボーカリストの方は、ステージに上から垂れ下がっている縄を伝わってスルスルと昇りながら歌い続ける。最後にアンプの上に降り、
さらにそのアンプの上から飛び降りる。最後は猿のようなコミカルな動き。音は結構尖がっていて、でもコミカルで、なかなか面白いバンドだとは思うし、会場も沸いている。続いてエルヴィス・コステロ&アトラクションズ。コステロ、とにかく若く、痩せているのが印象的。さらに尖がってる。黒ブチメガネにスーツのいでたちなのに、目が鋭くって、見るからに攻撃的で。そういう意味でも若い。さらにThe Inposterも直線的で早口で捲し立てるようなパンキッシュなナンバーなので、 音の方も尖がってる。そしてそれをガッチリ支えるアトラクションズ。やっぱり、コステロはこうでないと。
2曲目は彼の代表曲ともいえるダンサブルなHit Me With Your Rythm Stick。ミック・ジョーンズはステージから消えており、デヴィッド・ペインが2本のサックスを同時に吹く「芸」も見せている。しかし妙な編集がなされているようで、そのサックス・ソロの後、突然画像が切り替わるのが残念。とはいえ、会場は大歓声に包まれている。どう考えても大会場には不似合いな、パブの臭いを最も強く感じさせる彼のパフォーマンスで、大会場が沸いているという光景は面白いし、一方でコステロやロックパイルらとのパッケージ・ショー、スティッフ・ツアーの中でも常にコステロとヘッドライナー争いを演じ(そして勝っていた)、 イギリス全土を最も沸かせていたという彼のパフォーマンス、その凄さは確かにこの映像からも伝わる。ビッグ・ネームとはいえない彼、でも彼への歓声は、ポールへの歓声に決して負けていない。この映像を見た直後、私は速攻で彼の2枚組アンソロジーを手に入れた。ぜひライブが見たい、そんなことを考えていた。しかしその直後、デューリーの訃報を聞いた。出会うのが遅すぎた、そのことが個人的には悔しくてならない。 |
| 画面が切り替わって登場するのはザ・フー。キース・ムーンを亡くし、ケニー・ジョーンズが加入後、まだ始動しはじめたばかりの頃の映像ということになる。キースのいた頃のザ・フーといえば、当然4人のメンバーのみによる演奏に終始していたわけだけど、ケニー加入後はシンセとブラス・セクションを従えたライブが当たり前になっていく。というわけでここでも、
キーボード・プレイヤーとブラス・セクションをバックにしての演奏、キース時代のライブしか知らない人には新鮮に映るかもしれない。1曲目は当時の最新作にしてキースの遺作、WHO ARE YOU収録のSister Disco。「サタデー・ナイト・フィーバー」以降大流行のディスコ・ブームを皮肉った曲で、曲調は「いかにも70年代フー」といえるものだけど、シンセが曲全体をリードするようなアレンジ。
転調の多い曲を見事に歌いこなすロジャーの歌唱力が光る。ロジャーの髪型は2004年の初来日時に近い短髪で、あの日の姿とダブる。ケニーのドラミングも無理なくザ・フーのサウンドにはまっていて音的には違和感はないけど、ピート、ロジャー、ジョンの後ろにいるのがキースではなくケニーという絵の方に違和感が残る。ピートは首に赤いスカーフ、この曲ではギターよりもバック・ボーカルで頑張っている。そしてジョンは・・・、相変わらずアップが少ない(笑)、でもいつものジョンだ。
そして最後はSee Me Feel Me。静かなパートでは極端に抑えて歌い、テンポが速くなってからの演奏とボーカルも控えめ。そして間奏のギター・ソロの後、突然テンポ・アップしてボーカルも演奏も激しくなる。つまり、往年のライブ・テイクや公式テイク以上に、よく言えばドラマティック、悪く言えば大袈裟なアレンジ。 長年演奏し慣れてきたこともあってか、「聞かせ方」を心得た演奏と言えるかもしれない。客席も徐々にヒートアップしていく感じである。そして2回目の間奏、この時ピートは突然腕をグルグル回し、ロジャーもマイクを振り回しはじめる。照明も突然明るくなる。すると客席は総立ち、まるでスポーツ大会の会場か、何かの儀式の会場かのように、観客全員が半狂乱で轟音のような歓声を上げ、腕を振り上げている。