舞台・映画フィルム保存室(room6)



8:弥々(play)


いついつと
  まちにしひとはきたりけり
   いまはあひみて
    なにをおもはん


脚本

矢代静一   〜1999年 (日本)

出演

毬谷友子(一人芝居)


 私が「いちばん綺麗なひと」と尊敬をこめて思っているのが毬谷さんです。「いちばん妖し気であやうい感じのするひと」でもあります。すごくいろいろな雰囲気がつくれるので偉いなあと思います。こういう方が昔の世の中を傾けていたのではとか思います。(失礼)

 「弥々」は、一人芝居です。しかも、父、矢代氏が娘、毬谷のためだけに書いた戯曲。彼女はもうこの芝居を抱いて、8年になります。リトアニア、ニューヨークでの公演も重ね、それでも、まだ、まだという感じで演じつづけています。ライフワークってこういうものを言うでしょう。何よりうらやましいです。父と娘の関係でこれほど理想的(かつ危険)なものがあるであろうか。いや無い。昨年、父・矢代静一さんはなくなられてしまい、毬谷さんにとってこの芝居はほんとうに、危険なほどに大切なものに成っているのだろうなあ、と余計な想像をしてしまいます。

 ストーリーは、「弥々」、というひとりの女の人生そのものです。ひとりの娘が、良寛和尚の前で立ち止まります。「もし、あなたは良寛さまではありませんか・・?私、私は弥々の娘でございます・・お忘れになったわけ、ありませんよね?あなたの、初恋の、大事なひとであったでしょう・・?」
 娘を名乗る彼女は、初めて二人がであった日、16歳の弥々の視点から物語を始めます。

 この舞台で彼女は、16から72までを演じます。最初はこまっしゃくれた料理屋の飯盛り女、男について江戸に出て、旦那が頼りなくて女郎になり。最後は腰の曲がった老女になるまで。くるくると表情を変える毬谷さんはほんとうに綺麗です。一番綺麗だな〜と思ったのが、ちょうど40代の弥々、気狂いのふりをして良寛に会うため、ぼろぼろの身なりをしている弥々の時だったから、私もよく解らないやつだ(笑)。徒っぽさ、とか色っぽさ、とか。女性同士だとまた感じ方も違うのでしょうけれども。

 で。
 最後は泣きます。哀しかったよう。弥々、という、あだっぽい、色っぽい、身勝手で、本能的で、自分勝手なちょっと綺麗な娘。それに感情移入できるってすごいと思うです。自業自得なのに、それを責める気になれなくなります。いろんなことを。また見に行きたいです。ひとによってはその演技の濃さ(?)に好き嫌いがありそうですが、出来はとっても良い芝居だと思います。


 ところで。今回この劇は下北沢の小劇場「劇」にて見ました。当日券3000円。当日に整理券のくばられる、二回の天井桟敷。いやあ、味わい深かった(笑)すっごい脚痛くなりましたが。せま〜い空間に二列、20人ぐらいぎっしりと、天井とお友達になりながら舞台を見下ろしておりました。ちょうど目の前に照明がある感じ(笑)こんどは目の前に毬谷さんがいる距離で見たいです。この劇場はほんとに小さくて、指定席でも、演者と客のあいだは近くて1メートルありません。遠くても2メートル無いと思います。    




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