コトバの群れ〜コトバによる精神の破壊〜
コトバはどう転んでみてもカケラでしかない。
コトバは、コトバでしかない。
キレイなコトバをいくつも並べたって、それは、結局はキレイなコトバの寄せ集めにしかならない。
ホントウにキレイなモノは、ココに、ソコに、存在していないと確実にはキレイでは無い。
だったら、なにがキレイなモノなのか、ソレをワタシに教えて頂戴。
アナタは物知りだから、キレイなコトバ、沢山知っているから、ホントウにキレイなモノぐらい、見た事あるでしょう?
キレイなモノ、何時でもアナタの傍にあるかの様に、キレイなコトバばかり、並べるんだもの。
・・・・・・キレイ事ばかり並べるヤツ、逆さ吊りの刑。
12月27日。土曜日の4時半過ぎ。
夕方の香りが少しずつ漂い始める。
私の大好きな時間。
ボンヤリとしていたら、闇に体ごと、ココロも、全部飲み込まれてしまいそうな、素敵な時間。
誰もいない?
だけど誰かいる。
顔が見えない。
素晴らしい匿名化作用を持った時間。
電気、付けないで。
暗いままで。
夜に融けていく。
週末の気だるさと、煙草の紫煙と、コーヒーの匂い。
一緒に連れて行こう。
薄暗い今年の暮れに。
全部終わりにしましょう。
アナタと私のコトバだけの繋がりも。
全部連れて行こう。
そうしたら、暗転して、このお話しは終わり。
電気は点けない。
だから、もっと暗くなったら、お仕舞。
そんな気分でいる最中、アナタから、電話なんかかかってきちゃったりしたら、それはお笑い。
ちゃんちゃら可笑しくて、可笑しすぎて反吐が出る。
・・・・・・もう少し。
暗くなって。
私の事、連れていって頂戴。
早く。
・・・・・・楽にして。
嘘だらけの・・・・・・全部メッキで覆い尽くされたこの世界から、コトバで本当の事全部隠しているこの世界から、連れていって。
・・・・・・狂う。
駄目。
プルルルル・・・・・・プルルルル・・・・・・プルルルル・・・・・・ガチャッ・・・・・・タダイマ、留守ニシテオリマス。発信音ノ後ニ、御用件ト御名前ヲドウゾ。
・・・・・・ピ――――――ッ。
・・・・・・ガチャッ・・・・・・ツーツー・・・・・・ツーツー・・・・・・。
なによ。
醒めちゃったじゃない。
目。醒めちゃったじゃない。
死のうとしてた気持ち。醒めちゃったじゃないのよ。
・・・・・・イライラするわ。
電話かけてきたヤツ、八つ裂きの刑。
キレイ事ばかり並べるヤツ、逆さ吊りの刑。
妙にイライラするわ。
・・・・・・煙草吸おうかしら。
そろそろ私と零斗が出逢ってから3ヵ月。
コトバだけ並べてきた日々も、3ヵ月。
・・・・・・なんでも最初は良いのよ。
追ってるうちは、良いのよ。
頑張ってる自分、大好きなのよ。
・・・・・・ヒトリの人の事だけ、一生懸命考えてる自分が好き。
だんだん、相手が本気になってくると飽きるの。
最初は私がキレイなコトバ、沢山並べてるの。
それが、次第に立場が逆になっていくの。
そうするとね、怖いんだ。
相手が、最初の私の立場に立つようになると・・・・・・
「・・・・・・我侭」
私のコトバを遮って、由里亜は一言ぼそっと言った。
・・・・・・それぐらい解ってるわよ。
「・・・・・・アンタの悪い癖」
煙草をふかし、私のアタマヒトツ分上をボンヤリと眺めながら更に追い討ちをかけるかのように一言。
私は味の無いパスタをフォークにいくつも刺しながら、拗ねた子供のように言い訳じみた事を言う。
「私、別に零斗の事嫌いなわけじゃないの。でもね、私、自分から相手の事、嫌いになるのが怖いの」
お互い、続けるコトバが見つからず、空白の時が流れて行く。
私は窓の外を眺める。
空は嫌味なほどに晴れていて、珊瑚が群生しているような海の色に似ている。
その色にそっくりな色の洋服を着ていた零斗の事、思い出す。
私は、零斗の事を嫌いになったわけではない。
ただ、コトバばかりの私を増長させる零斗が怖い。
ただ、コトバだけの繋がりで私の事をあんなに思う零斗が怖い。
そろそろ嫌われる努力をしないと。
また、ヒトリの人に一生懸命な自分に戻らないと。
「あんたさ、馬鹿だよね」
口元だけ笑って、由里亜が私に吹きかけるように言う。
なんだか、ただの馬鹿としか思えないわ。
自分の事しか考えていない様で、他人の事ばかり考えてるの。
だって、私、あんたが言ってる事、半分以上他人を安心させるための嘘だって解ってるもの。
私にだってホントウの事、あまり言わないじゃない。
私といる時、他人が傷つきそうな事、申し訳なさそうにぼそぼそ話すし、私が傷つきそうな事は絶対に言わないじゃない。
「・・・・・・偽善者よね。沙希は何気に」
最後にヒトコト、由里亜は言って、話しを締めた。
その時の顔は、笑ってはいなくて、少し悲しげだった。
・・・・・・他人を苦しめる私、飛び降り自殺の刑
極彩色の部屋の中。
赤とピンクでまとめられた毒々しい部屋の中。
薔薇の香りと煙草のにおいが混ざった部屋の中。
ROUAGEを大音量でかけた部屋の中。
何を思うでもなくただボンヤリと煙草をふかす。
・・・・・・耳の奥で響く、『蟻とチョコレート』。
「嫌な物は見たくないでしょう?」
見たくないから好かれる努力をしよう。
見たくないから嫌われる努力をしよう。
「イメージを溶かしたチョコレート」
それは私の理想論を溶かしたらただのエゴになることを簡略化したもの。
利己主義者。
エゴイスト。
偽善者の仮面を被り、5年前から、1年前から、3ヶ月前から、3ヶ月後も、1年後も、5年後もずっと生き続けるの?
