TOP10 HITS OF LAST CENTURY
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■ Cash Box Top 50 Best-Selling Singles: Week ending May 19, 1956

 1 Heartbreak Hotel - Elvis Presley (RCA Victor)
 2 Moonglow And Theme From "Picnic" - Morris Stoloff & Columbia Pictures Orchestra (Decca)
                                    - George Cates & Orchestra (Coral)
 3 Blue Suede Shoes - Carl Perkins (Sun)
 4 (You've Got) The Magic Touch - Platters (Mercury)
 5 Hot Diggity (Dog Ziggity Boom) - Perry Como (RCA Victor)
 6 Ivory Tower - Cathy Carr (Fraternity)
               - Otis Williams & Charms (DeLuxe)
 7 The Poor People Of Paris - Les Baxter & Orchestra (Capitol)
 8 Long Tall Sally - Little Richard (Speciality)
                   - Pat Boone (Dot)
 9 Why Do Fools Fall In Love - Teenagers (Gee)
                             - Gale Storm (Dot)
                             - Diamonds (Mercury)
10 The Wayward Wind - Gogi Grant (Era)
 「これまで曲目を一べつしただけでこのコーナーを読み飛ばしていた皆さー ん、戻ってきて下さーい!R&R時代の到来ですよーっ!」と、ちょっと呼び込 んでみて、その後はいつもの通りやらせていただきます。昭和31年5月のヒッ トチャートはいよいよ“キング”のお出まし「ハートブレイク・ホテル」がナ ンバー1です。

 エルヴィスがメンフィスのサン・レコードから「That's Alight」でデビュ ーしたのは1954年7月のこと。それから約1年の間に5枚のシングルを発表した 彼はその活動がメジャー・レーベルの目に止まり、35,000ドルという当時では 破格の契約金でRCAレコードに移籍しました。発表された第一弾シングルは年 初からのプロモーションも効を奏し、ヒットチャートのナンバー1を記録しま す。

 この曲を聴いたことのない方は流石にいないと思いますので、この曲がどん な曲かなどという記述はしません。では、エルヴィスのメジャーデビュー曲と して何故この曲が選ばれたのか?前年「Rock Around The Clock」が大ヒット し、R&Rナンバーがヒットチャート上位にぞろぞろ進出し始め、そしてRCAレコ ードが大変な期待をもって迎えたR&Rのホープの第一弾が「Rock Around The Clock」的なものでもなく、エルヴィスがサン・レコードで吹き込んでいたR&B やカントリーのカバーでもなく、50年代前半ニューヨークの洗練されたR&B風 (クローバーズの「One Mint Julep(52年R&B2位)」あたりを彷佛させる)の 作品だったのか?

 ・・と、思わせぶりな書き方をしながら、今回は結論はないんです。どうし てでしょうね?同じセッションではレイ・チャールズのカバー「I Got A Woman」なんてのも録音しているんですけどね。セッションのプロデュースを 担当したチェット・アトキンスの趣味だったんでしょうか?自殺を遂げた若者 の遺書からヒントを得たという曲の内容もエラく暗いし。「ハートブレイク・ ホテル」は彼の代表曲でありながら、なんとなく彼にとって異質な作品、とい う印象が私には強いんです。そこら辺の事情はちょっと調べてみて、判り次第 ご報告したいと思います。

 で、エルヴィスの売り出しに成功したRCAレコードの一方、彼を手放したサ ン・レコードからも大ヒットが生まれています。35,000ドルという多額の移籍 金を得たとはいえ、後に国の宝となる人材を売り飛ばしてしまった訳ですか ら、社長のサム・フィリップスはさぞかし悔しい思いをしていたのでは・・と 思いきや、全然そんなことはなかった模様。この年にはジョニー・キャッシュ とジェリー・リー・ルイスという同じく国宝級のアーティストがヒットチャー トで活躍を始め、地方のインディ・レーベルとしては明らかにキャパシティを 超えた成功を収めていた同社が「エルヴィスがいなくても大丈夫。」と考えた 一番の理由が、3位「ブルー・スウェード・シューズ」のカール・パーキンス の存在ではなかったかと思います。

 エルヴィスのどの代表曲と比較しても遜色のない、50年代R&Rのマスターピ ースであるこの曲は、キャッシュボックスのチャートではエルヴィスより一足 早く登場し(パーキンスは4/14、エルヴィスは4/21付)急上昇を始めたため、 RCAレコードの首脳間では「あれほどの契約金を積んでまでエルヴィスを獲得 する意味があったのか?」なんて議論が真剣に交わされたのだとか。更に、後 にエルヴィスが伝説的なエピソードを作る「エド・サリヴァン・ショー」にも 一足早く出演が決まり、彼の前途は揚々・・と思われた矢先、TV出演のためニ ューヨークに向かっていた車が大事故を起こし、重傷を負った彼は数カ月間病 院のベッドに縛りつけられる羽目に。その間にエルヴィスは「ブルー・スウェ ード・シューズ」までも自らのレパートリーに取り込んで大成功。二人の隔た りは永遠のものとなってしまったのでした。

