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チャートの紹介に入りましょう。この月の1位に選ばれているのはビートルズの「Hey Jude(米1位)」。先日発売されたベスト盤「1」が“今週の”アルバムチャートで見事1位を獲得した彼ら。同アルバムにも勿論収録されているこの曲は、彼らが設立したレコード会社「アップル」からの第一弾シングルでした。自らがコントロールするレーベルからのリリースということで、それまでのシングル盤の常識に囚われないものを出してみたい、という意図があったのでしょう。演奏時間7分以上という大作になりました。
「長い曲はラジオでかけてもらえない」という考え方が一般的だった当時(実際より短い演奏時間をレーベルに表記するシングル盤までありました)、しかしこの曲はあっという間にチャートの1位となります。その要因は勿論彼らの絶大なる人気やポール・マッカートニーお得意のメロディアスな曲調、はたまた「長尺シングルといっても、どうせ最後の“ナー、ナーナー”の部分は早々にフェイドアウトされたんでしょ?」なんて穿った見方まで色々と推測することが出来ますが、ここではもう一つ、当時“長い曲=カッコいい”という認識があったのではないか?という仮説も提示しておきます。これについてはまたちょっと後で。
さて、この月のチャートには「Hey Jude」のシングルB面に収録されていた曲もランクインしています。それが9位の「Revolution(米12位)」。如何にもマッカートニー調の「Hey Jude」より、当時の彼らの音楽性を考える上ではこちらの方が重要かも知れません。前年67年の彼らは大成功を収めた「サージェント・ペパーズ 〜」から「マジカル・ミステリー・ツアー」に至る、当時のスタジオ技術を駆使した複雑な作風の探究に没頭していましたが、明けてこの年の前半に発表された「Lady Madonna(米4位/英1位)」からは方針を一転、ロック・ミュージックの持つグルーヴ感を追求するようになります。「Revolution」は冒頭のハードなギターと叫び声に惑わされそうになりますが、基本は非常にオーソドックスなブルース・ロック。彼らはこの後各々のメンバーが持つ可能性を探った通称「ホワイト・アルバム」を経て「ゲット・バック」「アビー・ロード」と、70年代ロックの雛形となるバンドサウンドを模索していきました。
続いて2位はラスカルズの「People Got To Be Free(米1位)」。「ミュージック・ライフ」誌は一時期随分彼らに入れ込んでいた様子があり(ある号では表紙にもなっていました)、それがこの高順位に現れているのでしょう。しかし、そういった事情を別にしても、当時の彼らが生み出した音楽の素晴らしさは評価しない訳にいきません。バーのクラブバンドからキャリアをスタートさせた彼らの一貫した目標は“黒人音楽の持つ高揚感を如何にバンドで表現するか”にあったと思われます。実際彼らにはそれを実現するだけの才能があり、初期のガレージR&B然としたナンバーも、67年に連発した“グルーヴィー”なヒット曲も、その後の精神性を帯びたメッセージソングも、どれもがグルーヴ感に溢れ、その幾つかはR&Bチャートにも登場しました(「People 〜」はR&Bチャート14位)。「皆が協力して生きていければ、世界はどんなに素晴らしいものになるだろう」というこの曲は、キング牧師とロバート・ケネディが相次いで暗殺された当時の複雑な世相にマッチし、見事ビルボードチャートのトップに立ちます。彼らのキャリアの頂点を記録した一曲といえるでしょう。
3位に入っているのはビージーズの「I've Gotta Get A Message To You(米8位/英1位)」。哀愁を帯びたフォークロック・サウンドを得意とした彼らはこの頃最初の黄金期を迎えており、この曲はアメリカで初のTOP10ヒット、イギリスではナンバー1。日本でも「マサチューセッツ」が創刊間もないオリコンチャートで1位を獲得するなど、アイドルグループとして絶大な人気を誇りました。実際この時期の彼らの人気は、特に日本に於いては一般に全盛期とされる70年代後半を上回るものがあったようで、数年前に観に行った彼らの来日公演で、最も高い歓声が上がったのは60年代後半のヒット曲メドレーのコーナーでした。あとギブ三兄弟の中で、日本ではバリーよりもロビンの方が人気があるらしい、と知ることが出来たのも意外な収穫。
4位から6位は、如何にも“ニューロック”なナンバーが続きます。4位はステッペンウルフの「Born To Be Wild(米2位)」。この曲を耳にすると、どうしてもハーレー・ダビッドソンに跨がって荒野を突っ走っていくイメージが目前に広がってきますが、映画「イージー・ライダー」に使用されるのはこの翌年のこと。彼らの成功は比較的短期間に終わりましたが、そのハードなギターサウンドとグルーヴに満ちたリズム感は、後のハードロック、特に80年代後半以降のバンドに受け継がれていった印象があります。
