| ACCEPT BREAKER |
| 1982 CASTLE COMMUNICATIONS PLC |
| CLACD245(輸入盤) |
| アクセプトは1979年にファースト・アルバム「Accept」をリリースすることにより、シーンに登場した。しかしこの頃の彼らの活動は殆ど日本のメディアに取り上げられてはいなかったようだ。私が彼らの存在を知ったのは、高校生の頃のことだ。当時ロックを聴き始めたばかりの私に、様々なバンドを教えてくれる人が同じクラスの中にいた。MSG,
Ozzy Osbourne, Judas Priest, Iron Maiden などの存在を私は殆ど彼に教わっていた。彼はお勧めのアルバムがあると、それをテープに録音してくれた。アクセプトも彼に録音してもらったテープで聴いたのが最初だった。それが「Breaker」だった。家でそれを聴いた時のことは今でもよく覚えている。 1曲目の「Starlight」。まずヴォーカルの声に驚いた。今まで聴いたことも無い様な声だ。しかしその声は何故か心地よかった。ギターが2本も鳴っているのに、全く音に埋もれていない。むしろ声が前へ前へと曲を引っ張って行る様に思えた。サビの展開がやや強引過ぎるように感じたが、中間部のギターソロ(ツインなので、正確にはソロではいが)には、「はっ」とした。この感じは何か覚えがある。力強いのだが、どこか悲しげな、冷たい大地に生きる人達の凛としたメロディーが、私の感情を捉えた。これは今までのバンドとは少し違うなと思った。 そして2曲目「Breaker」。この曲は今現在でも私のアンセムである。出だしのギターのリフ。最初は1本。2回目からは2本。リフの最後の音に合わせてベースとドラムが参加、そしてヴォーカルの掛け声と共に4連譜に乗ったリフ。歌メロは物悲しくも力強い。展開に移行する前のギターの決めが、やはり凛としている。1曲目で「はっ」と感じたものが、ここでは全体に流れている。そしてサビに行きそうでなかなか行かない。物悲しい気分がどんどん盛り上がってくる。完全なブレイクの直後ついにサビ。どこまでも垢抜けないメロディー。しかし一度聴いたら忘れることが難しいメロディー。そして思い当たった。この感じは私の知っているロシア民謡の感情とよく似ているのだ。 アクセプトの特徴として、男性的なコーラス、正統的なパワーロック、等の表現が良く用いられる。これらはしかし5枚目の「Balls To The Wall」、6枚目の「Metal Heart」以降顕著になった持ち味であると思う。私はアクセプトを聴くと、ドイツというよりはむしろ、ハンガリーやスラブの香りを感じる。冷たい北の大地を流れるドナウ河の面影を見る。この点で、U.D.Oとは性格が異なっていると私には思える。6枚目のアルバムで「スラヴ行進曲」をイントロに入れてみたりするのも、私にはごく自然に素直に納得できた。(「在りがちな曲の始まり方だ」という風には思わなかった。アクセプトは単にクラシック音楽のメロディーを拝借するのに長けているバンドではない。) 間髪を入れず3曲目の「Run If You Can」が始まる。ミドルテンポに垢抜けないリフが乗る。これもすぐにはサビに行かない。リズムは異なるが、この曲も2曲目のセンスの流れを汲んでいる。そしてサビ。これまでの感情の盛り上がりを、逆に抑えるかの様なメロディーだ。しかし「引く」ことにより、却って凄みが増している。 4曲目の「Can't Stand The Night」では、センチメンタルにならない攻撃的なバラードが聴ける。ギターはこれでもかと泣きまくる。ここで聴けるウドのVo.は非常に悲哀に満ちており、感情の強さ、テンションは恐らくこのアルバムの中で最高のものだと思う。 5曲目の「Son Of A Bitch」。私の持っている輸入盤LPでは、この曲だけ歌詞が掲載されていない。サビの歌詞も変更されている。しかしライヴではお構いなしだった。歌詞は下品だがリフは格好良い。欧州の暗部を思わせるメロディーが曲全体を覆う。 6曲目(LPではB面の1曲目)は、一転して陽気なお祭りロックの「Burning」。模擬ライヴの体裁で収録されている。セカンドアルバム迄のアクセプトの曲調に近いものを感じる。これはこれで楽しくて良い。実際ライヴでは盛り上がった曲だが、「Metal Heart」以降の彼らのスタイルのみを知る人が聴くと、少し意外に思うかもしれない。 7曲目「Feelings」。今日では言葉の定義が異なる様だが、私にとって「実にドイツらしい」と思える曲がこれだ。どちらかと言えば不器用で、洗練されておらず、決して都会的でない。しかしその誠実でひたむきな、何処までも垢抜けないリズムとメロディーに、心を打たれる。貧しい北の土地で懸命に生活し、何とか冬を生き抜こうと考案された保存食「ソーセージ」の伝統文化。手足は過酷な作業でまめだらけに、髪は冷たい雨に打たれて固くなり、肌は北風にさらされてがさがさになっている。しかし人々は自分達の明日を信じて生きていく。そんな人々の力強さを感じるのだ。間奏のギターは、まるでその人達の凱歌であるかの如く、誇り高く鳴り響く。 8曲目の「Midnight Highway」。これは80年代らしいハード|ップ。B級バンド風な曲調に思わず胸が温まる。「手作りの良さ」という言葉が浮かぶ。 9曲目「Breaking Up Again」。ピーター・バルテス(b)の歌うアコースティックな曲。素朴な曲だが完成度は高い。メロディーの起伏のバランスが実に良くとられている。前半はアコースティック・ギターとヴォーカルで、しみじみと聴かせる。そして2回目のサビの最後のフレーズの後、余韻の中でスネアが入ってくる。ドラムに導かれてエレクトリック・ギターがマイナー・キーで参入。ここでのギターの泣きっぷりは尋常でない。まるで70年代のイタリアン・ロックの如く壮絶に泣く。これがライヴのレパートリーに入っていなかったのが残念であった。 10曲目「Down And Out」。聴くと「あぁ、B級だなぁ」と思ってしまう曲。出だしとナカサビまでは良いと思うのだが。何と表現すれば良いか。「輸入レコード店で、それまで名前も聞いたことの無いマイナー系なバンドのLPを、一か八か衝動買いしてみたら、A面トップだけはかなり良かった。」と言われてしまう作品の、A面トップ以外の様な曲。 (1999/12/01記) |