TOP10 HITS OF LAST CENTURY
Presented by meantime

■ ボピュラー・ミュージック・ベスト・セーリング・レコード(58年7月)
01 クレイジイ・ラブ/山下敬二郎(Angel)
02 君は我がさだめ/ミッキー・カーチス(Victor)
03 ルシア/平尾昌章(King)
04 ダイアナ/山下敬二郎(Angel)
05 フジヤマ・ママ/雪村いづみ(Victor)
06 ダイアナ/平尾昌章(King)
07 クレイジイ・ラブ/平尾昌章(King)
08 星は何でも知っている/平尾昌章(King)
09 五木の子守唄ロック/平尾昌章(King)
10 クレイジイ・ラブ/清野太郎(Columbia)
11 ラリパップ/伊東ゆかり(King)
11 バルコニーに座って/山下敬二郎(Angel)
13 想い出の指輪/清野太郎(Columbia)
13 君はわがさだめ/江利チエミ(King)
15 ロシア民謡集/ダーク・ダックス(Teichiku)
15 恋のキッスは/江利チエミ(King)
「なんだこのチャートは!!」という声が聞こえてきそうですが、今回は夏休み特別企画ということで(??)ごく初期の日本のポップス・チャートを紹介してみたいと思います。「ミュージック・ライフ」誌が独自の集計によるヒットチャートを掲載するようになったのはこの年の7月号で、5月の東京各地のレコード店の売れ行きをレポートしていました。チャートのメインは洋楽のヒット曲でしたが、日本のアーティストによる吹き込みも別途集計されており、これが今となってはなかなか貴重なデータとなっています。つい先日、この「ミュージック・ライフ」誌のチャートを元に選曲されたというCD「ミュージック・ライフ〜栄光のポップス・ヒッツ〜」がキング・レコードから発売され、私は半信半疑で収録曲と当時のチャート記録を照らし合わせてみたのですが、これが見事にその通り。こんなに「フラッシュバック」的なCDもそうそうないだろうということで、紹介も兼ねて今回「ミュージック・ライフ」誌の邦楽チャートを取り上げてみることにしました。
そんな訳で昭和33年8月、同誌の邦楽チャート1位は山下敬二郎の「クレイジイ・ラブ」でした。1958年は日本のロック史的には最初のエポック・メイキングな出来事と思われる「第一回 日劇ウエスタン・カーニバル」が開催された年で、ここで世に紹介された“ロカビリー三人男(平尾昌章、山下敬二郎、ミッキー・カーチス)”が大変な人気となりました。この月のチャートのトップに立っている山下敬二郎は、その「ウエスタン・カーニバル」がプロとしてのデビュー・ステージとなったラッキー・ボーイで、父親は“昭和の爆笑王”と言われた柳家金語楼(山敬が歌ったエルヴィスの「King Creole」のカバーは、実は「キンゴロー」と歌っているという説あり)。
「クレイジイ・ラブ」はいわずと知れたポール・アンカ(58年米15位)のカバーですが、このチャートを見てもわかる通り、この時期の“ロカビリー・ブーム”は、言い換えれば“ポール・アンカブーム(このチャート15曲中7曲までが彼のカバー!)”でもありました。“ロカビリー”なのにエルヴィスですらなく、カナダ人のポップ・シンガーがその中心にいるというこの“音楽解釈”が、その後延々と続くJ-POPの歴史的変遷を予見していなくもないと言えますがそれはともかく、彼がこのチャートに送り込んでいる残りの曲はまず4位再びポール・アンカの「Diana(57年米1位)」と11位にエディ・コクランの「Sittin' In The Balcony(57年米18位)」。エディ・コクランのカバーなんて今となると随分渋い選曲のように思えますが、この時期はまだ「Summertime Blues(8月に全米チャートに登場し最高8位)」が発表される前で“エルヴィスのそっくりさん”くらいの認識しかなかったのではないかと思われます。日本の音楽史(≒歌謡史)上、山下敬二郎はその後この時期以上のインパクトを残すことはありませんでしたが、音楽活動は現在も継続中。カントリーのライブなどで時たまその姿を見かけることがありますが、ステージ上の彼の傍らには必ず不釣り合いなくらいに若くて美人な奥さんがいまして。彼女の歌うシャナイア・トゥエインが、これがなかなか。私的にはむしろこちらの方が楽しみだったりします・・。