・・今気づいたのですが今回はやたらと“グルーヴ”という言葉が登場してますね。解りにくかったらごめんなさい。でも他に適当な言葉が思い浮かばない・・。
5位は多分殆どの人が知らないでしょう、アイアン・バタフライの「Unconsious Power」。彼らは西海岸出身のヘヴィ・ロックバンドで、セカンドアルバムに収録された17分以上に及ぶ「In-A-Gadda-Da-Vida」が評判を呼び、その短縮版として発表したシングルがヒットチャートの30位を記録したバンド。シングルチャートの実績よりも、ライブの様子がよりダイレクトに伝わるアルバムのセールスに人気が顕われた“今日的な”ロックバンドのはしりでした。で、この「Unvonsious Love」は本国で「〜 Gadda-Da-Vida」に先駆けてリリースされたデビューシングル。日本では遅ればせながらこの時期にリリースされ、やや勇み足的なチャートインとなったようです。妙にクリアな音で録音されたガレージ・パンクみたいでどうも中途半端な印象がありますが、この原稿のために何度も聴いていたら、ちょっと好きになってきてしまった・・。
6位はヴァニラ・ファッジの「You Keep Me Hangin' On(米6位)」。現在でもCM等に使用されることがあるこの曲は、66年にナンバー1を記録したシュープリームスのカバー。それをキーボードを主体としたサウンドで超スローテンポ且つ長時間演奏に(シングルは短縮版)料理し直し、ラスカルズのR&Bっぽさとプロコル・ハルムあたりのクラシカルな雰囲気をブレンドしたような如何にも“1968年”な雰囲気で蘇らせました。
と、ここにも登場しましたが、当時の音楽界のキーワードの一つに“長時間演奏”というものがありました。当時流行していたドラッグの幻覚作用が、単調なフレーズが延々と続く演奏を聴いているとより高まるという理由もあったようですが、それだけでなく“長い演奏は芸術性が高い”という意識もあったのでしょう。またラジオ局によってはアルバム片面をずっと通してかけ続けるような「ロック・ステーション」も登場し始め、更にロック・アルバムのセールス規模が数百万枚単位に拡大し、アルバムを表現メディアの中心に据えるバンドが増えたことがこの傾向に拍車をかけたようです。しかし、シングル盤リリースに際してビートルズのような英断を下すアーティストは、大胆なシングル短縮バージョンが制作されていたこの頃には、まだそれほどいなかったようですが。
それにしてもヴァニラ・ファッジはどうしてこんなアイディアを思いついたんでしょう?これについてはユニークな説を聞いたことがあります。シュープリームスのシングル盤を45回転でなく33回転でかけると、テンポも歌声もヴァニラ・ファッジそっくりになるという。実際にやってみると本当にそうでビックリ。意外に大したことないきっかけでやったのかも知れませんね。シングル盤をお持ちの方は、一度試してみて下さい。
残りはちょっと駆け足で。7位のドアーズ「Hello, I Love You(米1位)」は彼ら3枚目のアルバム「Waiting For The Sun」からのカット。前2作でデビュー以前に作ったレパートリーをほぼ録音し尽くしてしまった彼らはこの頃暫しスランプ状態に陥っていました。シングルとなったこの曲もポップでコンパクトにまとまっていて、非常にラジオ向きではありましたが、どうもキンクスの「All Day And All Of The Night(64年米7位)」からの引用が大きい気がして、評価はし辛いところ。続く8位はドノバンの「Hurdy Gurdy Man(米5位)」、非常に楽観的なムードに溢れた1967年から、68年は度重なる暗殺や暴動が世相に暗い影を落とし、それは音楽界にも影響を与えましたが、ドノヴァンは相変わらず彼の得意とする夢想の世界を歌い続けていました。彼は以降も暫くはお伽の国の語り部的スタンスを維持し、その後彼流のロックサウンドの会得に乗り出します。
最後10位はローリング・ストーンズの「Street Fighting Man(米48位)」。前年をサイケデリック路線で突っ走った彼らはこの年基本であるタイトなR&Rに立ち返り、現在でも名作として語られるアルバム「Beggars Banquet」をものにします。同アルバムに収録され、ヒットチャート的には「Jumpin' Jack Flash(米3位)」と「Honky Tonk Women(69年米1位)」の間に位置する「Street 〜」は、これら2曲と同様彼ららしさがよく出たロックナンバーですが、どういう訳か大したヒットにはなりませんでした。恐らく実際に起こった暴動事件に題材を求めたことが、ラジオ局から敬遠されたのでしょう。
(2000.11.28)Flashback Homecopyright (c) 2000-2003 by meantime, all rights reserved. |