TOP10 HITS OF LAST CENTURY
Presented by meantime

■ Billboard Best-Selling Popular Retail Records May 4, 1946
01 Prisoner Of Love - Perry Como (RCA Victor)
02 I'm A Big Girl Now - Sammy Kaye (RCA Victor)
03 Oh! What It Seemed To Be - Frank Sinatra (Columbia)
04 Oh! What It Seemed To Be - Frankie Carle (Columbia)
05 Laughing On The Outside (Crying On The Inside) - Dinah Shore (Columbia)
06 Sioux City Sue - Bing Crosby & The Jesters (Decca)
07 Shoo-Fly Pie And Apple Pan Dowdy - Dinah Shore (Columbia)
08 Bumble Boogie - Freddy Martin (RCA Victor)
09 Oh! What It Seemed To Be - Dick Haymes & Helen Forrest (Decca)
09 Oh! What It Seemed To Be - Charlie Spivak (RCA Victor)
10 One-Zy, Two-Zy (I Love You-zy) - Freddy Martin (RCA Victor)
昭和21年5月第1週、全米チャートのナンバー1はペリー・コモの「プリズナー・オブ・ラヴ」でした。
このコーナーは過去にも書いたことがありましたが「ネタに困ったら50年代に帰れ」というルールが勝手にあるのですが、ここ何ヶ月か70年代のUKチャートをウンウン唸りながら紹介し続けた反動で、勢い余って今月は1940年代後半、第2次大戦後間もなくの洋楽チャートを取り上げてみたいと思います。
余りにも昔過ぎるため時代感覚を掴むのが難しい方も多いのではないかと思われますので、このチャートが発表された時期の我が国の世相も紹介しておきましょう。前年8月に無条件降伏した日本は、この21年に入って“戦後”の態勢に入りつつあったようです。この5月でいえば1日に戦後最初のメーデーがあり、極東国際軍事裁判所(通称「東京裁判」)が開廷、第1次吉田茂内閣が成立といった感じ。音楽の方ではこの年の1月に戦後最初のヒット曲と言われる「リンゴの歌」がリリースされ、6月には岡晴夫の「東京の花売り娘」といった時代。今回のチャートの背景説明にまったくなっていないかも知れませんが、一応ここら辺を踏まえてチャート話に入っていきましょう。
この週1位に輝いているペリー・コモは大戦中の1942年にバンド・シンガーからソロに転じ、ラジオショーの成功をきっかけに43年以降ヒットチャートの常連的存在となりますが、その人気が本格化するのは大戦が終局を迎える45年夏から。「戦争が終わった!」という開放感や安堵感に、彼のイージー・ゴーイングな芸風がマッチしたのでしょうか、以降の1年間にリリースした6枚のシングル(括弧内は最高位)
1945.06 Temptation (#15)
1945.07 If I Loved You (#4)
1945.08 Till The End Of Time (#1)
1945.12 Dig You Later (A Hubba-Hubba-Hubba) (#3)
1946.02 I'm Always Chasing Rainbows (#5)
1946.03 Prisoner Of Love (#1)
が立て続けにミリオン・セラーを記録するという大変な人気となります。以前このコーナーで1945年のヒットチャートを取り上げた際には「Till The End Of Time」を紹介しましたが、続くヒット「Dig You Later」は「日本との戦争から帰って、やっとあの娘を抱きしめられる!」という非常に時局を反映した曲。今回の「Prisoner Of Love」はやや古めかしい曲で、1932年にコモのソフトな“クルーナー唱法”の先輩格、ラス・コロンボがヒットさせた(最高16位)バラードのカバー。1963年にはジェームス・ブラウンの“絶叫版”カバーがヒットしているので(最高18位)、そちらでこの曲をご存じの方もいらっしゃるかも知れません。
