TOP10 HITS OF LAST CENTURY
Presented by meantime

■ SP盤 1953年9月のベスト・セラーズ

1.プリテンド/ナット・コール(Capitol)
2.ライム・ライト/ビクター・ヤング楽団(Decca)
3.皇帝円舞曲/ビング・クロスビー(Decca)
4.我が心に唄えば/ジェーン・フローマン(Capitol)
5.ム−ラン・ル−ジュの歌/パーシー・フェイス楽団(Columbia)
6.ワン・ワン・ワルツ/パティ・ペイジ(Mercury)
7.ポルトガルの四月/レス・バクスター楽団(Capitol)
8.キッス/ディーン・マーチン(Capitol)
9.泪の七日間/ジョージア・ギブス(Mercury)
10.あなたの後についていく/フランク・シナトラ(Capitol)

 昭和28年9月の洋楽シングル・セールスチャート1位は、ナット“キング”コー ルの「Pretend(米2位)」でした。

 エルヴィスよりも先に“キング”の称号を得たナット・コールことナサニエ ル・アダムス・コールズは1919年アラバマ州の生まれ。聖職者の一家に育った彼 はシカゴでジャズ・ピアニストとしての修行をスタートさせ1936年に初レコーデ ィングを体験。翌年に彼のピアノにギターとベースという編成の“キング・コー ル・トリオ”を結成、そのクールな演奏スタイルと当初は余興だったボーカルが 大いにウケて41年にグループはデッカからデビュー。43年には新興レーベル、キ ャピトルに移籍して彼の長ーい黄金時代がスタートします。

 モダンなスタイルを持ったジャズ・トリオのピアニストとして多くのジャズ雑 誌でピアノ部門ナンバー1に選出される一方で、ボーカリストとしてもキャピト ル・レコードの看板的存在となったコールは、50年代に入ると10数年続けたトリ オ・スタイルに別れを告げてソロとして完全に独立、オーケストラをバックに歌 い上げるバラ−ド・シンガ−の側面を全面に押し出していくこととなります。

 この「Pretend」の“装う”というタイトルから、私は長いことこの曲を「恋 の裏切り」みたいな悲恋の歌なのかとばかり思い込んでいたのですが、歌詞を読 んでみたら全然違いますね。「憂鬱な時も愉しげに振る舞ってみよう。そうする と気持ちが明るくなって、物事が好転し始めるから。」という“ちょっといい 話”的な、いつの時代にも通用する人生のアドバイス。こんなメッセージがラジ オから流れてきたら、非常にハッピーな気持ちになれますね。但し近年のJ-POP に氾濫する「友だちを大切に、前向きに明日も生きていこう。」みたいな“ポジ ティブ・パンク”は御免ですが。。

 さて、この時期大衆の娯楽の王様といえば、やはり映画。ということでこのチ ャートの2位〜5位には映画のテーマ曲がズラっと並んでいます。まず2位は、映 画に登場する踊り子の名前から現在は「テリーのテーマ」と呼ばれているビクタ ー・ヤングの「Limelight Theme(米26位)」。お馴染みチャップリン主演の同 名映画のテーマ曲ですが、物悲しいバイオリンの音色が、寂しいムードに覆われ たこの映画をより一層印象深いものにしています。3位はビング・クロスビーが 主演したコメディ映画(監督:ビリー・ワイルダー)の主題歌「The Emperor Waltz」。19世紀に作曲されたクラシックをポップス化したこの曲にのせて展開 されるストーリーは「第一次世界大戦前のオーストリア、蓄音機を売り出そうと ウィーンを訪れたアメリカ人セールスマンは、オ−ストリア人の心をとらえるに は皇帝に蓄音機を売り込むのが一番だろうとあれこれ画策。しかし蓄音機を見た オーストリアの人々は彼をテロリストと勘違いし、てんやわんやの大騒動・・」 みたいな感じなんだそう。私が見た映画サイトのレビュー点はあまりよくありま せんでしたが、如何にもクロスビーっぽいイージー・ゴーイングなコメディのよ うなので、なんとか探し出して観てみたいと思っています。