いや、「ライブで沸き、盛り上がる会場」の絵ってのは、 過去にもいろいろ見てきたけど、こんな異様な盛り上がりは後にも先にも見たことがない。「盛り上がる」「乗りまくる」というよりは、本当に何かにとりつかれたかのような騒ぎ。ライブ会場をこんな雰囲気にしてしまうバンドは、長いロック史の中でもザ・フーを除いて他にはいないだろう。そして長く「この手の感覚は日本人には分かりにくいから、ザ・フーは日本で受けないんだ」と言われ続けてきたわけだけど、2004年の来日時にその定説は覆される。 しかしこの映像をはじめて見た1995年の時点においては、私自身も見たこともないような光景だったこともあり、この観客の異常興奮を見て、大変なショックを受けたのも事実。そして会場をこんな状態にしてしまう、そんなザ・フーの特異な存在感にも改めて驚かされたものだった。エンディングでロジャーはこれまで以上に思いっきりマイクを回し、ピートはジャンプ連発、最後はスライディングで曲が終わる。
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| ここでビリー・コノリーなる髭モジャの男が登場。私はこの男が何者か全く知らないけど、「このメンバーには驚くよ」などと言いながら、紙に書かれたロッケストラのメンバーを読み上げる。ウイングスのメンバー全員に、ザ・フーからピートとケニー、ロックパイルからエドモンズ、アトラクションズのブルース・トーマス。さらにツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズとジョン・ボーナム、元フェイセズ、当時はソロのロニー・レイン、元プロコル・ハルムのゲイリー・ブルッカー、元レモ・フォーのトニー・アシュトン、それに
当時ウイングスをサポートしていたブラスやパーカッション奏者。全員の名前を読み上げた後、「夢じゃないんだ」とその男は締めくくる。アルバムBACK TO THE EGGセッションでのロッケストラからピンク・フロイドのデイヴ・ギルモアやシャドウズのハンク・マーヴィンは抜けてはいるけど、新たなメンバーも加わって十分豪華。 次にステージが映し出されると、中央にベースを抱えたポール、それを取り囲むようにギターやベースを抱えたメンバーが立っている。真後ろにステーヴ・ホリーとリンダ他キーボード奏者、ドラム、パーカッション、ブラスのメンバーは一段高いところに並ぶ。ポールが歌うのは彼の18番ともいえるリトル・リチャードのLucille。全員が揃いの銀色に光るタキシード、シルク・ハットを被っているメンバーもいる。さらに例の男が読み上げた中に名前のなかった人も数人加わっている。そんな「飛び入り」の中に、ロバート・プラントの姿が。ポールのものと思われるヘフナーのベースを持ってるけど、果たして本当に弾いているのかどうかは分からない。 いつものように高音のシャウト・スタイルのボーカルを聞かせるポール、周りのメンバーは自分の担当楽器を淡々と弾いている。ゲイリー・ブルッカーが激しくピアノを叩く姿が印象に残る。しかしそれ以上に目立ってしょうがないのが、ポールの左側に立つ、長身で髭面、しかもなぜかひとりだけ揃いのスーツを着ていないギタリスト=ピート・タウンゼンド。歌っているポールひとりをカメラが追っている映像に、なぜかさりげなく入ってきて、ポールに寄り添って笑顔。ポールも思わずピートの方を見て笑顔。なぜ「いちオール・スター・バンドのメンバー」がここまで目立つのやら(笑)。他のメンバーは淡々と演奏しているのに。 1曲目が終わるとポールはステージ右端のピアノの前へ。観客と参加メンバーへ感謝の言葉を述べるとLet It Beを歌い出す。1979年といえば、まだまだポールといえども、ビートルズに対して拘りのあった時代。ビートルズ・ナンバーもそんなに多くは演奏していなかった。この時代に「解散時の暗い影」を漂わせたこの曲を取り上げたというのは、かなり異例のことだろう。80年代以降のポールは「チャリティのお約束」とでも言わんばかりに、チャリティ・コンサートや企画もので必ずこの曲を歌ってきたけど、その先駆けがこのステージだったと見ることもできよう。