凡庸な背徳が支配する
type:01〔hyper〕【境界性人格障害】
ワタシハドコカラキテドコヘイクノダロウ。
エイエンデハアルケレド、エイエンニハナヤメズリカイデキナイナゾ。
地面を見ると、自分がこのまま吸い込まれて、地底に住む人達の住処へ連れて行かれていきそうになる錯覚に陥る。
再び、足を踏み出しながら「ここの地下は、水道管やらガス管やらが通ってて、地底に人なんか住めない」そんなことを考えていた。
ふと、顔を上げると、通りを行き交う人々の視線が、あたしに集中していたことに気付く。
その視線は、あたしのことを可哀相な子を見るような、可笑しな子を見るような意味で満ち満ちている。
・・・・・・なんでロリイタはそういった目で見られるんだろう。
苛立ちとも悲しみともつかない感情におかされながら、あたしは早足で歩き続けた。
歩く度に、服がもさもさいっている。
それがたまらなく好きだ。
けれども、他人から見たら、それは果てしなく滑稽なものなのだろう。
ふと、あたしよりも幾つか年上であろうオンナノコと、目が合った。
その子は、俗に言う「ギャル系」の子だった。
目鼻がくっきりと整った、キレイな顔をしていた。
横には、俗に言う「ギャル男」という風体の、彼氏らしき男の人がいた。
そのおんなのこは、あたしを見るなり「あのこの格好すごいよー」と、横の男の人の袖をひっぱった。
そして2人は、哀れなものを、この世には存在してはいけないものを見るような目つきで、あたしを見た。
すれ違った後、かすかな笑い声が聞こえてきた。
どうして、人と言うものは、ここまで他人に残酷になれるのだろうか。
自分とは、違うものを、そこまで非難できるのか。
別にあたしは犯罪を犯したわけでもないし、他人に迷惑をかけているわけでもない。
・・・・・・いや、あたしなんかいなければ、他人はあたしの存在を知らずに、あたしの事を見てなにかを感じると言う事だってなかっただろう。
あたしがいることで、誰かが何かを感じることが、思うことが辛い。そうやって、へんな印象ばっかりを与えてしまうことが嫌。
自分が、希有な存在で在りたいと同時に、いてはいけないものである、と感じてしまう。
だから手首を切って、自負の念を感じ、快楽を感じる。それしか出来ない。
わたしはマゾヒスティックな性格だ。
精神的に苦痛を感じれば感じるほど、自分を追いつめれば追いつめるほど、得もいわれぬ快楽へとはまって行く。
その、最終地点がリストカットであるわけで。
はっきりと言って、ロリイタでいることは、
その、子供染みた服装の影に、子供染みた発言や行動で無邪気に振る舞っている影に
精神的に病んだオンナのあたしがいることが、素晴らしく病的で、絵画的なものであると言う意識が、
あたしの胸の中でぐるぐると躍っているからである。
いったん服を脱げば、ただの境界性人格障害のオンナが残る。そのオンナの手首は、明らかに自殺を目的とした傷で汚れている。
また、「自分」の存在を確認する為、自責の念を周囲に知らしめる為に、手首に刃を立てる。
そんなあたしのベッドの手前の床は、血染め化粧。どす黒い赤い飛沫で、覆われている。
ただ、解って欲しいだけなの。
その一言は、誰にも解ってもらえないと言うことを、あたしは知らない。
それでも、愛してもらうなら「素の自分」を愛して欲しくて、全てを告白してしまう。
肝心なところで、いつも嘘は吐けない。
いつか解ってしまうから。
皮が、べりべりと剥がれる音がしながら、隠しながらも暴かれてしまうから。
嘘が分かる瞬間よりも、嘘を吐いていたことが分かる瞬間のほうが恐い。
また、一つ壊した。
嘘を吐いていれば良かったのに。自分をもっと、抑制出来ていれば良かったのに。
しかし、愛していると言う気持ちは、曖昧であって、同時に非常に崇高で、確かなものであるから。
嘘は吐けない。結局のところ、最初からプログラミングされていたと、そう理解することがあたしの終わりであると、理解するべきなのだろう。
ハスミは、オトナだ。あたしのことを、子供と言うから。
彼氏は、とあるインディーズのバンドの美形のヴォーカル。羨ましい限りだ。
なんでハスミと付き合っているのか、その人に聞いた。
「ハスミは、俺にはもったいないぐらいのオンナだよ。
あいつは考え方はしっかりしているし、何より、人に安らぎを与える、そんな雰囲気を持っている。
でも、うちのバンドのファンの子から、いじめられてた、ってお前が言ったよな?
だから、あれっきりライヴにはこれないけれど・・・・・・。
「来るな」って言った時も「私が来たくて来てるんだから、いいじゃない。アナタには、関係ないわ」って強く言われたし。
でも、やっぱりオンナノコなんだよな。「俺はお前が傷つくのは見たくないんだよ」って言ったら
「・・・・・・じゃあ、解った。もう行かない。けど、週に一回は絶対に会ってよ」って。
かわいいんだよ。でも、やっぱりしっかりしてるよ」
・・・・・・御馳走様でした。
久しぶりにハスミに会った。あたしは、学校をボイコット中だから、あまり会えないのだ。
ハスミは、お勉強と彼氏で手いっぱいだから。
「彼氏と上手くいってるみたいだね。羨ましい限りだよ」
・・・・・・ありがちな切り出し方。
ハスミは少しはにかんで
「・・・・・・うん」それだけ言って顔を赤くした。
オトナでもこんな顔をするんだなァ。と、あたしはわけの解らない感情に溶け込んだ。
「明日ね、会うんだ。凄くね、支えになってるんだ、あいつが」
お互い必要と思ってるわけだ。いいね。
「・・・・・・あんたは?GISHOさんのことだけ、まだ思ってるの?」
急に話を振られて、びっくりした。
あたしは、首を力無く左右に振った。
「そうなんだ。・・・・・・じゃあ、オトコ出来たの?」
ハスミがあたしの顔を覗き込むと同時に、ぎょっとした。
あたしは大粒の涙をポロポロと落として泣いていたから。
「ちょ、ちょっと・・・・・・どうしたの?なにかあったの?」
ハスミは、あたしの頭を撫でながら問う。
「・・・・・・あたしね、また、焦って自分から、壊したの」
きっとハスミにはあたしの言いたいことは解っているだろう。
だから、それ以上、あたしは何も言わない。
「そっか。あんたはね、正直すぎただけだよ。いいんだよ。人間は正直じゃないといけないんだから」
そう言って、あたしの頭を撫で続けてくれた。
髪の毛を染めた。
赤くしてみた。なんだかココロから少しだけ重たかったものが無くなった気がした。
そうやって、隙間を作るのだろうか?
少しばかり、自分の将来が不安になり、死にたい衝動に駆られた。
手首は切る場所が少なくなって来てしまったというのに。
ホントウノアタシノココロハダレガモッテイルノ?
ダレカココロノアリカ、オシエテクダサイ・・・・・・。