 4位はジェーン・フローマンの伝記映画「With a Song in My Heart」主題歌。 彼女は1930年代にラジオで人気を博したシンガーだそうで、熱心に兵隊慰問を行 う中飛行機事故に巻き込まれ、下半身不髄となりながらも奇跡の生還を遂げてシ ョ−ビズ界にカムバック。そんな彼女の波乱万丈な半生をスーザン・ヘイワード 主演で映画化したのがこの「我が心に唄えば」で、劇中の歌をすべて吹き替えた フローマンはこの曲が収められたシングルのもう片面「I'll Walk Alone(皮肉 なタイトルだな、と思うのは不謹慎でしょうか?)」のヒットにより初めてナシ ョナル・チャートに登場(最高14位)、その後しばらくキャピトル・レコ−ドか らヒットを飛ばし、1960年代まで活躍を続けたそうです。

 5位にはフランスの名高い「ムーラン・ルージュ」をこよなく愛した画家ロー トレックを描いた映画「赤い風車」のテーマ曲「The Song From Moulin Rouge (Where Is Your Heart)(米10週連続1位)」が。パーシー・フェイス楽団の演奏 は現在も頻繁に耳にする機会があり、彼の名前を知らなくても曲に聞き覚えのあ る方は多いでしょう。全然関係ない話になりますが、この曲のヒットから約50年 後、アメリカでは再び「ムーラン・ルージュ」とタイトルが付けられた映画が大 ヒット。内容は全然違いますが、主題歌の「Lady Marmalade」がナンバー1ヒッ トとなって「同名映画の主題歌が半世紀ぶりにヒットチャートの1位を記録す る」という、チャート・マニアにはちょっと興味深い記録が数年前に生まれまし た。

 続いてどんどんいきます。6位は“ワルツの女王”パティ・ペイジの「The Doggie In The Window(52年米1位)」。「旅に出て不在がちな私を寂しがらな いように、あの人にワンちゃんでも買ってあげようかしら。。」というこの歌、 以前も書いたことがありましたが娼家の窓に並ぶお姐ちゃんを素見(ひやか)し て歩く様子を唄ったものだ、という説もあります。そうなると「いつも留守がち な私のかわりに、お妾さんでも都合しておきましょうか。。」なんてとんでもな い内容の歌になってしまいますが。7位はキャピトルのミュージカル・ディレク ター、レス・バクスターの「April In Portugal(米2位)」。この曲のオリジナ ルは「Coimbra」とタイトルの付けられたスペインの“ファド”で、マンドリン (?)の音色がエスニックな雰囲気を醸し出しています。私個人的には、この曲 に関しては1958年にベルト・ケンプフェルトが発表したバージョンの方が、オー ケストラ・アレンジのアイディアが秀逸で好きですが。

 最後3曲はチャッチャといきます。8位はマリリン・モンローが日本に紹介され た映画「ナイアガラ」の主題歌「Kiss」。アメリカでこの曲のヒットの記録はあ りませんが、モンローの強烈な印象と、年を追って紹介してみると意外なくらい に“日本のみヒット”を多く持つディーン・マーチンの持ち味(日本人好みなん でしょうかね)が相乗効果となってヒットを記録。9位にはジョージア・ギブス の「Seven Lonely Days(米5位)」が。最後10位はシナトラの「I'm Walking Behind You(米7位)」ですが、この曲は彼がコロンビアからキャピトルに移籍 した第一弾。当時彼は“時代遅れのアイドル”的なポジションで、この曲も当時 売り出し中のアイドル、エディ・フィッシャー盤(米1位)の後背を拝む(まさに“Walking Behind You”!)結果と なりましたが、この年の後半の「From Here To Eternity(米15位)」「South Of The Border(米18位)」あたりから彼の新しいキャリアが開け始めます。


(2003.9.16)

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