凡庸な背徳が支配する
type:02〔hyper〕【手首自傷行為症候群】


ココハドコデスカ?アタシハナンデスカ?
ワカラナイカラ、キョウモテクビヲキズツケル。


手首にキラリと光る剃刀の刃をそっとあてる。あたしは、ただそこだけを凝視する。
そして、ひと息吐いて、刃を滑らせる。
光る銀色のそれが通った後を、赤い血が鮮烈な色彩で染め上げて行く。
その瞬間に、一つ溜め息を吐いた。
ぼんやり眺めていると、舐めると鉄の味がする赤い液体は、手首を滑り落ち、床に赤い湖を作り上げる。
あたしはどうだってよくなって、ベッドへ身体を投げ出した。
ねえ、なにが理由で生きていないといけないの?
みんな知らないの?知らなくて、なんで生きているの?何故?何の為?
この、あたしの身体の中から出てくる毒を持った赤い液体はなんであたしを生かしているの?なんで?

ずっと死にたかった。
子供の頃から、なにか失敗すると、すぐに「死にたい」って思ってた。
中学生になって、それが凄く強くなっていた。けれど、恐かった。赤い液体を自分で外に出すのが恐かった。
高校生になって、ふっきれた。死ぬ事が美しい事に見えてきた。
赤い液体を出す事は、別に恐い事でもイケナイ事でもないんだって、解ったから。
むしろ逆に、楽しい事だって、解ったから。
弱いあたしが世間に示すアンチテーゼとしては、今までしてきた事よりも、全然大きな威力を持っている。
リストカット。それはあたしの自己主張。

リストカットを初めてしたのは、何もかも嫌になって他人を殺したくなった頃だった。
でも、他人に外傷を負わせるなんて恐い事、あたしには出来ない。
だから、他人を殺す代わりに、自分を傷つけて、そんな思いを浮かべる自分を殺した。
殺したかった。ウワベだけの世界に生きている自分。
殺したかった。愛想笑いしか出来ない自分。
殺したかった。変に大人びていた幼い頃の自分。
いつでも殺したい。そのまま大きくなった自分。
自分を殺したい。違う自分に産まれてくればよかったのにって、いつも思う。
この自分と言う物が存在している事がおぞましい。いくら吐いても足りないほどに。

外傷じゃなくても傷を負わせる事は出来るんだ。気付いたのはほんの最近だった。
心の傷は、なかなか癒えない。
心にも傷を負わせる事は出来るんだって。自分がたくさん傷ついていたって。やっと気付いた。
あたしは外面がいい。
あまり貸したくないものを「貸して」と言われても「いいよ」と言って、嫌な顔しないで貸していた。・・・・・・今もそうだったりする。
それで、返ってこなかった事、5回ほど、壊されたりした事3回ほど。
そのことが解った時、顔には出さない。だって、相手が傷つくもの。
あたしはいいのよ。だってオトナだもん。そんなの、全然痛くない。
けれど、後になって、今になって強い衝撃になっている。
あたしってなに?そんな希薄なものなの?ねえ、上っ面だけなの?友達でしょう?って。
傷ついて傷ついて来たから、他人の傷は解るつもり。だから、外面は相変わらずいい。
けれど、一人になると、殺してやる、って言う気持ちでいっぱいだから。
またそこで、そんな思いを抱く自分を殺す。
そんなこと、考えるからみんながあたしのこと、ウワベだけで友達だって言うのよ。
そう思って、謝りながら自分を傷つける。
だから、世の中信じられない事が多くなってきた。
両親も、そうだから。あたしにあたる時の顔と、凄く優しい顔。
それは誰だってイライラする時はある。解らなくも無い。けれど、まだ、子供のままのあたしには、一番堪える。
なんで?あたしがイイ子じゃないから?なんで怒るの?なんで泣くと怒るの?なんで?なんで?
必然的に、感情を、表に出したくなくなる。
なるべく、感情を出さないで。抑えて、抑えて・・・・・・。
イイ子になるよ。怒られたくないから。イイ子になりたいよ。だって怒られなくてもいいから。でも、イイ子は嫌い。ウワベだけだから。
何をしたらいいの?何をすれば怒らないの?
解らないよ。解らない。

何も解らないから、赤い毒とまた、夜中に戯れる。


学校と言う物は、牢獄だ。
制服は、囚人服。授業は、強制労働。
ナチズムによく似ていて、似ていないシステム。
壊したいけれど、壊そうとする者は削除される。淋しい現実。
何故、そこにいるのか解らない悲しい者よ。
おまえは何をしたい?なんとなく行って、それを紛らわす為に、なんとなく楽しんでいる。。
そして、「遊びたいから」と、なんとなく大学へ進み、留年したり退学したりする愚かなおまえ。
一瞬だから、と言って、取り敢えず行く者。
取り敢えず、ってなに?学歴が欲しいから?だったら、そんな囚人服を着てまで行く必要ないじゃないか。
拘束されて、そこが楽しいなら構わない。
強制労働が楽しいなら、大いに結構。そういった者だけ、行くべきだから。


死んじゃえ、って。誰かに言いたい。そんな自分に、死んじゃえ、ってもっと言いたい。
自分の命なら、何時でも絶てるから。
悲しみの果てよ、あたしを受け入れて。
そして悲しみを飲み込んで、ずっと抱きしめていて。
悲しみに疲れ果てたあたしを、暖かくして。
そして、誰も知らないカナタへ、飛ばして頂戴。
そうすれば、きっと、何も無くなるから。
誰もいなくても、何も無くても大丈夫だから。


ドコニイッテモカナシイ。
ダッテ、ダレモココロノソコカラハカナシマナイカラ。


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