 あの事故がなかったとしたら、カール・パーキンスはエルヴィスに先駆けて “キング”の称号を得ていたのか?というと、それはキャラクターの問題もあ ってちょっと考えにくいのですが、その後の彼のポジションがかなり違ったも のになっていたことは間違いないでしょう。こういった様々なドラマが、歴史 の裏側には存在するものなのですね。

 さて、今回はR&R関係の作品を先に紹介していくことにします。4位はプラタ ーズの「マジック・タッチ」。前年永遠の名曲「Only You(3位)」そして 「The Great Pretender(56年1位)」と大ヒットを連発して人気グループに伸 し上がった彼ら、その作風はR&Rというよりはそれ以前のインク・スポッツ的 なものでしたが、時代のムードに上手くのり、R&Rシーンのスターとなりまし た。この曲はちょっとした小品ながら見事最高3位を記録。でも次のヒットが これまた超有名曲「My Prayer(1位)」なので少々印象は薄いか?

 続いてこのチャートの6位、8位、9位には次々と登場するR&Rアーティスト と、その作品を次々とカバーする白人アーティストの熾烈なチャート争いが見 て取れます(このチャートの形式は、そういう意味で面白いですよね)。まず 6位のR&Bボーカルグループ、チャームスがオリジナル。彼らは54年に「Hearts Of Stone」をヒットさせましたが、そちらはフォンテイン・シスターズのカバ ー(1位)に打負かされました。が、今回は白人女性シンガー、キャシー・カ ーに快勝。見事雪辱を果たします。8位「のっぽのサリー」は当時最も破壊的 な歌唱法で音楽ファンの度胆を抜いていたリトル・リチャードの代表曲。よせ ばいいのに人気アイドル、パット・ブーンはこれを非常に爽やかに歌い上げ、 このバージョンは50年代の珍盤の一つとされています。彼は数年前、ヘヴィ・ メタルの名曲を非常にスムースに歌いこなしたアルバム「メタルバカ一代」を 発表しましたが、これはその原点といっていいでしょう。

 9位「恋はくせもの」でR&Rシーンに登場したティーンエイジャーズは、リー ドボーカルのフランキー・ライモン(当時13歳)の天才ぶりが際立ったグルー プ。簡単にいえば“50年代のマイケル・ジャクソン”といったところでしょう か。まったくの誇張なしで。数年前この曲と同タイトルで彼の伝記映画がアメ リカで公開されましたが、そこにもあったとおり才能に恵まれ過ぎた彼はその 後荒れた生活を送り、この約10年後にはドラッグで命を落としてしまいます。 カバーのうちゲイル・ストームは白人女性シンガー、ダイアモンズはカナダの 白人ボーカルグループで、これはちょっと間延びした感じ。彼らは次回も登場 する予定なので、そこでもうちょっと詳しく取り上げます。

 R&R旋風が吹き荒れる1956年、しかし従来のポップスも負けずにヒットを記 録しています。まず2位「ムーングロウとピクニックのテーマ」は、その名の とおり1930年代のスタンダード「Moonglow(1934年にベニー・グッドマン盤が ナンバー1を記録)」とウィリアム・ホールデン主演の映画「Picnic」のテー マをメドレーにしたもの。説明が難しいのですが「Moonglow」の「チャーン、 チャンチャン、チャンチャ、チャーン」というフレーズ(本当に判りにく い!)が非常に印象に残ります。なお中盤でチラッと登場する「ピクニックの テーマ」の方をしっかり楽しみたい方は、マクガイア・シスターズ版(56年ビ ルボード誌13位)のご一聴をお薦め。

 5位は常連ペリー・コモ。「ホット・ディギティ」はタイトルから察せられ るとおり、陽気な曲調のワルツ。7位「パリの可哀そうな人々」は元がシャン ソンで、ヨーロッパ産のヒット曲が数多く登場した前回の傾向を引き継いだも の。タイトルを見るとなんだか悲惨な曲のようですが、曲調はそんなことはあ りません。これは女性に翻弄されるある男性を主人公に書かれたもので、“ 人々”というのはアメリカに持ち込まれた際の誤訳なんだとか。最後9位はゴ ギ・グラントの「風来坊の唄」。「ハートブレイク・ホテル」をトップの座か ら引きずり降ろしたこの曲は、ボレロ調(?)のバラード。まだまだこういう 曲も強かったのです。


(2002.5.22)

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