続いて2位はミッキー・カーチス。本名ブライアン・カーティスは東京で生まれ上海で育った国際派で、進駐軍の放送で聴いた曲をすぐさまレパートリーに取り入れて舞台で披露するという強みがあったそうですが、そういった“ストレート・コピー”は“エルヴィスよりポール・アンカ”のロカビリー・ブームでは分が悪かったようで、三人男の中ではヒット曲(「ミュージック・ライフ」誌を見た限りでは)は少ない方でした。ここに登場している「You Are My Destiny(58年米7位)」は例によってポール・アンカのカバーで、これが彼の音楽性をよく現しているかどうかはよくわかりません。彼のその後の活躍、特に近年の活躍は音楽ファンでなくてもよく知るところで、現在三人男の中では最もメディア露出の多い人でしょう。私はもっぱら立川流真打「ミッキー亭カーチス」としての彼をよく観ていますが・・。そういえば数年前には家元談志の作詞で「還暦ロック」なんてCDも発表していましたっけ。
で、このチャートでは二人の後塵を拝する格好となっていますが、恐らく“ロカビリー・ブーム”が生んだ最大の才能が平尾昌章。彼はこの流れの中でまっ先にレコード・デビューを果たし、♪きみ〜は僕より年上と〜の歌詞で知れらる「ダイアナ」をヒットさせて人気歌手の仲間入りを果たしました。ここに送り込んでいる5曲を、「ダイアナ」を別に順に紹介すると、3位の「ルシア」はリトル・リチャードの「Lucille(57年米21位)」のこと。リチャードが声をひっくり返して歌うフレーズを、聴こえる通りそのままタイトルにしてしまったという。ここでは“マーチャン”結構張り切ってシャウトをキメています。7位はお馴染みポール・アンカ。しかし彼はこれらカバーに飽き足らず、オリジナルの“日本のロック”の模索を始めます。8位「星は何でも知っている」はハンク・ウィリアムスの「Kaw-Liga(53年米23位)」を下敷きに作られたといわれるマイナー・メロディのポップスで、これは“J-POPのスタート地点”と評する人もいるほどの重要曲。9位「五木の子守唄ロック」はタイトルどおり民謡のロック化の試みで、日本の民謡をジャズやラテンのアレンジで演奏するという、そういった流れで考えれば当然思いつく人はいるだろう、という感じの作品でしょうか。いずれにしても後のヒットメーカー「平尾昌晃」の礎となった時期であることは間違いありません。
“ロカビリー三人男”に続いて4位に登場しているのは、音楽的には三人男の一つ前、でも年齢的には同世代の「3人娘(3人娘と平尾は昭和12年生まれ、ミッキー13年、山敬14年生まれ)」から雪村いづみ。同年生まれながら美空ひばりは1949年デビュー、江利チエミは52年、雪村は53年と先輩後輩の関係にあり、しかも雪村は「童謡は歌いたくない」と言ったひばりと「歌謡曲は歌いたくない」と言ったチエミをオーディションで門前払いしたという“ビートルズにとってのデッカ・レコード”のようなビクター・レコードからのデビューといううことで娘内の人間関係は色々あったかも知れませんが、スタイル抜群の彼女はアイドルとしては一番の完成度を誇る存在でした。「Fujiyama Mama」はワンダ・ジャクソンが歌ったこの時代を代表する“オールディーズ・ヒット”ですが、この曲でハードにロックする彼女は、この時代の他の国のどの“ヒルビリー・チック”にもひけをとらない迫力を醸し出しています。
