TOP10 HITS OF LAST CENTURY
Presented by meantime

■ SP盤 1955年8月のベスト・セラーズ
1.セレソ・ローサ/ペレス・プラド楽団(Victor)
2.裏町のおてんば娘/エームス・ブラザーズ(Victor)
3.チェリー・ピンク・マンボ/ペレス・プラド楽団(Victor)
4.旅情のボレロ/コール・ケリーノ楽団(Columbia)
5.マンボ・イタリアーノ/ローズマリー・クルーニー(Columbia)
6.裸足のボレロ/ユーゴー・ウィンターハルター楽団(Victor)
7.アンチェインド・メロディ/レス・バクスター楽団(Capitol)
8.グリスビーのブルース/スリー・サンズ(Victor)
9.シェイク・ラトル・アンド・ロール/ビル・ヘイリーとコメッツ(Decca)
10.シンシアリー/マクガイア・シスターズ(Coral)
昭和30年8月のシングル・セールスチャート1位は“マンボの王様”ペレス・プ
ラード楽団の「Cherry Pink And Apple Blossom White(米1位/英1位)」でし
た。
一昨年このコーナーで我が国1950年代の洋楽チャートを紹介した際、データを
使用した文化放送のリクエスト番組「ユア・ヒットパレード」がスタートしたの
は、この年の10月のこと。今回は「ダンスと音楽」誌からそれ以前のヒット状況
の紹介となります。キューバ出身のプラードはかの地で音楽教育を受け、キュー
バの音楽にシンコペートしたリズムを加えた“マンボ”の原形となるものを思い
ついたのは1940年代前半のことだったそうです。で、その後メキシコに渡り、楽
団を結成して“マンボ”の売り出しを図ったのが1949年。このニュー・リズムは
各国で評判となり、日本では早くも1951年(昭和26年)に美空ひばりの「お祭り
マンボ」が発表されている訳ですから、物凄い勢いで全世界に伝わっていったこ
とになります。
しかし、マンボの流行即ちペレス・プラードのブレイク、とは簡単にはいかな
かったようで、彼の名前がアメリカのヒットチャートに登場するのはあと数年を
要すことになります。日本でもマンボもののレコードはプラード盤も含め結構リ
リースされていたようですが、当時の資料を見ると人気を集めていたのはむしろ
ザヴィア・クガートなどによるカバーの方であったという印象があります。
そんな彼のアメリカにおける人気がヒットチャートでもはっきりと表れるよう
になるのが1953年。翌年はアメリカ音楽界を挙げての一大マンボ・ブームとな
り、そのピークを記録したのが映画「Underwater!(海底の黄金)」のテーマに
使用されたこの曲。実はこのチャート、1位と3位はタイトルは違うものの同じ曲
のことを言っており、1位は1950年にフランスで作られたシャンソンの原題
「Cerisier Rosa et Pommer Blanc」を活かしたもの(1951年にプラードがメキ
シコで録音したバージョン)で、3位の方は映画用に新たに録音し直されたニュ
ー・バージョン(こちらがアメリカでヒット)。この時期の彼の人気は圧倒的
で、この月のチャートの下位には他に「マリリン・モンロー・マンボ」が11位
に、「スコーキアン(54年米26位)」が19位にランクイン。風俗的にも当時のニ
ュース・フィルムを見ると必ず登場する“マンボ・ズボン”が流行するなど、マ
ンボがこの時期日本を席巻していた様子が窺えます。
“マンボ・ブーム”は他のアーティストの作品にも表れています。5位ローズ
マリー・クルーニーの「Mambo Italiano(54年米10位)」は「久しぶりにイタリ
アを訪れたら、国中皆がマンボを踊っていた。」というまさに世界中を覆った
“マンボ・ブーム”を歌ったもの。この曲を作ったボブ・メリルは当時数多くの
ヒット曲を生み出したソングライター。彼は楽譜も読めない、ピアノも弾けない
という当時にしては珍しいタイプの作曲家で、ハンディ・サイズの鉄琴のような
楽器を叩いてメロディを生み出したそうです。そんな彼でも1960年代まで数々の
映画やミュージカルに名曲を提供し続け、ポップス史上最も成功したソングライ
ターの一人と言われる存在になる訳ですから、この手の才能は教育だけではどう
にもならない、生まれ持ってのセンスに負うところが大きいのでしょう。なおこ
