TOP10 HITS OF LAST CENTURY
Presented by meantime

■ Billboard HOT100 September 7, 1959

01 (01) The Three Bells / The Browns (RCA)
02 (03) Sleep Walk / Santo & Johnny (Canadian American)
03 (02) Sea Of Love / Phil Phillips (Mercury)
04 (05) I'm Gonna Get Married / Lloyd Price (ABC-Paramount)
05 (09) Red River Rock / Johnny & The Hurricanes (Warwick)
06 (13) ('Til) I Kissed You / The Everly Brothers (Cadence)
07 (14) Broken-Hearted Melody / Sarah Vaughan (Mercury)
08 (04) Lavender-Blue / Sammy Turner (Big Top)
09 (06) What'd I Say (Part I) / Ray Charles (Atlantic)
10 (10) I Want To Walk You Home / Fats Domino (Imperial)

 41年前のこの週の1位はカントリー系のトリオ、ブラウンズの「谷間に三つの鐘が鳴る」でした。先週このコラムで、ナッシュビル産の新しいカントリーサウンドがポップチャートでも大変人気を集めた旨を書きましたが、カントリー界におけるこのサウンドの代表的なヒットの一つがこの曲。この曲はもともとフランスのシャンソンが原曲、ブラウンズもカントリー系のグループとしては泥臭さを感じさせないコーラスグループだったので、カントリー臭はあまり感じさせない仕上がり。ちょうどこの頃、当時からしても非常にノスタルジックな雰囲気を持つヒット曲を連発していた、同じく男1人、女2人のポップトリオ、フリートウッズのカントリー版といった感じ。

 先週のコラムで取り上げたいくつかのトピックのうち、今回のヒットチャートにも現れているのはブラウンズに代表される“ナッシュビル・サウンド”と、もう一つが“インスト・ブーム”。この週では2位のサント&ジョニー「Sleep Walk」、5位のジョニー&ザ・ハリケーンズ「Red River Rock」と、2曲のインスト曲がTOP10に登場しています。スティール・ギターとエレキギターという珍しいデュオ、サント&ジョニーの方はまさに「夢遊病」というタイトルがピッタリな、ゆったりとした曲調。多分録音機材が原因と思われる音の歪みがなんともいえないいい味を醸し出しています。この曲は約40年後にブライアン・セッツァー・オーケストラの「Dirty Boogie」で取り上げられ、その演奏は昨年グラミー賞の最優秀ロック・インストゥルメンタル部門を受章しています。そういえばこの曲、映画「ラ・バンバ」で、主人公であるリッチー・ヴァレンスが命を落とす飛行機事故の予知夢のBGMとして冒頭流れますが、件の飛行機事故が起こったのはこの年の2月のこと。ヴァレンスが存命中にこの曲が聴かれていたかどうかはちょっと怪しいところ。もう一曲ジョニー&ハリケーズの方は民謡(?)「Red River Valley」をオルガンをフィーチャーしてロック調にアレンジ。ロックの歴史上では比較的地味なバンドですが、この時代最もワイルドな録音を残したグループの一つなので、一度は作品集を聴いてみてください。

 話は変わって、リッチー・ヴァレンスとともに2月の飛行機事故で命を落としたのがバディ・ホリー。グループの柱を亡くしたクリケッツの面々がこの週ノン・クレジットながらTOP10に登場しています。それが6位のエヴァリー・ブラザーズ「キッスをするまで」(クリケッツがバッキングを担当)。バディ・ホリーとエヴァリーズの関係はかなり親密だったようで、彼らが「ボ・ディドリーのような曲が欲しい」と言ったことからホリーが「Not Fade Away(後にローリング・ストーンズがカバー)」を作るなど、いくつもの逸話が残されています。この翌年エヴァリーズは多額の契約金で新設のワーナー・ブラザーズに移籍し、更に数年間ヒットチャートの常連として活躍。クリケッツの方も60年代に入っても活動を続け、ボビー・ヴィーと共演アルバムを発表したり、イギリスでヒットを放ったりしています。

 順位が前後しますが、続いて3位の「Sea Of Love」。フィル・フィリップス自作のドゥ・ワップ調のナンバーは、80年代に入ってハニー・ドリッパーズ名義でリバイバル(ロバート・プラントがクルーナーとして意外な魅力を披露)した事でも知られています。この曲、オールディーズの名曲として数多くのコンピレーションに収録され、その音はリマスターされて年々良くなっているのですが、音がクリアになればなるほど、コーラスの拙さが耳についてしょうがないという複雑な思いをさせられる一曲でもあります。

 残りの曲は、大まかに一つの流れとして捉えられるかもしれません。それは“R&Bアーティストのポップ・メインストリームへの進出”。この時期、その代表格だったのが4位のロイド・プライス。彼は50年代前半にR&R初期のスタンダード「Lawdy Miss Clawdy」を発表し、ABCパラマウントに移籍した57年にはプリミティブなニューオリンズR&B「Just Because」をヒットさせていましたが、59年にはナンバー1ヒット「Stagger Lee」や「Personality」、そしてこの「I’m Gonna Get Married」などオーケストラと白人のコーラス隊をバックにポップなサウンドのヒット曲を連発し、人気アーティストとなります。もう一人、ニューオリンズの先輩格ファッツ・ドミノもこの頃にはよりソフトな作風を得意とするようになっており、この週10位に入っている「I Want To Walk You Home」や翌年の「Walking To New Orleans」など、オーケストラをバックに三連音符が鳴り響くタイプのバラードを次々と発表しました。

 ロイド・プライスの大成功はABCパラマウントに更なる野心を抱かせたのでしょう、翌60年には“第二のロイド・プライス”としてこの週初のメジャーヒット「What'd I Say(9位)」をランクインさせているレイ・チャールズをアトランティックから多額の契約金で引き抜きます。レイ・チャールズがその後同社でR&Bフィーリングとナッシュビルサウンドを水増しすることなく融合させた「カントリー&ウェスタンを歌う」シリーズを発表して大ヒットさせ、アメリカを代表するエンターテイナーになっていくのはご承知のとおり。ゴスペル・フィーリング溢れる「What'd I Say」の“黒さ”を後退させることなく、彼はポップ界で唯一無二の地位を築き、70年代までヒット曲を連発していきます。

 後の2曲はやや傍流に属するもの。7位のサラ・ヴォーンはどちらかといえばジャズ・ボーカルの巨人としてジャズファンの鑑賞物となっている印象がありますが、彼女が数多く残したポップ作品は、どれも彼女の旺盛なサービス精神が現れた魅力溢れる仕上がりになっているので、ポップファンは無視することが出来ません。この「Broken-Hearted Melody」や続く「Smooth Operator(44位)」などボーカルファンが軽視しがちな作品は、我々が評価してあげなければ誰にも気付かれないまま歴史に埋もれてしまいますから。最後のサミー・ターナー「Lavender-Blue」は、40年代に流行したヒット曲のリメイク。曲の随所に登場する「ディリディリ」というフレーズが耳に残ります(これを“フック”というのでしょう)。スムーズなバラードを歌うサミー・ターナーはこの後大成しませんでしたが、同じくスムーズな歌を聴かせ、更にディープな声を持つブルック・ベントンが翌年登場し、R&Bバラディアーとしては最大の成功を収めることになります。


(2000.8.30)

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