凡庸な背徳が支配する
type:02〔hyper〕【過去形のヒト】
「ムカシハヨカッタネ」
イチバンイイタクナイケレド、イチバンイッテシマウコトバ。
あ。タカユキだ。
駅の付近をふらついていたら懐かしい顔に逢った。
向こうもあたしに気付き、こちらへ向かってくる。
「おー。真面目な不良少女。今日は何処へお出かけ?」
あたしはロリイタだったから、シカトされるかな、って思ってタラタラ歩いていたから、衝撃をくらった。
にこっと笑った顔は、半年前と全然変わらない。少し頬のあたりがすっきりして、少年からオトコへと変わる兆候を見せはじめている。
・・・・・・タカユキは、あたしがダイスキだったヒトだ。
中学2年生の時、あたしとタカユキは同じクラスだった。
あたしは、タカユキとは気兼ねなく話せる友達的な関係で、いつも馬鹿を言い合っていた。
・・・・・・そんな毎日の中で、あたしの心に大きな変化が訪れる時が来た。
ある日の音楽の授業が終わった後だった。
あたしは、タカユキがギターを弾ける事を知っていたから、タカユキにいつか弾いてもらいたい、っていつも思っていた。
あたしが「弾いて」とせがむといつも「まだ練習中」って言って、なかなか聴かせてくれなかった。
でも、その日あたしは、音楽室の隣りの小さな部屋で、タカユキがギターの練習を1人でしているのを見つけた。
こっそり聴くつもりなんてこれっぽっちも無かった。
ガラッ、と派手な音を立てて、あたしはその部屋のドアを開けた。
「ねえ、今日こそ聴かせてよ」
タカユキは、溜め息を吐いて苦笑いをした。
あたしもつられて笑ってみた。
「・・・・・・まだあまり上手くねえけど」
そう言って、タカユキはギターを弾き始めた。
GLAYのBELOVEDだった。イントロのメロディーが、私の頭に、ココロに心地よく響く。
タカユキは、歌も歌ってくれた。
タカユキは歌が上手い。
あたしは、時間の経つのも忘れて、タカユキのギターに、声に聞き入っていた。
しかし、時間は止まる事を知らず、音楽の先生が「次の授業、もうすぐ始まるよ」そう知らせに来た事で、
あたしとタカユキのトロンとした時間は、カタッ、と音をたてて崩れていった。
その後、あたし達はいつもの馬鹿を言い合う2人に戻って、教室へと走っていった。
以来、あたしはタカユキを、ただの友達としてではなく、大事なヒトとして見ていたのだった。
「ピアスそんなにあけたんだ」
タカユキはびっくりして、あたしの耳を見る。
「・・・・・・あんただって、あけないって言ってたのにあけてるじゃん」
あたしもタカユキの耳をみて、そうぼやく。
タカユキは、「へへっ」といった感じで笑って、「なんとなく、な」言ったっきり、空を見たままだった。
「楽しい?」
間抜けっぽかった。質問も、言った間合いも。
ぽかんとした顔でタカユキは私の顔を見る。
そして、少しの空白の後に
「・・・・・・お前は・・・・・・お前は楽しいのか?」
あたしは少しだけ考えて、ふ・・・・・・・と自嘲気味に笑った。
「みんなといた頃・・・・・・タカユキと一緒にいた頃に比べたら、全然。楽しいわけないじゃない」
ぽつり、そう言って、あたしは俯いた。
「・・・・・・全然変わってないな、お前」
思いがけない一言。
嬉しいようなつまらない一言。
変わらない人間なんていないよ。
言葉を飲み込んで「ばいばい。」
それだけ言って、タカユキに背を向けて歩き出した。
この部屋は空気が悪い。
なにのせい?と聞かれたら瞬間に答えられる。
煙草・・・・・・。
煙たいのだ。
・・・・・・しかし、一番煙たいのはあたし自身・・・・・・。
ダレガクルワセタノ、アタシノコト。
グモンダナ。ジブンジシンニキマッテルジャナイノ。