の月のチャートにはもう一曲マンボもの、ペリー・コモの「パパはマンボが好き
(54年米4位)」も16位に登場。TOP20の約3分の1をマンボが占めるという状態に
なっています。
2位はエームス・ブラザーズの「Naughty Lady Of Shady Lane(米3位)」。
「ボンボロボンボンボン、ボン、ボンボロボンボンボン。」というユニークなコ
ーラスが印象的なこの曲のバックを指揮していたのはこのチャート6位にも登場
しているユーゴー・ウィンターハルター。エームス兄弟をはじめエディ・フィッ
シャー、ペリー・コモといったRCAレコードのスターたちのバックを務める一方
で自身のヒットも多く放った彼でしたが、この「Song Of The Barefoot
Contessa(米25位)」はハンフリー・ボガート、エヴァ・ガードナー主演の映画
「裸足の伯爵夫人」のテーマ曲。壮大なオーケストラ・アレンジの一曲です。
このチャートには何故かもう一曲“ボレロ”が登場しているのであわせて紹
介。4位「Summertime In Venice」は映画「旅情」のテーマ曲(インスト)。こ
れは「裸足の伯爵夫人」にも出演していたロッサノ・ブラッツィがキャサリン・
ヘップバーンと共演した作品で、ブラッツィが英詞で歌ったバージョンもシング
ル盤が発売され、現在はそちらの方で多くの人に記憶されているようです。続く
7位「Unchained Melody(米1位)」も映画「アンチェインド」のテーマ曲。ムー
ディなストリングスとコーラスが和みます。
8位も映画関連。「The Touch (Le Grisbi)」はフランス映画「現金に手を出す
な」のテーマで、この時期映画のテーマ曲を片っ端から(?)カバーし、日本で
シングルが発売されていたスリー・サンズ盤がヒットしました。ハーモニカが主
役でサスペンス調の雰囲気を盛り上げる一曲。残る2曲(9位、10位)はいわゆる
“R&Rソング”ですが、当時はまだその呼び名は一般的でなく、「ダンス〜」誌
上では“R&B調(と書いてわかったんでしょうか?当時の読者は)”と説明され
ていたもの。9位ビル・ヘイリーとコメッツの「Shake, Rattle & Roll(54年米7
位)」は本国でも彼にとって最初のメジャーヒット、日本でも売れていたんです
ね。ただこのシングルはカップリングで「Rock Around The Clock(米1位)」が
収録されており「Shake 〜」の方の人気なのか、それともアメリカでナンバー1
を獲得していた「〜 Clock」が本当の目当てだったのかは、判断に迷うところで
すが。「Rock Around The Clock」が主題歌に使用され、人気を決定付けた映画
「暴力教室」が日本で公開されたのはまさにこの8月で、それから暫くするとチ
ャートの表記も「〜 Clock」がA面扱いとなり、このシングルは半年以上にわた
ってチャートの上位に居座り続けることとなります。
最後10位はマクガイア姉妹の「Sincerely(米1位)」。これはシカゴの名門R&Bグル
ープ、ムーングロウズがオリジナル(米20位)で、ポップチャートでナンバー1
を獲得したごく初期のR&Rソングということになります。まったくの余談になり
ますがこの曲を書いたグループのリーダー、ハーヴィ・フークァはその後デトロ
イトに活動の場を移し、やがてモータウン・ファミリーとなるのですが、その際
にムーングロウズから彼と行動を共にしたのがマーヴィン・ゲイ。モータウンの
社長、ベリー・ゴーディの二人の姉のうちグエンはフークァと、アンナはマーヴ
ィンと結婚し、二人は義兄弟になってしまったほどの関係でした。フークァとマ
ーヴィンのつながりはその後も続き、マーヴィンにとって最後の大ヒット
「Sexual Healing(82年米3位)」にもプロデューサーの一人としてフークァの
名がクレジットされていますし、マーヴィンとアンナは70年代に泥沼の離婚騒動
を起こし、それを元にマーヴィンは幾つかの歌を作ってもいるのですが、考えて
みればそれらの“副産物”も、フークァの存在なくしては生まれなかったという
ことになります。
(2003.8.26)
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