TOP10 HITS OF LAST CENTURY
Presented by meantime

■ SP盤 1956年8月のベスト・セラーズ
1.黄金の腕を持つ男/リチャード・マルトビー楽団(Victor)
2.ハートブレイク・ホテル/エルヴィス・プレスリー(Victor)
3.ケ・セラ・セラ/ドリス・デイ(Columbia)
4.バラの刺青/ペリー・コモ(Victor)
5.愛情物語/フォア・エイセス(Decca)
6.ムーン・グロウ/モーリス・ストロス楽団(Decca)
7.シンシアのワルツ/パーシー・フェイス楽団(Columbia)
8.明日に又/ジョー・スタッフォード(Columbia)
9.人生の重荷/テネシー・アーニー(Capitol)
10.黄金の腕/エルマー・バーンスタイン楽団(Decca)
今回も「ダンスと音楽」誌のシングル・セールスチャートを紹介しましょう。
昭和31年8月、チャートの1位を記録していたのはリチャード・マルトビー楽団の
「Theme From "The Man With The Golden Arm"(米14位)」でした。
この曲はタイトルにある通り映画「黄金の腕を持つ男」のテーマ曲。フラン
ク・シナトラが麻薬に溺れていくカード・ディーラー(カジノでトランプを捌
く、あの人)を熱演するこの作品のメインテーマは非常に印象的なフレーズが
“カバー心”をそそるのか大変な競作となりました。このチャートに登場してい
るのは1位と10位の2作で、10位のエルマー・バーンスタイン盤(米16位)がドラ
ムにシェリー・マンをフィーチャーした“オリジナル本命”でしたが、我が国で
は“S盤”のブランドが強かったのか、マルトビー盤が勝利を収めた形となって
います。アメリカでは更に5バージョンがチャートに登場していますが、調べて
みると日本でもその殆どがシングル発売されており、この曲が如何に人気が高か
ったかを窺い知ることが出来ます。
2位は出ましたエルヴィスの「Heartbreak Hotel(米1位/英2位)」。この曲
がアメリカのヒットチャートを独走したのは4〜6月のことで、8月には日本でも
ある程度話題になっていた様子。同誌9月号(このチャートが載っている前号)
では表紙も飾っています。彼の名を日本にも知らしめたシングルということにな
りますが、実はこれが彼の本邦デビュー盤ではありませんでした。エルヴィスが
サン・レコードからRCAに移籍した際R社はサ社から買い上げたマスターテープか
ら既発だった5枚のシングルを再発売、その中の一つ「I Forget To Remember To
Forget(忘れじの人)」と「Mystery Train(ミステリー・トレイン)」のカッ
プリングが我が国における第一弾としてリリースされたそうです(S-235)。こ
のシングルの貴重なレビューを紹介してみましょう(無断転載御容赦!)。
“新しいウェスターン歌手で、まだ十八、九才だが、めきめきと売り出し中の
ホープ。奇妙な魅力を持つフィーリングは、ウェスターンの田舎臭がうすく、都
会風なセンスを感じさせる。<中略>ウェスターンのファンは大いに注目してよ
い一枚である。”
その後「ハートブレーク〜」がリリースされた際は“唱法は一寸説明しにく
く、フランキー・レインとジョニー・レイとハンク・ウィリアムスを混ぜ合わせ
たような、強烈な個性とクセを持っている。”なんて感じで、ニュータイプなが
ら伝統をしっかりと受け継いで登場した彼を、なんとか冷静かつ客観的に評価し
ようと努めている様子が窺えます。なお以前コレクターの方に聞いた話ですが
「忘れじの人」のシングルは大変レアだそうで、あるマニアが「100万円出すか
ら譲ってくれ」とマーケットに呼び掛けたものの、結局名乗り出る者はなかった
という話。現存するんでしょうかね?少なくとも「ダンス〜」誌編集部には当時
試聴盤が存在したようですが。。