まったくの余談になりますが昨年ワンダ・ジャクソンが来日しまして。私は原宿のライブハウスまで観に行ったのですが、これが日本の“ローラー族”の集会のようなイベントで、私は30センチはトサカがあろうかというローラーたちに混じって2時間半前座の日本のバンドたちの演奏に立ちっぱなしでつきあわされ、しかもお目当てのワンダ嬢のステージは30分ほどで終わりという、散々な目に遭わされました。。前座の中に一組“ゴロッパチ”ことTHE 5.6.7.8Sというバンドがいて、その何ヶ月後かに映画「キル・ビル」を観たらいきなり彼女たちが登場し、その時のステージでも披露していた「Woo-Hoo」を演ってて吃驚した・・なんて思わぬ収穫はありましたが。
順位はとんで13位と15位に曲を送り込んでいるのは、もう一人の3人娘江利チエミ。以前「フラッシュバック」で紹介した、恐らく日本最古のヒットチャート「ダンスと音楽」誌の1952年のチャートには、ナット・キング・コールなどに混じって彼女のシングルもしっかりランクインしており、如何にデビュー当時の彼女が洋楽ファンをも唸らせる存在であったかを窺い知ることができます。ここに登場している曲のうち「君はわがさだめ」はミッキー・カーチスも歌っているポール・アンカ曲、15位の「恋のキッスは」はこのタイトルでは判りにくいと思いますがジミー・ロジャースの「Kisses Sweeter Than Wine(『ワインより甘いキス』57年米3位)」のカバー。歌詞の内容はオリジナルから全然離れた恋愛指南の歌で、こういうセンスは僕は大好きです。この時期の彼女の録音、気軽に聴けるCDが現在出ていないので、いずれ何か気のきいたコンピレーションでも出ないものかと思っている次第。
3人娘といえば、先日「ジャンケン娘」をはじめとした彼女たち共演の映画サントラ録音が初CD化されましたね。このボックスセットのレビューを近日中にmeantimeホームページの「Editor's Pick」コーナーに掲載したいと思っていますので、時折更新状況をチェックしていただければ幸いです。
残り三曲は手短に。このチャート10位と13位に曲を送り込んでいる清野(せいの)太郎はカントリー・バンド「スイング・ウエスト」のボーカリスト。「クレイジイ・ラブ」はもう言いたくもないポール・アンカの曲、「想い出の指輪(『Wear My Ring Around Your Neck』58年米2位)」はようやく出てきたエルヴィスのカバー。スイング・ウエストは今となっては1950年代のカントリー・シーンの数少ない証言者となってしまった寺本圭一と、現ホリプロ会長の掘威夫が在籍していたグループ。まったくの余談。11位の「ラリパップ」とはコーデッツの「Lollipop(58年米2位)」のこと。現在伊東ゆかりは女優としての知名度が圧倒的ですが、この時期から活躍する天才少女歌手だった訳です。彼女は60年代に入って、中尾ミエ、園まりととも二代目「3人娘」と呼ばれることになります。
紹介最後になった15位はダーク・ダックスの「ロシア民謡集」。オールディーズとして紹介するには少々キツいですね。大学のグリー・クラブから生まれたこのグループは世界各国の民謡を得意レパートリーとし、特にロシア民謡にかけては、恐らく彼らを通じてロシア産の歌の数々を知ったという日本人が大半ではないか?というほどの影響力を持ちました。そういえば彼らは冷戦下にあって、飛び抜けた訪ソ回数を誇ったグループでもありました。「ミュージック・ライフ」誌のチャートではこのアルバム(?)の他に「ともしび」もランクイン、そちらはCD「ミュージック・ライフ〜栄光のポップス・ヒッツ〜」に収録されています。
(2004.7.20)
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