歌い回しやアレンジもゴスペル色を抑えた、85年の「ライブ・エイド」や、90年代以降のツアーのものに近い。 途中でカンボジアの現地の様子が映し出されたりするのも有りがちな映像効果か。しかしこんな「どう演奏しても、ボーカリストだけにスポットが当たる」曲、しかもバラードをオール・スター・セッションであるロッケストラで演る、なんていうちょっとズレた発想もまたポールならではか(笑)。実際、周りを囲む有名アーティストたちに見せ場らしい見せ場はない。ギター・ソロもウイングスのローレンスがひとりで弾いているし。手持ち無沙汰になったロバート・プラントはベースを置き、リンダと1本のマイクに顔を寄せ合ってコーラス。しかしここでも、ギター・ソロを弾くローレンスの横で派手な動きを見せる、ひとりだけ服装の違うギタリスト=ピートの姿が。本当に、どこまで目立てば気が済むんだ(笑)。
最初にも述べたが、このエンディングを見て一部ビートルズ一穴主義本に書かれるような「大イベントの中心にいたのは、紛れもなくロック界の中心たるポールであった」なんて結び方は、私には到底できない。どう見てもピートの方が数段目立ってるんだから。それにHappy New Yearと叫ぶポールだけど、翌1980年はポールの生涯において最もUnhappyな1年(活動停止、ウイングス消滅、ジョンの死)になってしまうことを思えば、むしろ皮肉に響いてしまう。 |
| というわけで、一般的には「ビートルズもの、ポールもののレア・アイテム」として語られることの多い映像。確かにそっち方面から見ても、「珍しい最終期メンバーによるライブ映像」「ウイングス最後のライブ」「翌年1月の幻のウイングス日本公演を妄想させる映像」「Every NightとComing Upのベスト・テイクが見れる」「チャリティ・コンサートを指揮し、ロッケストラを率いるポールの姿が見れる」といった、多くの見どころがあるのは事実。
だけどこれを「ビートルズ、ポール・マニアだけが楽しめる映像」だと思ったら大間違い。
そして目につくのは、そうしたニューウェイヴ、パブ・ロック勢の元気さ。まあ、当時が一番旬の人たちだから当然とはいえ、イアン・デューリー、コステロ、ロックパイル、プリテンダーズ、スペシャルズなど、本当に勢いを感じる。しかも普段は小会場で演奏している連中、それが大会場で堂々と、普段通りの演奏を繰り広げて、「本場イギリスのパブっぽく」会場の空気を変えているんだから素晴らしい。中でも会場を異常に沸かせるイアン・デューリーのパフォーマンスは特筆に価すると思う。 とはいえ、やはり圧倒的な存在感を見せつけているのは、オールド・ウェイヴの代表ともいえるクイーンとザ・フー。まさに貫禄で一歩も、二歩もリードしている感じで、「勝ち負け」でいえば、オールド勢の圧勝ではないだろうか。特にザ・フー。ケニー・ジョーンズ加入後、ブラス隊やキーボードを従えての演奏ということで、往年のように破天荒でも破壊的でもない。一般には「楽器壊しや大暴れしてドラムを叩くキース」など、「破壊的なパフォーマンス」故に「世界最高のライブ・バンド」と評される彼らだけど、 ここは純粋に圧倒的な演奏力で観客を圧倒し、あの「演奏が終わってもしばし呆然」なザ・フーならではの空気を生み出しているのが凄い。ケニー加入後の公式ライブ映像といえば、本格的なものは解散ツアーのものくらいしかない。ただあの映像は「落ちていく巨星」といった、疲れきった、痛々しい演奏ぶりが悲しいというのが正直な感想。それなだけに、キースを失ったとはいえ、まだ往年のオーラを持っていたここでのザ・フーの圧倒的なパフォーマンスには驚かされ、感動を覚える。特に本編でも述べたけど、See Me Feel Meでの観客の総立ちでの熱狂ぶりは、本当に異様なほど。 はじめて見た時は本気でビックリしたものだった。というわけで、「やはり一番凄いのはザ・フーだった」というのが、私個人の素直な感想だったりする。
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*ビデオ好感度 90
*:2005年5月9日UP
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