続いて2位はベテランのビッグ・バンド、“スイング・アンド・スウェイ”サミー・ケイ楽団の「I'm A Big Girl Now」。1930年代後半から50年代にかけて活躍したこの楽団は、ビッグ・バンドよりソフトな“スイート・バンド”と呼ばれるスタイルを得意としていましたが、その人気のピークはこの年を前後する3〜4年。ベティ・バークレイというヘタウマなスタイルの女性シンガーがリードをとっているこの曲は、3歳の頃から付き合っていて、未だにその頃と同じような付き合いを続けようとしているボーイフレンドに「私はもう子供じゃないんだから、いい加減子供みたいな付き合いじゃないことをしましょうよっ!」と不満をぶちまける内容。バークレイのヘタウマ・ボーカルが、ユーモラスな曲調に非常にマッチしています。
この時代は一曲ヒットが生まれると、人気バンドが挙ってその曲をカバーし次々とヒットパレードに登場するという“競作時代”でしたが、今回のチャートでもっともその側面が現れているのが4バージョンが登場している「Oh! What It Seemed To Be」。この曲のオリジナル・バージョンは恐らく作曲者としてもクレジットされているフランキー・カール盤(ボーカルは彼の娘マージョリー・ヒューズ)だと思いますが、どういう訳か同じレコード会社のフランク・シナトラもシングルをリリース。しかも両方ともヒットパレードのナンバー1に輝くという大変珍しい現象が起こりました。
他社の競作盤では人気歌手同士の共演、ディック・ヘイムズとヘレン・オコネル版、そしてトミー・ドーシー楽団から独立したトランペッター、チャーリー・スパイヴァック楽団版が同率9位に登場していますが、手許の音源で聴き比べた感じでは、ヘイムズとオコネル版のストリング・サウンドがいい感じですね。勿論この曲といえばなんといってもシナトラなので、それよりも優れているとはいいませんが。
そしてこの週5位と7位に送り込んでいるのは人気女性シンガー、ダイナ・ショア。ラテン・サウンドを得意としたザヴィア・クガート楽団からソロになった彼女は、1940〜50年代前半もっとも人気を博した女性シンガーの一人となりましたが、この年彼女はそれまでの5年間在籍していたヴィクターからコロンビアに移籍、その第一弾が7位の言葉遊びのような軽いナンバー「Shoo-Fly Pie And Apple Pan Dowdy」でした。続いてリリースしたこちらは“顔で笑って心で泣いて”というバラード「Laughing On The Outside (Crying On The Inside)」も非常にいい曲で、順調にヒットを放ち続ける形となりましたが、本当の意味でこの時期の彼女の代表曲になったのは「Laughing On 〜」のB面に収録されていた「Gypsy」。黒人ボーカル・グループ、インク・スポッツとの競作となったこの曲は、この5月から8月にかけて激しいチャート争いを展開し、双方チャートのトップを長期間に亘ってシェアし合いました。
6位にチラッと入っているのは、ビング・クロスビーの「Sioux City Sue」。ラテンでもハワイアンでもアイリッシュでも何でも歌いこなす彼は、またカントリー・ソングを一般に紹介するという大きな役割も果たしており、この曲は前年にディック・トーマスがカントリー・チャートでナンバー1ヒットさせた曲のカバー。カントリーの世界では大変なヒットだったようでこの年には“歌うカウボーイ”ジーン・オートリー主演で同名の映画も公開されています。
最後2曲はこれまた1930年代から活躍を続けているベテラン・バンド、フレディ・マーティン楽団。8位の「Bumble Boogie」はロシアの作曲家リムスキー=コルサコフの「熊蜂の飛行」をブギウギ調にアレンジしたもので、日本では昭和25年にビクターがスタートさせた“S盤シリーズ”の第1号「S-1」としてリリースされ“戦後洋楽のスタート地点”となりました。もう1曲10位の「One-Zy, Two-Zy (I Love You-zy)」は、フレーズの最後に“ジー”をつけて言葉遊びのように歌っていくノヴェルティ調のナンバー。ポップスの楽しさをよく現していると思います。
(2004.5.4)
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