「嫌な物は見たくないでしょう?」
ええ、もうウンザリよ。
そろそろ壊しましょう?
この私。
沙希と言う名前を持った、細胞の集まっただけの、ただの物体を。
演技する事は疲れたわ。
――――――
極彩色の部屋の中、アタマの中は灰色。
・・・・・・そんな私、灯油を全身にかけて火達磨になってのた打ち回って苦しみ死ぬ刑
偶然に、素晴らしいアイディアが浮かんだ。
それは、私のアタマの中で繰り返されるイメエジだけの喜劇。
「先ず、嫌いな人をヒトリ、ドロドロに溶かした鉛、顔面を覆える程のマスクをヒトツ、高濃度の硫酸を適量、
切れ味の良い刃物、もしくはチェーンソー、その他、アナタが使用したい、その人を傷付ける為の道具を用意します。
次に、その人の叫び声が聞こえない様に、口に鉛を流し込みます。
その次の事は、やってもやらなくても結構。その人の憎らしい顔をもみたくないアナタの為に用意された手段です。
その人の顔に、高濃度の硫酸をかけましょう。そうすれば、その人の顔は、見る影も無くなります。
それが終わったらその次は、その人の体をバラバラに解体しましょう。
その際に、その人の汚らわしい血液がアナタの顔にかからない様、マスクをしましょう。
どうぞお好きなところから切ってください。
私は何も言いません。
切る以外にも、アナタのサディスティックな心理を満足させる事なら何でもしてください。
私は何も言いません。
私は想像する事しか出来ないから。
アナタノしたい事、お気が済むまで、するがいいでしょう」
コトバでならいくらだって殺せる。
アタマの中でならいくらだって殺せる。
・・・・・・こうやって、何人殺してきただろう?
私のアタマの中で殺された人、何人いるんだろう?
ああ、この小さな小さなEmily Templeの帽子の中には、入りきらなくなってきたわ。
私の記憶、もっともっと入れておくには、もっと大きな帽子が必要。
・・・・・・今度、Jane Marpleの別珍の帽子でも買おうかしら?
でも、それより先に、私、いなくなっているかもしれないわ・・・・・・。
・・・・・・これを否定する人、アナタも私のアタマの中でシュミレーションに使われる刑
ナルシストな人、嫌い。
そうゆう人は、イメエジの中で沢山殺している。
全身Jane Marpleで固めた、お洋服が凄くカワイイライヴでよく見かける人。
顔もカワイイ。
文句の付けようがないアノヒト。
でもね、自己愛だったの。
3回目に話した後、気分悪いから殺した。
私は上面はね、ニコニコしているけれど、アナタみたいな人、虫酸が走るほど嫌いなのよ?
笑顔でそう言いながら心臓に一発、銃弾撃ち込んでやったわ。
アノヒトね、私の事、見下してるのよ。
私、ロリイタが似合う顔でもないし、そんなにかわいこぶらない。
だから、あまり喋らない様にしているの。
ニコニコしながら、少しお話しするぐらい。
カタチだけでもロリイタになりたいの。
アノヒトは、そんな私、馬鹿にしたのよ。
私、それでも我慢したわ。
だから、家に帰ってから、アタマの中で殺したわ。
あ、あの人が着ていたJane Marpleのお洋服、勿体無いなァ。
血塗れになっちゃった。
・・・・・・その日を境に私は、変にロリイタな自分を作る事を辞めた。
いいじゃない、煙草吸っても。
いいじゃない、お酒飲んでも。
人間だもの。
嫌な事は、沢山あるわ。
反吐が出るほど嫌いな人と、笑顔で話す事に疲れるの、解らないかしら?
バンド関係は、いい事よりも、嫌な事のほうが多い事、解らないかしら?
・・・・・・そう、いくら無知なアナタでも、アナタみたいな人、ごろごろいる事ぐらい解るでしょう?
・・・・・・こんなことを言う私、一番ナルシストかもしれない。
だから私は、勿論沢山自殺している。
ヒトラーに殺された事もあるし、死刑台にのぼったこともある。
・・・・・・そんな私、体中の骨を石で粉々に砕かれる刑