舞台・映画フィルム保存室(room23)



25:火星の我が家(cinema)




監督
 大島拓 1999年 日本
出演
 鈴木重子



 映画「カナカナ」をみて、すごく不思議な印象を持っていた監督さんだったので、みました。気になっていたのに実際見るまで時間がかかったのは、 「主演がジャズ歌手だから」「癒し、とかかかれていたから」のふたつ・・・でも、勘のほうを信じてもっとはやくみといてよかったなー、というイメージ。情報に惑わされてしまいました。

 「火星の我が家」は、主人公の父親が若いころにしていた「火星の土地を売るという仕事」のこと。主人公は音大を出てアメリカに渡り、ジャズ歌手としてみとめられている。主人公の姉は結婚している。母親はなくなり、父親は一人暮らしを楽しんでいるが、かつて主人公が住んでいた「離れ」には、ひとり、司法試験浪人をしている居候がいる。
 そんなところへ、主人公が帰国してくるところから物語がはじまる。

 物語のなかに「父の病気」とか「父の老後」とか「老後の父の楽しみ」とか。そういうものが出てきて、それが確かな手触りだと思えるのに、優しくて柔らかい。そして、見終わった直後、とにかく「おとうさん〜」という気持ちになってしまった。こういう娘の心でいたいなあとおもったし、そういう娘でありたいとおもったりするのは少し不幸なことだとおもうのだが、それでも。「姉と父」のあいだにある確執の事も本当だとおもうし、「主人公と父」の間にある切ない柔らかい心も本当のことだとおもう。両方があって、だからこそものすごく父のことをおもった。
 父親の立場のひとは、この映画を見てどうおもうだろう。

 主人公の鈴木重子が、すごくふしぎな台詞まわし(えんじているのか、えんじていないのか、)なのに全然嫌じゃないのがすごく好きだった。ふんわりした空気のような、抵抗を感じさせない優しい柔らかな、それが羨ましくて嬉しくて心地よくて、でした。えーと、川上弘美さんを好きなのと同じベクトルで、大好きです。


 ということで。
 やさしくなりたいときにどうぞな映画でした。




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