第10回:プラネテス −ΠΛΑΝΗΤΕΣ−
/幸村誠(講談社モーニングKC)
民間人が宇宙に行ける(そりゃ金はべらぼうにかかるが)21世紀。
“宇宙への憧れ”それ自体がノスタルジックな響きを持つように
なった21世紀。そんな時代に、こんな漫画もふさわしいのでは?
作者のかたはまだ若いようなのですが(たしか20代)、なおかつ舞
台は近未来なのですが(2070年代)、作品から受けるイメージは非常
にノスタルジック。カラーページの宇宙空間は、こども百科事典の
ような色合いで、未来のことを書いているのに不思議と懐かしい。
さて、その未来とは。
宇宙空間が現実的に利用されている時代、宇宙空間には無数の
「宇宙ゴミ(デブリ)」が散乱しています。それを片付けるのが主人公・
ハチマキらのデブリ回収宇宙船。物語は彼とその同僚であるユーリ、
フィーを中心に進んでゆきます。
それぞれがさまざまな歴史を経てこの宇宙船に乗りこんでるわけ
ですが、(それなりに年くった人が過去の1つも無いなんてことぁ有
得ない)私がこれを読んでまず思ったのは、宇宙っていうのは誰に
も平等で無慈悲なんだという事。今現在でさえひとりぼっちは辛い
のに、宇宙空間ではそれを物理的に思い知らされるのです。
イヤあたしが実際思い知らされたわけではないけどさ、これ読ん
で思い知ったわけですよ。
ベタ1色にホワイトの星、そこにハチマキ一人。冗談みたいな命
綱が自身の存在証明代わりで、それが無かったら自分が拾って回る
デブリと何ら変わらないことは、そのたび思い知るでしょう。そん
なところでずーっっと仕事してたら(してるんです。数ヶ月単位で)、
いやでも自分自身と真摯に向き合わざるをえない。そのなかでのハ
チマキの人間的な変化がひとつのテーマのようです。
始めの頃は只のプラプラしたあんちゃんだったハチマキも、ひょ
んな事故で自分自身の不安をつきつけられることになります。その
不安を気合でねじふせ、ハチマキは克服します。これが一巻まで。
そしてここが作者のすごいところだなあと私は思ったのですが、
1巻でせっかく組み立てたハチマキのアイデンティティーを2巻で
根っこから否定する存在を登場させるのです。それが新人乗組員の
タナベ。このタナベがハチマキの世界に入りこんできたことで結果
的に、ハチマキは自分の弱さを、ねじ伏せていた気合(意地ともいう。
弱さ+意地=コンプレックス)それごと払拭して、ごく当たり前の事
実(真理ともいう)に気づきます。
「これって、どうどうめぐりでしょうよ!」という突っ込みはなし
です。こういう過程を経て、らせん状にヒトは成長してゆくものだと
私は思う。例えていうなら、1巻のハチマキは平面的に悩んでて、2
巻のハチマキは立体的に悩んでる。これは、各巻のラストのページを
見比べながらじっくり読んでいただければわかります。
ついでに言うと、本作がデビュー作でもある作者の表現力の発達も
リアルタイムで見られます。ここにもひとり、スパイラルに成長して
いるヒトが・・・。
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