続く3〜6位は映画からのヒット。3位「Whatever Will Be, Will Be (Que
Sera, Sera)(米2位/英1位)」は、ドリス・デイとジェームス・スチュアート
が主演したアルフレッド・ヒッチコック監督の「知りすぎていた男」の主題歌。
子供が誘拐され、どういう訳か政府高官の暗殺騒動にも巻き込まれてしまった夫
婦が、事件解決のため奔走するスリルとサスペンスに富んだ映画という、これだ
け聞くとよくわからない筋の中でこの曲は効果的に使われ、彼女の長いキャリア
の中でも「センチメンタル・ジャーニー」に匹敵する代表曲となりました。曲ば
かりでなく「ケ・セラ・セラ(なるようになるさ)」という言葉も流行し、これ
は50年近くたった現在もたまに使われることがあります。4位の「The Rose
Tattoo(米79位)」はバート・ランカスター主演の同名映画用に用意されたもの
の、使われなかったという“幻のサントラ”。日本でだけ高い人気を博した、と
いう話は以前この年の「ユア・ヒットパレード」チャートを紹介した時に触れた
気がします。余談ですがこの映画の“正調”サントラはアレックス・ノース楽団
が担当していて、当時シングル盤も発売されましたが、その中の一曲「さよなら
(Arrivederci)」のメロディが数年後映画「17才よさようなら」で蘇り、我が
国のラジオチャートを賑わすこととなります。
5位フォア・エイセスの「To Love Again(米43位)」は「グレン・ミラー物
語」「ベニー・グッドマン物語」とジャズマンの伝記映画流行りだったこの時期
に公開された、1930年代に大変な人気を博したハンサムなピアニスト、エディ・
デューチンをモデルにした映画「愛情物語」のテーマ。このレコードはそのボー
カル版ですが、映画のサントラではカーメン・キャバレロの流麗なピアノインス
トが使用されていました。デューチンが楽団のテーマとして使用していたこの曲
はショパンの「E Flat Nocturne(夜想曲第2番)」で、何週間か前に紹介した通
り1940年代に「ショパンのポロネーズ」を大ヒットさせていたキャバレロにとっ
てはうってつけだったといえるでしょう。6位は映画「ピクニック」のテーマ
(米1位)。この曲の“ワザあり”なところはベニー・グッドマンなどのヒット
で知られる1930年代の曲「Moon Glow」を主旋律に使用し、途中でストリングス
による「ピクニックのテーマ」をさり気なく挿入しているところ。このシングル
の片面には「ピクニックのテーマ」がフルバージョンで収められていましたが、
人気の面ではこの“あわせ技”に軍配が上がりました。
残り3曲は以前取り上げたことのあるものもあるので簡単に。7位パーシー・フ
ェイスの「A Waltz For Cynthia」は日本では未公開に終わった映画のテーマで
したが、日本ではラジオ番組のテーマ曲に使用されて親しまれたそうです。その
番組「ひとみの囁き」はニッポン放送夜11時40分からやっていたとのことで、こ
んな曲をBGMに真夜中を過ごすのは、なかなかいいなと思わせる曲調。なおこの
曲はコロムビア・レコードがスタートさせたドーナツ盤の規格“LL盤”の第1号
に選ばれた名誉あるナンバー。1970年代まで続く“LLシリーズ”の歴史はここか
ら始まりました。8位はジョー・スタッフォードの「It's Almost Tomorrow(米
14位)」。多くの競作盤が出ましたが、英米ではオリジナルのドリームウィーヴ
ァーズ盤が、我が国ではスタッフォード盤が人気を得ました。最後9位は現在は
ストレートに「16トン」のタイトルで知られる曲(米1位/英1位)。まだキャピ
トルの音源をキング・レコードが発売していた時期は、この詩的なタイトルで出
されていたようです。私はこちらの方が好きですね。
(2003.8.19)
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